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凡人がどうしろと言うのだ

「けっこう皮肉なことだが、以前の『毒殺屋敷』の時に世話になった木材屋も今回の技術者の中に入る。私も含めてだ」


その「毒」を使った事件の後始末に呼ばれて協力した人も、周辺の地域の毒の根源たるものを解決する「大魔術」……それが終了したあとの平凡の工事にはまた呼ばれるしかないという事。これは、いつでもどこでも、実務の界隈は何人いないということを意味する。


「まあ、ウチが知るに、そして旦那の話でも、『非凡の(わざ)』の責任はその非凡のものを扱って『平凡の物事』になるまで確定をした、その使い本人やそれに準ずる集団に発生するから、そのあとの旦那たちは別に責任はないと思いますよ。非凡の責任はない」


「そう。だからこそその原理で、(ディミティス)を使ってその事件の(あと)を追うのは難しい。『平凡の方法で遮断された』そのサツジン事件の追跡は難しいのだ。平凡の方法で探るには毒が非凡のもので分からない、非凡の方法で解くには……平凡の方法で掃除されている」


「『全能』のアルベルト・レグノの腕前でですね」


「うむ。そして……『犯行』と『掃除した人』も分離されて、その気持ちを築く(ぎょう)さえも分離されてるのがその件だ。しかも、私のような非凡の素質がある人以外は、非凡のものごとは見て聞くことすらもできないから、自分たちがどのような行為に加担したのかも把握できていないのだ」


「そうか。『何かが付いている』すらも見えないのか!!!」


「そう。緻密な考えんだよ、これは」


「なら、完全犯罪というものですか?」


私はいちおう頭を傾けて答えた。


「さてぇ、どうだろう……?

安全だ、いちおう。でも、これは平凡の責任は発生する凄く面倒くさすぎることで、今回は上手く終わったと思えるが、お偉いさんの理屈は基本的に理不尽だ。『でも、止めなかった君たちも責任があるのではないか?命に当たる責任がね』になるのだ。そして、関わる人が多いので、普通の証言と圧力で、隠匿はかんたんに消えてしまう。その場合の私は……まあ、別に平凡の技術者として関わったそういう荒れた物事が、私の存在も焼却されるような……大きい問題にまでなるわけがないのだが、平凡としての生活の基盤がいっぱい変わってしまう。だから、別に関わりたくないことだ」


リソくんは目つきを少し鋭くしながら言った。


「そうですね。この可愛いリソくんともお別れになるかもしれないことですね。そして、ウチは生存問題になる」


「それは流石に何千年生きたおじさんとしては、責任を取るよ。きみは無関係で、安全で、大人としてのお仕事を保証する」


「ヒュー」


彼女は奇妙な口笛のような音を出した。なんなんだそれは。喜びか、からかいか?でもそんなに不快ではない。そしてその面妖な目つきは辞めて欲しい。


「でも、先言った通り『マキナのような人たちの動く』によって硬く結ばれて、その人たちの利害得失が崩れない限り、秘密は守られる。そして、実務者はそれができる人だ」


「なるほど」


「唯一不安定要素は……賊を操って証拠隠滅を狙ったもの。そして、たぶんついでに私分の報酬も狙ったんだな。その『もう一人の依頼主』が居たのだ。それも実行犯の賊は倒したり、有料道路の警備に渡したが、裏はわからないままだよ」


リソくんは飲み物を飲み切って、舌鼓(したづつみ)を打った後、腕を組んだ。


「う~む。ウチはてっきり、今ごろ旦那がその裏まで突き止めて、『毒液の製造』の工房みたいななにかさえも手に入れたと思ったんです。なんか依頼を貰ってないのに出かけてたから」


「それは普通に『コア』の為の宝石や木材/金属などを探ったから。そして、調べていたら、ギルドの告知が届いたということだ」


「う~~~許さない、その裏のもの」


「そうだな」


「なんなんでしょうか?やはりウチの想像通り『毒液の精製/流通をしたもの』なんでしょうか?それとも、もっと巨大な裏が……!!!」


「いや、そんなにはないはずだ。『巨大な悪の背後』は想像すると美味しいんだが、考えすぎになりやすい」


「そっか」


「物事と言うのはもともと1段階/2段階が限界だ。そんなに複雑度が高い行動が続いてできるには、古代ローマのなんか暗号システマのようなものと、大軍の勢力などでも必要だろう。東方のなになに国の間の策略のための虚々実々の手紙とくっそややこしい考え方が必要だろう。そして、その関係のどこにも発生する報酬と口止め」


「今あるかも知れないじゃあないですか」


「そういう連中が居たら、それもそれで何かの『属性の非凡のもの』なんだ。『怪獣』や『海怪物』のような、『妖精』のようななにかの怪人ではない限り、説明ができない。そして?」


リソくんはちょっと笑った。


「そうですね。人間の範囲で、なにかの奇妙なことができそうなものは、だいたい聖堂の権力に集中されている」


「なぜならそれが、社会が前提しているヒトには仕方がない、大きい塊の方だから。そう、マジョリティだからだ」


「うう……ウチが好むキッチンとした(ことわり)なのに、なんかもやもやします。

いいでしょう。その、直接的に『毒のことが証言できる口が減って欲しい』精製の工房がいるとして、そいつらはいったん、お金がないです。銭目的です」


「そうそう、それがいったん私たちの結論だ」


もちろん、この事は、以前「事件」から戻って何回も、食事の時に話している。

リソくんがちょっと積極的になりました。「後継機」たちに少しは親のようなものである必要があるからです。

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