騙す事も何かの行為ではあるから
そのあと、ミカエル教授にも非凡の化け物のことを少し聞いて、帰宅する事にした。
「具体的に人を欺く特徴を持つ化け物か」
「はい、今回の件で、そのような化け物は現れないのがいったん全般の意見だと聞きます」
おれは「気を付けて挑む」はもちろん100万回同意するが、どう考えてもおれが聞いた先例が綺麗に揃ってるのだ。一回を除いてね。
だが、いったんそれを聞いて理論の話に入ったら、教授二人は争いを始めたのだ。
「ふむ、そうだよ。熱量が大きい魔法生物は、人を欺くことができない!のではないだろうか……が魔法生物に対するギルドの定説だから」
そして、ミカエル教授はまたその定説に疑問の余地を残そうとする。
「『レヴィアタン』がそれを反証するんだ。『のではないだろうか』の段階だろう」
「ものごとには例外があるのです。教授の廻が他の堂のせんせいと仕組みが違うようにですね。『勝手に反応して目的性を発するスフィア』が先生以外に見当たらないことと似たように、そのレヴィアタンが特に珍しいものだったのです。なんか、特別なものを持ってたとか」
「ただの海賊では無いか」
「もともと平凡の海賊のフリをしたのがあやしいのです。そんなに平凡のならず者を統率して動かしたということが本当にその怪物がギルドの試練だったということを示すのです」
「酷い試練だったということは、俺も否定しない。でも、そういう特徴を持つ、一定以上の魔力を持つ魔法生物もいくらでも出れるなにかの条件があるかも知れないじゃないか。いや、必ずそういう条件があるはずだ。それが解明されてないかぎり、大魔術にはそういう心の準備していくのが得策だ」
「人の魂を持たないとそういう行動をしません」
「してるレヴィアタンがいた」
「そいつマジでうざいな」
急に驚くほどの暴言を吐く業務課のせんせいだが、ミカエル教授は別に気にしない。
「過去は残るのだ。マギアはだからこそ、目の前のエーテルを扱うものがどの手段を隠しているかを顧慮すべきなのだ」
「それもコストです。もちろん火の堂含めて人力の損害を警戒するせんせいのきもちはとても貴重だと私は思います。思うのですが、今まで例外がとても少ない、欺瞞の可能性がほぼ無い大単位の魔法生物を倒しに行くのに、平凡の賊のような対策も個人が持つべきなのは、流石に難しい条件です」
「俺の弟子ならできる筈だ。平凡の戦争の経験も多い」
「そう仰ると、まあ、それもそうで、みんな頑張るしかないけど……いや、その精神だけではできません。嘘を見抜くための魔道具と素材の物品も他に要るのです」
「それは確かだ」
学長は一本取られたと笑う。
平凡の技術者がマギアと違うように、平凡の生き物はエーテルに適性がある面妖なものとは性質が違うのだ。どうぶつのことを例えると、ステラ・ロサさんは以前 鹿と話をした記憶があるらしいが、ふつうの鹿と違って、それがエーテルの素質がある鹿。人との意思の会話までできるとしたら、もう結構 品が高いものだ。しかも何匹もいたというから、群れの長だと思った方が正しい。彼女はそれとどんな会話をしてたのかは、「星化」というのをする前のことだから鮮明に覚えてるわけではないが、確かになんかここフィレンツェまでの道を聞いたと言うから、その鹿はなぜか人の里のことを知るし、その情報を素直に教えたのだ。
こういう魔法生物はエーテルの素質と使いで自分の心と体にその動きが流れて回るので、その感覚が他のものもわかることができる。これは先おれが水の「水を清くする魔術」の授業にガブリエル教授の色に当たったことがあったとも似たようなもので、エーテルを見て扱うものは他人のエーテルのことも触れてわかることができるのだ。これは少しは属性も超える、マギアとアルマも超えるものがあって、ふだん「非凡科」はこの原理を利用してエーテルの調査をする。どのような魔術が関係してるのか、どの術師が関わったかなどを。そして、これは濃いほど、強いほど隠せることが非常に難しくなって、まあ、エーテル自体が生命力である魔法生物は別にそういう餌にも寝床にもならない「他を欺く行動」を取るために貴重なエーテルのリソースを使う必要がないということだ。
微妙に弱い場合、「それでも騙して得る利益」の方が大きいから。随分と非凡ハンターを騙したり平凡の人たちを弄ったりしながら人命の被害を出して地方の経済を阻む。でも、強大なものはもともとつよい為、このような面倒くさい方法を活かす必要がない……だいたいの仮説はこうだ。そして、別にギルド員として得るはずがなくて言えないが、ステラ・ロサさんが会っている「喋る草」を思うと、これは明らかに「品が高い方」だしな。
「ちなみにおれも今回『毒草』の魔法生物が火のマギアとの戦いで備えることだけを心得ているから、教授がマニュアルに書いてた『土を燃やす』ことくらいを思って『炎上歩き』の素材をいっぱい買うための物品リストを今出した状態なんですよ」
「おや、それは意外だな」
呑気に言ってるミカエル教授だった。
「今なら変えてもいいよん」
ドリンクをもう一回飲む業務課のせんせい。話の結論が出てないからそれができないんですが。
わたくしは桜の嵐の落書きも書いてエックスにあげたりしますが、その絵も名前も付いてないせんせいがこんなにずっと喋っているとは思ってなかったです。このような教授がギルドにはいっぱいだということです。しかも珍しいから全員エンブリオ少年を知ってる。怖すぎる。




