キャリア
「大魔術の心の準備はできてる?」
業務課のせんせいはたぶんおれが参加員の最後だから、暇になってるように話をかけた。(中央堂の教授もそんな感じだったな)おれもその言葉に合わせる。
「そうですね。平凡の戦争ではなくて、水と土のエーテルの問題を解決することに付く戦闘の支援に行くのだから、相対的に怖くない方ではありますけれど」
「マギアは逆にそうなんだよな」
「本当にそうです。はい。でも、やはり戦いになると言うから、凄く緊張します。そして、マニュアルに学長が残した『平凡の戦闘の戦術』みたいなノリの文章を見たせいで、より緊張しているかもしれません」
「はは、彼にとって私たちを失いたくない気持ちは本物だ。だから平凡の戦争のような色んな……よくわからないことを残して準備させようとするのだと思うよ。ミカエルせんせいは、実は出来る限り自分で厳しいお仕事を済ませたいと思ってる人だから」
「そうですね」
「駄目だね、それは。一端、彼が可哀想すぎる。そして私たちのキャリアとしてもよくない。活躍しないと、待遇も保証されない。実は火のマギアは別に人を燃やしたくて耐えきれない放火魔みたいなものではなく、半数はものを温かくさせて人の冬を幸せにするようなお仕事で満足するような人だと思うけど、戦闘魔術師としての需要は仕方ない。そのリスクに報われるカネとコネが貰える。そんな社会なんだ。彼ももちろん長としてそれをいちばんよく知ってるから、このように最大限みんなを死なせたくないきもちで支援をするだけ、ギルド1の武力として残り、学長室に座っているしかないのよ」
「ふむ」
「これは今の四の堂の体制が備える前の、なんか海怪物の事変の時期に厳しかった一世代前のせんせいたちが規範を作っていて、それをギルド長が納得して従っているものでもある」
「へえ」
「私ももうその『非凡の海賊事件』は直接的には知らないからね。なんか、ギルドに滞在中の戦闘マギアが不足でより事件が大きくなったと言った。だからギルドには戦力の半分は残すこと、みたいな感じ。そして、この件は関わる人も多くて、戦闘の後の『沼地の浄化』が重要性が高いから……人手が多い方が参加し、残る方がせんせい……みたいな話があったらしい」
「そうだったんですか」
つまり、ただ戦いの勝利が大事で、国際関係も気にする必要がないところだったら、ミカエル・グエラさんが出て挑む化け物を焼き尽くして「はい、おしまい」みたいにしても全然いいということだ。「残りの半分」がおれたち火のマギアがギルドに残っているから。今回はそんな場合の反対だ。
「まあ、もちろん私たちのキャリア稼ぎの目的もあるし。彼が残るのはそんな感覚だよ」
「はい」
「……オタクくんは、火の堂の専門になるの?」
「なんですか、急に」
「今回の大魔術の志願をフラマにしたから。ミカエル教授も尊敬するし、ここに絞るかなと思った」
「そうですね。おれは四属性ですから。実はこの中途半端な特徴がいつも悩みだったんです。ギルド長の特例なのもこれの御陰で、その結果勉強もできてパンも食える。でも、いつかは専門を選ぶしかないのか。なら、フラマがいちばん近いと思って、炎矢もいちばん熱心にやります」
「今は違う?」
「まだおれは8歳の坊やですので。しばらくは中途半端でずっと行こうと思いました。その過程でおれがどのようにやっていくとしても四の堂のどっちの人も幸せではないかも知れないけど……最近そう決めたんです」
「ふうん」
「……」
「まあ、他のマギアを気にする必要はない。それは思い込みかも知れないよ。でも『ずっと四属性ぜんぶ』か……ラファエルギルド長は、それが良い事だと思うはずだけどね。もともときみは四属性だというのが特例の条件だったから」
「それも思いました」
「でも、本当に堂の専門マギアではないと、待遇はよくないと思うよ?堂のそれぞれの人たちの心のことではない。それは気にしなくてもいいと思う。ただ、絞ってないと支援があまりでないよ」
「それも思いました……」




