四属性くんが連れてきた薬師、ステラ・ロサさんについて
もちろん、おれは「そう言えば」と話題をむりやり切り替える、そして会話をむりやり続く作戦に好んでかかる性格なので、せんせいの話にも乗る事にした。
「はじめてはなんだっけ、新年に君が欠席をして、それがインフルエンザが酷くて家で休んだあと、次の次の授業あたりだっけ。ミカエルせんせいが『こいつ女のこと思ってますよ』とか言ってた」
「そんなに正確には覚えておりません……」
それで正解だ。おれがずっと授業に集中できず、「ムーの夢」のこととドルイドさんのことを思っていたあと、彼女が家に来たのだ。そして鍵に彼女の草木の魔力を登録した何日後、ギルド長に正式に挨拶をしに、ギルドの中央堂と食堂に来たのだ。彼女は白い頭をしているから、流石に目立つ。
「うーそ。君が記憶力で『四の堂』のカリキュラムをなんとかぜんぶ追っているのは知ってるヒトは知ってるよ。そしてギルドに完全記憶能力はそんなに稀ではないからね。
えーと、そして、彼女、そのあと相談役のせんせいの薬師になったと聞いたけど」
「はい、そうですね。『非凡の占星術』に興味があるらしくて、おれがギルド長に相談をしたら、アストラ・ネロさんがギルド員の家族の面談として会話をしてみたけど、話し相手として興味を示したと聞きます。彼女はちょうどフィレンツェの正式提携する薬房を探していたので、ついでに薬師としてお仕事ができるようになりました」
「ふうん、なるほどね。で、彼女のことが好きなの」
「そうですね」
「うわ……うん、そうだね。彼女がインフルエンザの看病をしてくれたのね」
「はい、年末で聖堂の庭で散策をしていたら、凄く体の調子が崩れることがありました。その時、彼女に助けられました。ステラ・ロサと言います」
「へえ、苗字あるんだ。家門の字か?」
「そこはおれも直接的に聞いてるわけではないですが、話す内容で思うと、貴族さんではないらしいです。薬草のことを学んで、もとは他の所に住んでたけど、フィレンツェを一応拠点として持ちたいと思って来てたらしいです。それは理由があって追放されたとかでもない限り、貴族の行動ではない。そして、その場合には苗字も使いません」
「そうだな。なるほど。まあ、確かに薬草の才能があって旅する貴族さんの娘は想像しがたい」
「一緒に住むことになってから、おれはなんかマギアとしていい経済力をもって彼女に頼りになる男になりたい気持ちは山々ですが。アストラ・ネロ様の件で もう魔術ギルド提携の仕事ができるようになったようで、凄く嬉しいです。ですが、恩返しのつもりか、いいところ見せたい気持ちがちょっと状況が変わりました」
「いいんじゃないの。もともとマギアは実力主義だから『いやぁここはおれがおれが男として、責任感を持つべき』とか言うにもちょっと周りに化け物が多すぎるから、別に君、そんなこと思ってないだろう」
「それもそうですが。『どうぜんと感じ』てはおりませんが、おれは騎士小説を読み過ぎていて、それでも立派な男になるのがいいことだと思うのです」
「うん、それはそれで、とてもいいことだと思うよ」
「で、彼女もいったん客観的には客であり家族みたいななんか同居人として、おれが急に大魔術や平凡の戦闘などで難しくなると困るし、ふつうに良い人なので心配したりします」
「なるほどね―まあ、人は自分の命という燃料を持ってできることをやってできるだけ続く、そういう長い炎のようなものだから、その終わりがどこの誰にいつ来るかは神様も知らないだろう難しいことだ。私もいつもしんぱいされるんだよな」
「そうですね。悔いはないことがいちばんだとおれも思います」
それは火の大魔術師、ミカエル・グエラがまたいつも言う言葉であり、火のエーテルに適性がある人なら同然な考え方でもあって、
そうだな、せんせいも恋人や家族がいるんだな、と改めた思った。




