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確かに作ったのは正しいが

その後は、ふつうに今回の「大魔術」のお仕事を続いた。次の相談までは時間が余っているので、忘れる前に工事の繊細なところの処理をしておきたいと思ったからだ。


(わたくし)は別に『写の記憶』だからぜんぶ覚えるけど、その記憶の値段は変わるからな」


「なんも言ってませんよ」


リソくんは私の作図を見ながらそう言った。

私は作業を続く……幸いなことに、沼地の浄化が整えると、そこはふつうに湖になると聞いた。ウリエル教授がそう言ったから、あってるだろう。だから、その部分まで土で埋めることは心配しなくてもいい。


「もともと沼や湖を土で埋めても、岩盤がないから穴が開くのだ」


「ふむ、そうか」


「それが土地だ。人間の短い人生や、私くらいの生活が長すぎる人が見ても……地形というものは別にかわらない。それが、いちばん変わるのが雨と川水の動きによるもので、新しい火山からの岩盤でも出ない限り、いったん削り始めた岩は石になって、いずれ石は砂と土になる。もう沼地の部分は、土。砂と泥になっているのだ。

そのような部分まで工事ができる人はいない。それこそ、『シックス・システマ』くらいにならないとできないだろう。だから、もう砂と土と泥になってるところは、もともと固い基盤になれない。『それでもそこを農地にしなきゃいけない』とか、そんな無理な話ならどうしようとも思ったけど、ギルドは仕事を知っている人で助かった」


「おやおや」


「なに」


「『魔術ギルド』の堂を作った時にめちゃくちゃ言われて仕事が大変だったと仰ったのではないでしょうか、レグノの旦那」


「それはそうだけど、非凡の物事を知らなくて平凡の技術も知らなくて、しかも平凡の勢いや芸術性みたいな要素すらも持たないお偉いさんの要求に比べてみると、ギルドの人たちは『やりたいこと』はちゃんと立っているからいいのだ。彼らの行為に合わせるのは凄く大変だけど、実際平凡の建物や装置が上手く嚙み合って回ると、凄く……連結できた気分になる」


「たしかにギルドのシステマが続く限り、それは欺瞞ではないですね」


「そう、聖堂の権威に基づいてそうだ。人の世界観によってそれはただの虚勢ではあるけど、1000年続いている虚勢はもう誠だ。彼らの技は互いに合わせてるから、一人二人が抜いたとしてもそんなに崩れない」


「それは意外だ。マギアの連中はぜんぶそれぞれ違う方向で頭がおかしい奴じゃないですか?」


「流石にわたくしはそこまでは言ってないと思うぞ……」


それくらいになると、もう信頼の問題になってしまう。冗談にもほどがある。


「でも、それぞれが非凡の技術者としてちゃんとすると、それはいいことですね」


「そう。ギルドの堂を作ることに参加した時は本当に大変だったけど、『水の堂』とかは自信作だ。そこは、実は『すべての水のマギア』の権威が少しずつ集まって維持できているのと同じものなので、今の『水の堂』で直接働いている水のマギアが同時に大変になっても、その『世界の水のマギアたち』の残っている余力で少しは耐える。そのような意図で作られている」


「どうやってそんなことができる?」


「水はどこにもあるから」


「すげえな。どんな装置ですか?」


「極めてかんたんだ。水をずっと動かして新鮮度を維持する。違う水も保管できる」


「へえ……」


リソくんは水のことを聞いて連想したようで、ドリンクを一口含んだ。私もそれを真似る。


「ふう……だから、マギアとしての清水の魔力素材も保存ができて、ギルドの色んなお仕事が便利にできる。研究も生産もできる。そして、ずっと新鮮度が維持するから、冬の季節でものが腐らない様に、ずっと葡萄汁などが保管できるのだ」


「それはすごい」


「でも、その葡萄汁は葡萄汁で止まるわけではなくて、結局ワインにするけど」


「それも賢明な判断です。もともと世界に無限のものはないから、その『堂』というところの仕組みはそれをちょっと遅れるようにするだけだ。慣れてる形に加工して利用するのは自然のことです」


「そうだな。だからギルドのワインは私設計のあの堂の設備ができてから、評判が凄くよくなったということだ」


「凄いですね」


「うむ、実際凄い。

そして、そのようなアイデアを出したのが水のマギアたちだったということだ。別に私がぜんぶ作ったわけではない。設計はしたが、ほぼ全部しているが、やりたいこと、作りたいことがないと道具一本も作れないのが技術者だからな。逆にそれが正しい腕前というものだ」


「ウチは技術がもっと好みだけど、旦那の話は分かる気がします。やりたいことが大事ですね」


「そう。自分の素に合って、環境と特質に従うものを探す事は大事。それ全部を含めて……やるべきこと、やりたいことを決めるのが大事だ。それができなくて自分の人生は失敗したと、絶望で嘆く人間を無数に見たんだ」


「怖いな……」


その「怖い」は、絶望する人間が可哀そうだと思うのだろうか、普通の人間として悩みすらも普通だと思うのだろうか。リソくんの黄金の瞳はなんか冷たかった。

海外の冷たいニュースがありました。今回はその影響を受けた話かも知れません。結局お偉いさんは何々戦争を……贅沢とチカラのために使うだけ。くだらない。

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