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炎上

「火炎歩きを備えたのは、おれが万が一の状態で、他のマギアとしても活動できるからです。だから自分の動きを優先しました。もちろん中央堂の文書で予測できるくらいの攻撃魔術の準備ができてからの余分です」


「ふむ、そうだね」


元素魔術(エレメント・マジック)(フラマ)」ファイア・ウォーキング……もしくは、フレイム・ウォーキング。どっちでも。その(アルス)は火のエーテルを動かして、素早く火の海の上を移動できる方法だ。おれが思うに、今回 毒草の怪物を焼こうとも地面を焼こうとも、沼地のところどころは炎がいっぱいになる。「火炎歩き」はそういうところを移動するための魔術だ。少しアルマぽい感覚もあるけど、「(アリア)」ぽい運用もあるけど。確実にフラマのアルス・マギアだ。

周囲の燃えるもののチカラの方向性を上手く変化させて、術師の呼吸を(さまた)げる煙を吸わない様に動かす。同時に、その熱のせいで発生するチカラを、自分の動きに追い風のようなものとして利用できるようにする魔術だ。もちろんそういうのを生身の人間が軽々くできるのではなくて、こういう技には火のエーテルの量と精密度がとても大事だ。危険なんだ。おれが安全に使うには、術に有用な魔力素材と魔法陣(プログラム)が必要。だから今回それをいっぱい買うことになったのだ。


「ふむ、なるほどね。いいんじゃない。

確かに君の特徴が生かせる時があるかも知れないし、火炎歩きはその魔術自体が作り出して利用するほのおもあるのね。それはフレイム・ウォールよりは強力では無いけど、中々の威力を持つから」


「俺もそう思うよ。そして、俺が言ってた『強さが微妙な魔物のように、人を騙す方法を使う』場合も、機動力(きどうりょく)があるのはいいことだ。さまざまな状況に対応できる」


「はい!!!なら、今のままでいいです」


「わかった」


つまり、教授たちの話がどう転んでも、先 決めた大魔術での心構えは変わらないということだ。よかった。


「それでも、魔法生物は色んな種類があるのですね。人の言葉を喋るものと、そうでないものある。元々人の言葉が喋れるということ自体が奇妙です。そうとう人間のような真似をするな……と、普段から思ってました」


土の堂の図書室で見た「魔法生物の本」では、マギアの研究の対象になる種類は大体人のように喋れなくて、ステラ・ロサさんと喋ったという鹿も、心の言葉を繋げた感じだとブイオさまが言ってたしな。つまり、非凡の言葉だ。普通の言葉ではない。(こういうのは自分の魔力だけで作り出した使い魔を経由した言葉も同じものだ)

それでも、非凡ハンターの狩りの対象になるものは喋れる。平凡の人のフリをしたり、ハンターが強そうであると、交渉をしようとしてすぐ騙そうとしたり。よくわからないものなのだ。おれはそれが納得ができなかった。随分と高い品(イコール)喋れる種類ではないのか?品が高くて喋れない種類……そして品が低くて喋れる種類。これはなんでこうなってるのかが理解ができない。


「ほうほうなるほど。俺も非凡ハンターの仕事を直接的に一緒にしたことはないからわからないけど、それは確かに魔術ギルド員なら持ってどうぜんの疑問だ。せんせいはハンターと仕事をしたこともありましたよね」


ミカエル・グエラ教授は業務課のせんせいに問う。


「そうですね。何回ありましたね」


「そうでしたか」


「ええ。喋れる奴ね。人に化けたり奇妙な頭のカタチをしたり……まるで美的置物(クロマ・デュラ)で見る悪魔のようだ。そして、凄くペラペラしゃべるけど弱くて小物だ。鹿の魔法生物(マジック・クリーチャー)の方が強いと思うよ」


「へえ……」


おれも「深紅の悪魔」というものに襲われたことがあるけど(そして深紅の悪魔……からのもの……からのものに助けられた)他の悪魔もいるんだよな、この世の中には。

話をミカエル教授が少しまとめる。


「俺たちは理系(りけい)だから……神父さんの話よりは非凡の色と音で直接 見て聞いてるものを信じる方に近いが、もともと俺らの偉さが聖堂から来ることで、その権威に基づいて思った方がいいだろう。そう思うと、これらはつまり、『悪魔だからこそ、品が低くてどうぜん』ということだ。聖なるナニカは別に喋らなくてはならないというイメージではないだろう?」


「確かに常識的にもそうです。無口で神聖な生き物もいるはずです」


なるほど。よく喋ること自体は別にそのものの気品を保証してくれないし、むしろ「だから卑劣だ」になるかもしれないものだ。それよりは「その心と体に流れるエーテルの強さ」が大事。その強さによって、もしかすると互い似たようなものだとしても随分偉くて自分が持ってる力量で生きるか、他を(しぼ)らないと生きていけないかが決められるのかも知れない。


「うん。それがいったん教皇庁から非凡使いに下す方針だ」


「あの凄く気になってしょうがない『レヴィアタン』以外は反例もないよ」


「はい、おれもいったんその前例は読んだ覚えがあります。確かにそうですね」

業務課のせんせいも最近鹿肉を美味しく食べましたので、その型物理性(アイディア・ヒストリア)が働いて鹿を例えました。型物理性(アイディア・ヒストリア)というモンは本当にただそういうモンです。

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