チート袋
「まあ、なんか理由があるのでしょう」
「そうだが」
そうだ。なんか理由があるのだろう。記憶もこれからの旅路で少しずつ戻るはずで
もともと「わたしに混ざっている深紅の悪魔も」灰だったじゃないか。きっと覚える。
わたしは、いまそういう事を考えても仕方ないから、そこまで整理できずに狼さまと語った「もの」の事や「非凡の特性」などを考えて改めて思った。
「あ、カバンがだめですね。これは」
「バカみたいな想像だ」
「また心覗いちゃって、いやらしい」
バカみたいな想像だけど。
はじめては、「狼に都合よくものを収納させる」術ができたらいいと思って、そのまま狼さまがわたしのマントと合体していけば最強じゃん。無限倉庫編だ、まで想像したけれど
「わたくしに入れれるのは星のエーテルだけだよ」
そうだった。
もともと狼は何かを入れる箱みたいな万能宇宙自動人形とかではなくて、空っぽになっているお星さまだ。
じぶんの「欠片」を集めたり、その星に住んでいた民である「深紅の悪魔」を狩って、わたしが扱えることができない余分のエーテルを入れたり、とかは問題なくできるけど、
「もともと入るとかそんなもんじゃないし、カバンとか乗せてもマントに入れないじゃん」
ものは勿論、薬草とか果実とかお金とかが必要で、平凡のものだ。
狼さんに乗せても、影に化した瞬間、ぜんぶ落とされてしまうのだ。
「もともと乗せたくない…」
「それは考えてなかったです」
狼さまの意見はともかく
そうだった。そんなにおいしい話はなくて、わたしは特別なドルイドちゃんであっても、仕方ない田舎出身の現代人で、狼はなんか古にお日様より500倍明るかったとか戯言言うけど、今は地に落ちた星の亡霊だった。
「…」
「すんません」
にゃあ
ちなみに亡霊と言えばだ。関心の「マントに入る能力」は、本当に狼が星の亡霊みたいな存在だから、だったらしい。
訳あって、「流れ星」になっちゃった狼の星は、その「名前」だけが、「殻」が残った感じで
なんかこの世界まで引かれるように来たと言う。
自分はつまり、田舎娘の亡霊が魔法生物の亡霊と合体して、その時空から降りてきた不思議ちゃんの星の亡霊に拾われたトリプル亡霊の桜のドルイドで、
ややこしかった。
そして「悪魔」の攻撃を盾になって弾いたのは、それでも「まあ、お星さまは隕鉄とやらと似た性質を持つだろう」という仕組みで
くっそデカい狼なのは、狼の星という名前を持っていたお陰だ。
影だけにね。
影だけだけどね。
でもそれが、狼さんとして、全然攻撃ができない。
狩り人の猟犬みたいな連携ができたらめっちゃいいと思うんだよな。走れるのにな。
威厳がないとか言ったけれど、狼さまは、まるで行動原理のなにかを失っているのだ。
なんて無力な神様だ。
神様ではなかった。
「それはおまえの作り話だ」
「いや、きっと貴方様は、いつか!わたしが神様にしますから」
「なにかの一発冗談ではなかったのか…それ」
「それが物語なの」
ふん。わたしもいつか村みたいに拠点ができるかもしれないけれど、今は出来る限り「悪魔」を倒していきたい。しばらくは無理だ。
なら、仕方なく、わたしは腰に紐をつけて、ちっちゃいものでもちょっとでも入れれる袋を持つことにしたのだ。
ドルイドのばあちゃんも持ってたし、普通のことだな。




