わたくしはブイオになってこの子をステラ・ロサと呼び始めたのだ
わたしはいったんまた話をまとめた。
「わたしや、わたしの前のクララちゃんが天才だったということで……いったんいいだろう。今はネロ様の話を出す気はなかった」
「そうだな」
「わかりました」
「えーと、なら、わたしが『霊術師』だったというのは、純粋にクララが幽霊だったからだ。わたしが崩れながらもわたしに憑いていた心が……亡霊だったからだな。これは問題なさそう?」
「異論無し」
「おれもそう思います」
よくわからないことだが、たしかに幽霊が霊属性のチカラを持つのは非常に自然に感じる。ぜんぜん自然のものではない超常現象としての自然だから、それもそれで話が変だが……怪談などの変な話の中では、わりと普通で出ている事件で、理にかなっている。
「くららちゃんの記憶のついて喋る話題に戻る。わたしは確かに『生きているものがよく感じれない、見えない』状態だったけど、そういうのは非凡の才能とはちょっと違うよな?『星化』のあたりの記憶が浮かんでからも前のわたしはエーテルの知識が足りなくてこのことに不思議さを感じれてなかった」
「生き物が感じれないんですか?」
「うん、ぜんぜん。そして地形は別に問題なく感じれる」
「うん……不思議だな。
でも、これはどうでしょうか?生きている、というのが逆に平凡の人が非凡のものが見れてなくて聞こえてないのと似たような感じだ」
「ほう?」
エンブリオくんの話はこうだ。平凡の人は非凡のことがわからない。見えなくて聞こえない。非凡の出来事で行使された結果はわかるけど、その過程はわからないのだ。それに対して、非凡使いは相反するもののエーテルはスフィアの段階で圧迫感を感じたりするから、影響をされる。つまり、非凡使い同士では互い影響するエーテルが、平凡の人にはスーっと通るのだ。少年はこれが、「幽霊が生き物に関して」は逆に逆なのではないかという話だ。幽霊は、平凡の人がエーテルが見えないことのように、人の命が見えなくて、人の命があるものが通ってしまう。そしてこれは、何かが合わないものだからなのではないか。
「うん、それで正しいと感じる。それはわたくしには結構わかりやすい概念だけど、そのような『理学』の話ができるのは……何百年かかるかわからないな。でも、多分合ってる。わたくしも同じく、お前が亡霊の状態だったから意思疎通ができたのだ」
「うん?そうですか?」
少年は疑問を示した。わたしもブイオさまの話は『星化』の直後に聞いたのと少し話の方向が違う感じがして説明を欲した。
「いや、ふつうにわたしは深紅の悪魔の混ざりだから、ブイオさまと縁があるでしょう。そこもまた新たな設定ですか?いや、別にわたしの『クララ式』がそういうもんだと言ってるのではなくてですね」
「はは……逆だ。わたくしが星のコアとして破壊されてたから、話して喋るにはその相手にわたくしが見える必要があるのだ。星の亡霊だったのだ」
「あ、それはそうだ」
わたしはくららとして、地面に当たった直後、立派な狼を見た事、そしてステラ・ロサとして背に乗ってフィレンツェを離れた後、しばらくスパルタ式訓練をさせた酷い犬の記憶が強かったので、別に「この世界に来たばかりの」ブイオさまが本当に世界のあらゆるものと相互作用が難しい状態だったとは知らなかった。
「わたくしがお前を認識するのは問題ない。もともと深紅の悪魔は狼の星で生えた非凡の生き物なんだ。でも、わたくし『が』見えたのは、その時のくららちゃんが霊属性として因縁があったからだ」
「そんなに変わりますか?おれも今ブイオさまはよく感じれますが。乗ったこともありますが」
「それは星化の時に『座標の衛星』としてステラ・ロサが本格的にわたくしの存在証明をし始めたから。その時わたくしもブイオくんになったのだ。呼び方というものは相対的だから」
「あ~順番がそうなりますか」
わたしはそれからは説明できることだったので話に加えた。
「うん。わたしは結局謎の理由で……元のブイオさまの予想『星のワンちゃん』とは違うカタチに収まったけど、どっちでも、その星のエーテルの勢い、となんか『座標』というものの代理人としては問題なく起動してる。そうでしょう?」
マントは頷く。
「そうだ。わたくしは別に人々に知らせながら『欠片』を集めていきたいわけではないから、これからも影が薄い狼としてこれに潜んで居続けると思うが、誰かを乗せるなどのことができるのはわたくしもまた『星化』の時にこの世界との因縁を深くしているからだ」
「確かにそれは以前も似たようなことを聞いた事があります」
「わたくしが『森の姫様』のことをぜんぜん信じなかった時以外は、わたくしは間違えることはあるかもしれないけど、嘘はつかない派だ。その方がより大変だからだ」
馴れ馴れしく過去を流そうとするブイオさま。いや、その「森の姫様」を信じてなかったのがもともと欺瞞だったのではないか。それほどではないか?
「ううん……むにゃむにゃ」




