草木の四元素
「だから冬には何もなくて、凍って厳しかった。それが、今の春は活発になりましたと」
わたしはエンブリオ少年の言葉に頷いた。
冬は日差しも弱まって、水が凍り土も凍る。植物は病気になると生えないから……風、つまり空気のことも凄く大事であるが、この場合、冬に凍ると病や虫の害も止まる。その邪の生命力も冬には平等に凍って死ぬ感じだから、別に構わない。つまり、冬は四元素の風を除いた「お日様の光」という火のエーテルのようなものと、「平凡の水」と「平凡の土」が吸えなくなるから、植物は成長ができなくて、その植物の成長というものが発生しない分、わたしや木属性の存在に冬は厳しいのだ。(アルベルト氏はだから、平凡の物作りを本業としているのだろう)
これに対して人のマギア……四属性の魔術は「人の基準」と「素材」で様々な事ができるから、「植物が成長する過程で発生する緑」がチカラの源に限定されていると思われる(最小、この世界ではそうである)木属性によって、四属性、もしくは四元素の物語性を指定して使っているギルドの方法とは術の汎用性が高いものだということだ。
「うん。春になって、ステラ・ロサさんは元気いっぱいパワーMAXだ。顔もツルツルで最高潮だ。そして、そういうのは植物の魔法生物もみんな同じだろう。不思議な草と喋ったことにそういうのを感じた」
その謎の草はわたしと同じ系統だ。それが感じれたから、それもわたしに反応して別に「夜空のものだな!」などを言えずに色々喋ってくれたから。互いそういうことを自然に感じている。つまり、深紅の悪魔としてのわたしはこの世界には夜空のものだけど、他の深紅の悪魔と違って……覚えられないなんとか賢者せんせいが付けてくれた「あだ名」としてのわたしは、75000年も前から!この世界の古代魔術という方法を学んでいる分、人の弟子である非凡使い。だから、夜空のものとしての異質な感覚がないのだろう。
「そうですね。確かにラファエルギルド長は『奇怪巨木』のことを報告された時に、『毒草』の報告を聞いてから冬の間、あまり異変がなかったから、何かの間違いではないか、もしくはその植物が凍って死んでるのではないかくらいに思ったらしいけど、それはなんか生き残って、春になってる今、凄く量を増やしていた。そして、今阻止できないとこれからも増えるであろう……ということです」
「そうだな。すごい勢いで毒草の個体を増やして、この世界の様々な地方に旅をさせて、生態系をいいなりに変えて行くかも知れない。まあ、実は、わたしはドルイドさんとしてはその過程で奇妙な草たちが作り出す新しい薬草の効能などに興味がある。古の木の術師としてのわたしと、クララのわたしとして両方が興味があるのだが、仕方ないね」
「はい、ギルドが水属性を中心に危機ですから」
「うん」
今回の大魔術で浄化しなきゃいけない沼地は、沼地自体が使えないだめな土地だから、その分地域の農耕ができなくなるため、地方の取引や政治的に凄く大変になって、アストラさんによると「祟り」だと言われている。これは一部だとしても土の問題になる。そして、沼地からの草からの精製した毒は、「使えやすい、でも分かりづらい」非凡の毒として、直接的にガブリエラ・ブリナちゃんのストレスの原因になってメンタルを破壊しようとしているのだ。
「アストラせんせいはなにかいいましたか?」
「そうだな。ネロ様は昨年の非凡の流れ星を見て、なんか魔法生物の流行りがあるかもしれないと言ったようだ。それがどの種類なのか、いつどこで現れるかはわからないけど、ギルドの意思決定の相談役だから、ギルドのお仕事になること自体は予想できたということだ」
「なるほど。それは今回の大魔術の基礎の根拠になってますね」
「そうなんだ」
少年は机に張っていた書類を握って、前部分のページをわたしに見せた。
「[毒草の蔓延とそれに就く非凡の邪の影響について]」
「ふむ」
難しい言葉を使っている。
「アストラ・ネロせんせいの非凡の占星術の結果に基づいて、『毒草』の最新の情報を調合して教皇庁の『非凡科』の人たちが作った政策らしいです。このような文書から教会からの権威が来て、負担も来る。魔術ギルドは非凡の妙なものの専門家として、機能を証明しなきゃいけないのです」
「みんな大変だな」
「そうですね。こういう聖堂の権威がない限り、おれたちはただ勉強をいっぱいしてるだけの怪しい人の集まりです。人は非凡のことが普通は見えないし聞こえない。そして、マギアは短い時間は奇跡のような出来事ができるけど、それは崩れ落ちるもの。何人が集まっても結局、平凡の人たちが頑張って農耕をしてた穀物を食わないと生きていけないのです」
「だから『賢者の国』は存在できないと言ったな。でも、そこは魔力がクッソ豊富だったから別に問題はなかったらしい」
「そうですね。それが『ムー大陸』なら、納得するしかないですね。怪しい夢の記憶だけど」
エンブリオくんはなんかニヤリと笑った。
風が顧慮対象ではないのは地味に伏線みたいなものです。




