紫は別に血色良い印象はないね
リソくんはそのならず者のことを思って、ずっとムカついているように言って、眉毛を引き上げて、ちょっと気持ちを変えた。
「まあ、その『毒液』の悪行も大魔術が終わったら終わるかもしれない。それは毒草から来ている毒素を精製したものだと言いましたね。そして、その沼地も毒草も……今回の工事が終わるとチカラを失うんだ。もう、口止めするために旦那を狙った連中も、その屋敷の事件の依頼主もその主も、心配する必要はない!毒のことを考える必要がもうなくなる。非凡の毒がなくなるから!どうでもいい!そうでしたね」
「そうだな……」
私はギルドではあえて知らないふりをしているが、ふつうに今作図をしている……この机!机の中心に隠れている……特殊な装置に保管されている金属の瓶を持っている。瓶には、その「紫」が入っているのだ。そして、それはたぶんウリエル教授とガブリエル教授がやろうとする今回のプロジェクトが終わると、効果が終わる。色がなくなるかも知れないのだ。
その紫は……まあ、実は毒自体は別にいいのだ。大事なのはリソくんの「使い切っているエーテルから色を戻す方法」だ。それがどの能力で、どの理由でできているのは、今もぜんぜんわからないが、私の目的を果たすためには、リソくんのそれは凄く都合がいい能力だったのだ。だからもちろん、もっと彼女の立場で適切で上手く使うには調べ物が必要だという事だ。
「結局、ここの紫の液体はこのまま保管して終わりですか?」
リソくんは机をコンコンと叩きながら私に訊いた。
「そう、なんもやらない。やらなくて実験だ」
「そうですか?ただ待って、透明になった液体を観察するだけじゃあないですか。なのに実験?」
「そう。ただ待って、透明になってる液体を眺める、それが今回の、わたくしたち『鋼の秘術』としての実験だ。
私の常識で、源からの偉さが切れたらそのエーテルは終わる。紫は完全になくなって、水やワインみたいな平凡のものが残るだろう」
「まあ、そうでしょう」
「それが、違うかも知れないのだ」
「はへ?」
「この場合、明らかに使い切った非凡のものを、きみの方法で生き返せたのだ。色が戻ったのだ。量も話に合わない。もともとは、私が屋敷から持ってきた木材からのエーテルはそんなに多い訳ではないのだ。だから、本当にわからない。『紫』が残るかもしれない。だから、それを確認するだけで凄い発見になるのだ。
そして、しばらくの間の私はマギアたちとお仕事をするので、あえて非凡の意味があるカルマを残して、それがいいわけがない」
「それもそうか……
でも、本当に色が残るとして、それがそんなに大きい発見になるのですか?」
私は強く頷く。
「凄い進展だ」
「へえ」
私は自然に説明を始める。
「基本的に『もの』は有限なんだが」
「そうですね」
「命を持つものが死ぬと……その、よくわからない霊のエーテルが体から別れを告げて分離されるのが、命というものなんだ。その離れたものは、もう色が落ちていて、わからなくなった、エーテルのようなものなのだ」
「そしてそれがわかる人が死霊術師や他の面妖な方法を使う人だと言いましたね。『ウチとは違う』とも言いましたね」
「そう。リソくんの特殊能力はそのどれとも違うものなのだ。もともときみの能力は輝いて大きい特質のようなものではないしな」
「それはそんなに嬉しくない」
リソくんは少し、むっとする顔でそう言った。
「珍しさではなくて強さや大きさなどを言ったのだ。それもそれで凄い事だけど、ちょっと強い事、ちょっと大きい事で、君の能力の方がもっとすごい」
「そうかな~~~続いて良いです」
彼女は瞬間表情を戻して事務的に言った。
「そう。その無色から紫色を戻して、鮮やかな非凡のものにしているから、これは『大魔術』が終わったら予測できることが2つある。❶毒草の影響が切れて色が消えること……今言ったな❷今はリソくんのエーテルとして扱うので、色が残る。2択になるのだ」
「いや、わからないことです!!!」
リソくんは大げさに顎に指を当てて推測をした。だから私はだまって彼女の言葉を待つ。
「なにがだ」
「❸今回の大魔術が終わっても、そのエーテルの偉さが切れないかもしれないじゃないですか。なにかの理由があるかもしれない!」
「それはそうだが、その場合、直ぐガブリエル教授が確保している溶液などと比べれるからチェックはちゃんとできる。今回の対照群はそれではないから」
「そうか」
「そうだよ。討伐が終わった後の工事がすごく長いから。働いていると、そのような話を聞く機会はぜったいあるな」
「なるほど……工事が終わるまで戻れますか?」
「そうだな。言い忘れてたけど。たぶんずっと現場に残って状況を見る必要があると思う」
彼女はなぜか少し達観しているような神妙な表情で言った。
「思いました」
「いい子にしていると、戻ったあと、地下の施設を見せてやろう」
「地下なんてないでしょう、この家」
「普通にあるよ」
「マジか」




