歴史勉強なんて誰が好むか
そういう意気揚々の頭白い女の子のわたしであったが、
桜のドルイドのステラ・ロサちゃんであったが
その場所は普通の森と川のあたり
自分には別にチート袋も、村も、下部も、ドラゴンの友たちも、無尽蔵のエーテルも、なにもなかった。
なにもないのは流石に語弊があって
相棒がいるよね、はい、狼さまと、ドルイドの賢者についてのチート知識、
服とマントと杖が一本。
自分の特性を良く使うとチート能力みたいになるだろうか?
まあ、世界の「深紅の悪魔」全部を捕食してその力を扱うとかができたら結構偉くなるかもしれないけれど
残念だ。白い嘘の少女ちゃんは質量が女の子一人分の魔力生物なんだ。
それは即ち、エーテルが扱える分も一人分なんだ。
動くのが人の領域を超えようとすると、一定以上多いエーテルと扱おうとすると、急に集中ができなくなる。
頭が痛くて目がゴミみたいになるんだ。
容量があっても、処理と、出力が足りないという事だった。
ふーーーん
花びらを飛ばして驚かせる事はできるようになったのにな、と
わたしは杖の球から出した花びらの息吹を「クララ我流エーテル操作法」で
廻を見て、聴き、自分の神経を繋ぎながら
左手の人差し指と中指でコントロールしながらそう思った。
「確かになんか上手くなったな」
ブイオさまが言う。
「ええ、術の方も、「小麦を治す」ことも「咳に効く粉を作る」こともできるように。
エーテルを使っちゃいますけど」
返事した。
「それは確かに困ることだ。わたくしはただ力を失っている存在で、「深紅の悪魔」から欠片を集めたい。
そして、おまえは不変の体で、「人の子でも「悪魔」でもない」不思議な体。どうなってるのかわからない状態で、無駄なエーテルの消費は避けたい事だ」
狼の星の欠片が、少年が言ったなんとか鉄みたいに、昨年の流れ星の形に落ちて、それにあたって力を得て復活した「深紅の悪魔」から、また命を奪う人殺しのわたしであったが、わたしの立場ではあいつらは別に人の感覚がしないからいいのだ。
まあ、どんな観点で考えても、わたしに混ざっている「深紅の悪魔」の立場でも「わたしはずっと止まってるままなのに復活したやつら」なのではないだろうか、そんなに抵抗感はないかもしれないな、と勝手に思ったり。
「なら、これからも「杖道」ですね。手応えあるし、「元素魔術」の攻撃の術などよりエーテルの消費が極端的に少ない」
杖道か、わたしは苦笑いをする。はじめての2週間はどんなに苦しかったか。
でも、今は、まままま、良い事だ。という気持ちになるのだ。
今確かに感じるのは、この杖の動きは、わたしステラ・ロサのもので、「クララの妄想」でも、「悪魔の薄い記憶」でもなくて、筋肉もつけない、すぐ薄くなる心と体だとしても、握った自分の経験として素振りはキッチリ累積するんだよな、という安心感だった。
ふん、やはり棒は良い。
「おまえの記憶の中では、他の使える概念はないか?」
「まあ、今はこのように地味。
これから「悪魔」を狩って、他のきっかけで、また何か覚えるかもしれないけど、
「賢者の国の記憶」に、攻撃の術とかはないかもしれないです」
「この星の「深紅の悪魔」が元の体を持っていた時期の、幻の国か。」
わたしの頭の中のぼんやりしている霧のような記憶では(やはり、今わたしが持ってる中で、一番頼れるのは異国のチート知識であろう)、いっぱい人がいて、
みんなこっち見て顔色くっそわるいけど、まあ仲間ではある、そういう記憶だった。
わたしは「悪魔」との混ざりで、ならこれはその子の記憶ということなんだけど
「ふん、これが学校というところか。
あの悪魔が人々と一緒に呪術の勉強ができるとか、本当に珍しい国だったな」と
「でも、他の「悪魔」の学生がないのはおかしくないか?」と
賢者が治める、行った事ない行った事ある国の事を考えた。
「まあ、その国には必要がなかったかもしれない。」
「そうか…でも、「深紅の悪魔」を狩っていけば何かいい手があるはずだ」
「賢者の記憶のことですね」
「いや、それだけではない。」
「?」
「知らないかもしれないけど、おまえが振る杖は、一応の魔道具なんだ」
「それは知ってますが」
「おまえの体が不変だとしても、そいつは不変ではない」
「なんですと」
「今のおまえの余る魔力は、夜で髪が光るとか、意味わからない機能しかしないけれど」
まったくだ。これはなんとかやった方がいいかも知れない。
自分の居場所を晒していい点は一つもないんだ。
狩り人の長女として改めて思い、
「まあ、神秘の娘の感じはしますよね」
「杖に「悪魔」を吸収させながら蓄積される累は、きっと、威力を増すことになる」
わたしもスルーすることにした。
「累?」
「石を使って町を作る様に、積み重ねて偉くすることだ」
「そうですか」
「いずれ知るだろう」
わたしはエーテル操作をやめて、花びらを球に戻して、狼に言った。
「ふん、杖と言って思ったんですが、やはり物がなんもないのは不便でありんす」
「ものか」
わたしはもともとの人間の頃、生活力皆無の病者の娘で、母に本当に感謝だった。
それが今は逆に、体が最強すぎて、
(それも実はなんか気持ち悪い状態みたいだけど、わたしは可愛いから良いのだ)
食べなくてもいい、認識妨害がかかっている狼のもふもふでゆっくり眠れてよし、川水と適当に飲んでも病気にならないからよしの、
トリプルよしのどうでもよしドルイドだ。これはよくない。
「15世紀の現代人として、物をなんも持たず生きるのも、ちょっと恥ずかしいもんで」




