文字になること
「もちろんものごとには例外というものがありまして、属性とは合わない素で生まれで、『なんで儂は水ではなかったのか…』とマギアの経歴を終えたマギアもたくさんいたと思いますが、厳しいことに、合わないと才能にも能にも才覚にも結果にも絆にも繋がらなくて、魔術史に残ってないと思われる……も言えます」
「うわ、それはきつい話だ」
「はい、恐ろしい事です」
「残すと言ったら思い出した。『アクア』に行かないと行けないのに悪いな」
「いや、余裕です」
「そうか。なら話すけど。わたしは……クララとしてのわたしはね、実は長生き出来ないと聞いてたから、そしてドルイドのばあちゃんに物語、御伽噺と神話と伝説、童話と民譚を凄く聞いてたから思ったんだ。『嗚呼、わらわは文字にも残らないんだ』」
「文字にですか」
「極端的な話で、人は名前を残すとその手段とは別に名前が残るのは事実だ。言葉通りにね。何かのカタチの言葉に残るのだ。
王様は名前が残るだろう?貴族さんも、軍役の記録とギルドのシステマに残る平凡の軍人やマギアも、アルマの騎士さんも同じだ。極端的だと言ったのは、犯罪者も……きみが言った『海賊、黒魔術師、暗殺者』なども、場合によっては名前が残るのだ。『いや、あいつらは消すべきだ』より『成果を自慢した方が利得だ』になる場合だ」
「なるほど」
確かに物語として言うと、悪役も残るのだ。村人は残らないんだ。つまり…
「でも、隠れ里の病気の娘は名前を残らず消える」
「それは……凄く寂しい気分になる事ですね」
「うん。だから思ったんだ。もし歩けると、村を出る。必ずそうしようと。どうなっても、村にいることよりは出た方が何かの『そのまま消えるという状況』からは離れる方向だろう。逆に、『家にずっといる』はその方向に従うことだ」
「なるほど」
「まあ、馬鹿な話だ。森に出ると『森の姫様』はおろか妖精さんにも出会わずお終いだ。今のわたしは深紅の悪魔の知性を持つから言えるけど、『可能性はゼロではないけどゼロではないだけ』だ。
でも、わたしは非凡のものが見える人がよくそうであるように思い込みが酷くて」
「はい、それは普通そうですね。非凡の才があると」
「いったん考えてしまったことはやめない特徴の人なので、それから『もしわたしが歩ける体になったら歩けるよう』という目的性1つだけを弟とドルイドのばあちゃんにも秘密に、ずっと磨いていたということだ」
「そしてそれが『クララ式エーテル回収』ですと」
「先に言うな」
「すみません」
「うん。それが『クララ式エーテル操作』だ。『回収』も『操作』もそれ以外もどっちも同じだ。
まあ、知ってる通り『それで』動いてるわたしが今のステラ・ロサさんということで、『クララ式エーテル操作』は基本的にクララが自分の体と心を動く方法なので、それで徹底的にクララの体と心を動かすとその主体はクララだ。だからわたしはクララだと言うことだ」
「そうですね」
おれがフィレンツェのクララという平凡の少女に(おれより2つ上だが)一番ゾッとして普通ではないと思う部分は何気にここである。だからその人含めて、今の桜のドルイドのステラ・ロサさんに魅了されていることだけど。
「『名も残さないまま消える』は新しい名前だとしてもステラ・ロサさんがギルドのシステマに登録しちょるから、それも今、満足ではあるね」
「あ!そうだったんですね。だからここの鍵にも大人しく魔力登録をしたわけだ。クララとして理由があったんだ」
「いや、それは後で思ったらそうだっただけで、当時は何も考えてなくてきみという縁を逃したくなくて、すぐ登録した。心を決めたら、別に他の選択肢がないだろう」
「そうでしたか」
「文字になること」は桜の嵐で死を表現する表現の1つです。




