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通過の術

「まあ、おれが『四属性』の社会の常識が強い人だから、もし今の社会ではエーテルの属性として言われない何かの属性(アトリビュート)があったとしてもおれはそれが感じれないという事です」


「そう……」


「それはこの子も同じだ」


「ブイオさま?」


わたしのマントがビクッと動いてわたしの頭に被られる。いや、マントが自ら被っているからこれは能動的に頭を被るのか。


「今のステラ・ロサとしての名前はそのうちに『クララ』も『灰色の呪い』も含めている」


「そうですが」


「それでも、『星化(スターライズ)』の前、その両方だった『霊属性の術師』の時のような真似は今ぜんぜんできないのだ」


わたしはマントを体から離して頭の裏で手を組んだ。


「うむ、確かに。

わたしはその時のわたしがどのように考えて見て喋っているかはだいたい覚えているけど、その『霊属性』というものの亡霊のエーテルに直接触って動く感覚は今はない。ただ『トリプル亡霊(ファントム)』だなんだ言っていても、ずいぶん前向きで正義感に満ちてる桜のドルイドだ。そして、逆に同じ属性の非凡を見捨てる薬師の庶民だ」


「どっちもおれの素敵な貴女です」


「エンブリオ少年、今日はマジでどうしたん!?」


たぶん大魔術の緊張ですこしおかしくなっていると思う。これから事件が解決するまでずっとこうかもしれない。ベッド上のブイオさまはぱくぱく喋った。


「まあ、とにかくステラさんは深紅の悪魔の『心の言葉に直接触る特徴』と『古代魔術・木の木属性』に慣れている個人として生きていた存在だ。そして、その『霊術師』だった時は今も記憶もあって、だいたい本人だという自意識(アイデンティティ)も持っている。だが、今はファントムのことは星の亡霊のわたくしを除いて別に触れれるわけでもないし、見えても聞けてもいない」


「うん?それはちょっとおかしくないですか?『見て聞く』能力は属性をあまり問わないのです。『触れて纏える』ことが他の属性は出来ないのです」


少年はブイオさまの言葉に疑問を示した。たしかに、わたしもわたしの中のわたしも別に木属性ではないとしてエーテルの物事が見えないわけでもない。『四属性』だけを認めてもマギアたちも別にドルイドの呪術の緑が見えない訳でもないのだ。なのに、(れい)とやらはなんでわからない?


「確かにブイオさまが『夢の国』のよくわからない夢話をしているが、『使い切っているエーテルだから』見えなくて感じれない感じらしい」


「そうだよ?」


「でも『霊術師』のわたしは確かに『門を通る』などのこともできたはずです。それは使い切ったエーテルでできる技ではないです」


「なんだそれは初耳だが」


「本当に亡霊だったんですね」


二人はふつうに驚いた。わたしはその反応が意外だったので話を続く。


「鹿たちに道案内をされたあと、ここまで来たのです。霊術師としてのわたしは亡霊だから、ひとの生命(いのち)と合わない。だからクララの隠れ里の家族も村人たちもわからなくて、白くて痩せた牛さんもわからなかった。フィレンツェに来て、番人もわからなかった。でも門は閉じていたから、『どうしよう』も思ってなくてなんか気づいたら亡霊のパワーで通過したんです」


「いや、『くらら』ちゃんの質量があったはずだ。何人分くらいの微力な『灰色の呪い』の動力(ターボ)でそれが閉ざされた大門を通るのはおかしい」


ブイオさまは「理学(フィジックス)」の言葉もめっちゃ混ぜって話してた。


「ブイオさまは亡霊なのにいつもなんか硬い狼になれたり影になったりするんじゃないですか。今日も風の様に気持ちよく走ったじゃないですか」


「それはわたくしが『兵士の国の型物理性』のバックアップを受けて、物理演算(ぶつりえんざん)……ものにあたって動くそれぞれをぜんぶ数えているから……」


わたしはブイオさまの反応が本当に意外だったので、少し釈明をした。釈明というか、戯言を編んだ。


「うむ……そうですね。これはどうでしょう。それはクララ式エーテル操作の『霊属性バージョン』だったんです」


「それはどういう話だ。また新しい設定か」


「クララ式エーテル操作って何種類もあるのですか」


失礼なことを言う二人だった。


「何種類というか……それは一応『万能』を願った戯言だ。そういう理想を重なったのがわたしの『森の姫様』なのだ。

わたしはクララとして……いつも誰でも自分がこの心と体を動かすと自分である生き方だったから、どうぜんドルイドのばあちゃんから聞いてる『さまざまな属性の非凡』のことも想定して思っていたのだ。だからその時のわたしは『霊属性の非凡が自分をコントロールする時を想定して動けたクララ』なのだ。わたしは別に死霊術師のような霊属性の術師じゃないからわからないが」


「わたくしが知っている深紅の悪魔はそんな種族ではない……」


「いや、今話しているのはドルイドさんの人の時の、おれと2つ離れているクララさんとしてのドルイドさんなんです」


「そうだった」


相当ややこしい主人公であった。


「それに挟んで初めて知性体を動かすことになったのが75000年以上生きているわたしだが……その時は流石に深紅の悪魔として亡霊だったから、亡霊判定だったのではないか?ということだ」


「ふむ」


「いや、でもくららちゃんの体がなんで門が通過できたのか全然説明できない」


「心の言葉が読めるのではないでしょうか。『クララ式エーテル操作』に書いているのです」


「なんか文書でもあるのですか???」


少年は瞳が揺らんでいた。


「そうだね。わたしの心の底はおろか、水面に凄く厚くあるのだ。『クララという人を動くこと』『今まで考えた最強無敵のエーテルの方法』などがな」


「そして、その文書(マニュアル)というのは、(スフィア)や体の感覚を張ることなど、けっこう細かく備えているのだ……」


「へえ」


エンブリオ少年は「クララ式」に興味があるようだった。いや、これは本当にわたしが自分自身を動かす事以外は意味ないと思うよ。

ステラ・ロサさんはミ=ゴ(桜桃蜉蝣)として心の種族なので、恥知らずだけど少しは恥ずかしさみたいななにかがあるのです。そしてそういうのがリソくんはぜんぜんない!というのがリソサイドを「科学担当」にする方向性です。いやーステラ・ロサさんで「エーテル科学」までやろうとしたけど、ぜんぜん回らなかったです。

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