表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
473/615

脱水魔術のプロトタイプ

ガブリエル教授は確かに天才で、彼女の言葉通り、ただ「残すべき土の部分を意識する事」で、ちょっとコツを掴んだ気がした。だから、おれは授業の残りをそれに適応しながら時間を過ごした。


「めっちゃ良くなってるね」


顔を向くと、そこにはピサ出身の助教のせんせいがいた。茶髪の人。


「こんにちは、先生。

はい、お陰様です。おれなりの水のイメージを持つことができたと思います」


「そかそか」


「今の動きの中で、もうちょっとよくできる部分はあるのでしょうか?」


「そうね……勢いが少し足りない感じかな。きみのスフィアで出せると思われるより、ちょっとおとなしい感じだ」


「そうですか」


「アクアはいったんやって、繰り返しながら治すものだから。それを心に持つといいよ。もう思ってるとしても……もっとね」


「ありがとうございます!」


「うんうん」


そういう、いつもの助言を貰いながら、今回の実験の講義が終わった。いや、少し早い気がする。


「はい、今回の『浄化魔術』の授業は終わりです。今回の沼地の浄化に向けて、劣らない様に個人時間も使って練習をしてください。多人数の場合は、実験室の利用が申請できるので、それは業務室のシステマを参考する事に」


「「わかりました」」


「はい、そして大魔術のことの告示です。みんな以前の理論の授業で、アクアのマギアとして戦闘に参加する方法を示されて悩んだと思います。特に戦闘マギアとしての心を持つものはそうだったんでしょう」


みんなざわざわした。


「毒草の怪物から水を奪うことを仰るのですか?」


「そう、それと燃えやすく乾燥させるものも言います」


「それはまたの告知で撤回されたと思います」


「そう。その時は勢いで言ってたけど、みんなが知ってる通りエレメント・マジック・アクアはもう水になっているものを扱うのが得意です。だから魔力生物から直接に水を奪う方法はうやむやになって、沼地の水のエーテルを魔法生物が利用できない様に阻むことが主の仕事になったと思います。それは今も同じで、ただのおまけです。でも、みんなが大好きなわたくしの新しい魔術の方向性が決まったので、それを少し紹介して今回の講義を終えたいと思います」


「おお……」


そして茶髪の助教のせんせいも意外だったように言う。


「はい?今ですか!?」


ガブリエル教授は目を細くしてにやりとした。


「それがいい気がした」


「ええ……」


おれもせんせいが作り出したという「脱水魔術」のことが気になってた。でも、その魔術が作られて公式的に書かれるものになるまでは非常に時間がかかる。それを、ご本人がみんなに見せるとは思ってなかったので、凄く楽しみだった。


「今回は、水の色……群青が出せるくらいの生徒なら使う事ができる方向性で、なるべく大魔術に向けてみんなが使える様な目的性で方向を決めたのです。まだ正式に魔術を作り始めたものではないので、エセンピも無くて魔力素材もわからないです。ほんの少しだけ、その実戦性を見せたいと思う」


ガブリエル教授は濡れた布を持ち上げて、反対側の手で水のエーテルを出した。そして、それをすぐ布に当てて、鮮明にさせる。

少しゆっくりだが、布から水が出て流された。


「ほお……」


「このように、エーテルをそんなに鋭利で強く刺さってなくても、有意味に対象から平凡のお水を出させる効果があるのがわかります。

これがいったん教授たちの単位で再現ができるかを確認して、生徒たち向けのバージョンを発表します。まだ仮のもので『だめだったんだよね』になるかも知れないです。でも、私たちアクアの誇りを顧慮して、こういうことができるという可能性を早く見せたいと思った」


みんなが今起きた事を理解した。ガブリエル教授の本当にわからない凄すぎる方法と違って、それは魔力操作がそんなにできない人もわかって、できること。そして、その簡単さから、多人数が魔力を合わせて一点に使う事もできる。同じ方向ならただスフィアの大きさと強さが増すと、水のエーテルが平凡の水を含むだけ。それだけだったからだ。

そして、ガブリエル教授はまた布をお水にいっぱい溢して、みんなに見せた。


「ふふ。そして、あたしが扱えるくらいにしてみるとこうなる」


鮮明なエーテルの色が光ったら、それに平凡の水がぜんぶ吸われて、完全に乾燥した布が床に落ちた。

ふだんの新しい魔術ではなくて、いつもの理論の、元素魔術「水」のチカラの方向性だけを修正するだけで「脱水魔術」と呼べるのか、ちょっとあいまいな気分だった人たちがいたら、それを見てゾッとしたのだろう。


「授業は終わり」


「ありがとうございました!」


おれは今まで2年見てたガブリエル教授の新しい技とは考え方が違って、本当に原理がかんたんなものだったのが印象的だった。だから、いつかステラ・ロサさんに言ってた「大魔術師はみんな自分たちの固有魔術を作る」ことと違って、彼女が堂の長として今回の大魔術で、アクアのマギアたちのやる気のために非常に頑張っていることを改めて思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ