理想は求めているというそのプログレス
「深紅の悪魔はもともと影響されやすい種族。わたしもそれには例外ではないということだね。だから『深紅の悪魔でありながらクララ』としてぜんぜん矛盾を感じてないんだ」
「なるほど」
「物語として残るには、『綺麗なひと』として残って、『凛々しいこと』をやるのがいちばんなのだ。わたしが深紅の悪魔の成れの果てとして思うに、今のわたしとして他の深紅の悪魔を倒して平凡の人たちを助けることはずいぶん凛々しいことに該当する。なぜなら、人は全てを見て聞くから。『深紅の悪魔も』全てを見て聞くのだ。これは『大魔術師』くらいの位にならないともともと逆らえない。わたしがいちばん上手だ」
「はい、それがおれたちの話の始まりです」
「うん。それがきっと『星に出会った絶対結果の』クララとして一番『森の姫様』の道だとわたしは思う。ぜったい桜というものの理想を叶う」
「もともとサクラというものがどんな花なのかを知る必要があるがな」
「ふむ、確かに。そういうのは異国のことを知っているアルベルト氏に聞いてみるか」
「なんでそのおじさんの話が出るのです」
エンブリオ少年は不満そうな表情で言った。彼はわたしがいったん他の男子に近づく事自体が気に入らないのだ。まあ、それはわたしのステラ・ロサさんとしての器を強くしてくれる支えなので、別にわるい気分ではない。
「いや、その人ふつうにギルドに居たよ。しかも土の堂に居たんだけど」
「そうでしたか!?」
「うん。ウリエルのせんせいに呼ばれて、今回の大魔術の設計図などを作ってたらしいよ。今回の『毒草の討伐』が無事終わったら、ほんまるはその平凡の工事だろう。現場のお仕事ができて非凡のことが見える人材なのだ」
「ふむ、それはそうですね。おれも大魔術で顔を見る事になるかも知れないですね」
「多人数だろうからそれはわからないけど。背が高くて眼鏡を付けているおじさんだ。丸くて目が良くなるやつ」
わたしは今のみんなが全員眼鏡のことは知ってるけど、でもその形が面白いと思うので、自分のお手手で眼鏡のカタチを作って見せた。
「その人は非凡の人なら、なんで眼鏡とか付けているのでしょうか。目が悪いのでしょうか」
「ふつうにそうじゃないかな?非凡のものとして長生きするとしても、視力も無限だとは限らない」
「確かに」
スフィア・ヴィデーレはなにかの水晶やガラスなどで出来てる丸いレンズで近いものと遠いものが良く見れるようになる道具らしい。だから見える球だ。彼は普段は別に非凡の方法を使ってお仕事をしてないと思うので(使ってもわたしの「薬草の検査」のようなことだろう)普通に平凡の書物を見て、遠いところのものが見やすくなるために眼鏡を付けていると思われる。
「その人、やはりなんか怪しいんだよな……まあ、見間違いかも知れないけどな……」
ブイオさまはまたアルベルト氏のことを疑わしく思ってた。
「なんでそんなに気にしているのですか?ブイオさまのこの世界の謎って、『その、星のワンちゃんはどこに行ったのか』くらいではないでしょうか」
「うん……」
「星のワンちゃんのナニカがなくなったと言いましたね」
少年は結構慣れてない話題だから書物を捲る事を止めてこっちを見た。
「うん。ステラ・ロサさんはもともとは桜のドルイドのわたしではない『星のワンちゃん』という、夜空のものであるのは深紅の悪魔と同じだけど『心の言葉』ではない『霊属性のエーテル』で成っているような個体の名前になる予定だったのだ」
「今のおれは想像しにくいですね。もともと桜のドルイド、ステラ・ロサさんが居なかったら『今のおれ』がなかったとも思いますね」
「確かにね」
ブイオさまの話によると、その非凡の生き物は概念的には犬や狼みたいなもので、使い切ったエーテルのことを嗅いで噛むことが上手いらしい。だから「ワンちゃん」と呼ぶのだろう。狩りに連れて行くワンちゃんのような感覚なのだ。ブイオさまは「星の亡霊として座標というものを保ちながら、自分の質量というものを取り戻す」ことが一応の目的なので、助っ人が必要だったということだ。そして、霊属性の心と体を持つ非凡のもののそのワンちゃんは、ブイオさまと属性も合って、因縁もあるものだったらしい。
「深紅の悪魔にはその星のワンちゃんの情報はないのか?」
「そうですね。なんか因縁がある種族だといいましたね。わたしが覚える限りは知りませんが」
「そうか」
「非凡のものの間もなんか互い知らなかったりするんですね」
「そうだな。属性が一致するか似ているか、世界が近いかなどの関係があるとしても、その世界が非常に広かったり、『生き物の世界と幽霊の世界が違う』ようにもともと合わない理由があると、わからないかもしれないね。わたしの知識ではそんな非凡の生き物は聞いた事がないんだ」
「わたくしの『狼の星』としての感覚では、隣の国の国民を一人雇って仕事をさせる感覚だった」
「なら、知らなくて同然かも知れないですね。おれは騎士小説で出る異国のことはちょっと読んでいるけど、その地方で具体的に人々がどのような生活をしているのかなどは知りませんね」
「まあ、そうだね」
わたしはエンブリオの言葉に頷いた。深紅の悪魔は互いに心の言葉が有って互いの個体が区分出来て、起動している人の間、様々な情報が繋がっている奇妙な構造を持つ種族なので、このように覚えてないのは、もともとわたしが経験した深紅の悪魔の社会には「星のワンちゃん」の知識がなかったということだ。
「星の単位で考えると確かに生き物の知識の詳細などは知らないのだ」
ブイオさまが言った。
「そしてくららちゃんはその属性を纏っていて、都合がいい魔力素材だったらしい」
「そう、だから今は『桜のドルイドのマントの影』ブイオくんとして非常にアレだけど、当時は『わたくしは運がいいな、わんわん』など考えて調子に乗ってたな。でも、その後『星化』の間、謎の理由で『狼の星の位置』から受けていた『星のワンちゃんの書物』のようなものが、急になくなったのだ。どこに行ったのだろう……」
「非凡の生き物も書類のようなものがあるのですか???」
少年には初めて聞くことばかりだった。
なんかこういうものまで全部書いても良いかな……になってるけど、シックス・システマなども一端書けるのを全部出したら進んだので、最近Xのポスト版の最新内容も入っている「カオス・シード」編です。




