メタリカ
「ごちそうさまでした」
「美味しかったです」
食事を終えて、わたしはパンの味を舐めながら自分のことを思った。
この食事はブイオさまのエーテルの勢いで生きてる立場では別に意味がない。今自分のエーテルとして出したい技があるわけでもないから休んでいるうちにすぐ消化されてしまう。つまり、すこし食べ物の無駄だ。でも、少年は楽しそうで、ブイオさまも何か食事をすることは良い事だと言ってるし、どうやらアストラさんの話によると日頃の食べ物くらいは本当に気にしなくても良さそうだった。その、わたしも好きだよ。一旦このような雰囲気になると、クララちゃんとして正直川水を一日の食事のように飲んで終える時よりぜんぜん楽しい。美味しくて気持ちがいいのだ。これは、クララちゃんとしてはずっと鼻が詰まってたから、今の永遠の身体を持つステラ・ロサさんは食べ物の香りも味もよりわかってて美味しいのも原因かも知れない。
でも、「これは余分のものだ」という考えは心の底にずっと残って、こんな紛らわしい考えをしない人……との乖離は、消えないかも知れないんだね。(これは深紅の悪魔として別に知性体を欲しないことも同じことだ)
そんな気力と自分の性格の話を考えていたら、思い出した。先疑問に思ってたことの1つ、正確には思ってなかったけど浮かんだ……どうぜんすぎて忘れていた種族の物事を1つ少年に伝えることにした。
「そう言えばさ」
「はい」
パンの粒まで食べたあと、少年は少し寝る準備をしていた。
「非凡の属性はもう一つあるな。金だ。黄金と被るから『鉄』と言うべきかな」
「金で合ってます。騎士の闘技ですね」
「そう。『鉱石の道具を握って強く扱う』その属性がなかった。マギアを数えるものだとしても、わたしの花びらみたいにマギアとアルマが混在する場合もあるから、『新しい属性』を考慮する立場では、金属性も入れるべきかもしれない」
「ふん……そうですね。おれは騎士小説の様々な武芸に慣れ過ぎていて、『剣裁きで岩を割る』などがかっこいいと思ってるから、逆にどうぜんすぎるそれが魔術の属性のようなものだと本当に意味では思ってなかったかもしれないです。マギアとは別に関係ないとしても、同じくエーテルを見て触るから」
「うん。きっとそう。そして……その、金はマギアのようなこともあるんだよ」
「そうですか?」
わたしは使う事がないと思うけど、これは「理学」とかを考えなくても、一人の非凡としてわたしはもう伝達されてる知識だ。この物語の読者さんももう知ってる方法だ。
「深紅の悪魔だ。覚えてるか?あいつらは人の脳みそを持って帰るのだが、そこに使うのがエーテルで作り出した金属の瓶なんだよ」
「そう言えばそんな話聞いたかもしれません」
「それを作り出すこと自体が、エーテルを具体化して平凡のものの様に少し扱う方面のマギアのようなものだ。自分の境界を拡張する能力を持っている、エーテルで作られた金の瓶に脳みそが入ってると、永遠に『悪魔』の心の雑談の相手をしなきゃいけないし、体はいいなりに操作されるのだ」
「うわ最悪」
「うん。クララちゃん的にはわたしもちょっとそれはないな~と思うんだ。そして、非凡としてのわたし的には、そういうのと無縁で、起動してから知性体の捕食などよりはお喋りでぜんぜん生きてた『颯』の適性がある個体だから。別にわたしは二重の意味でその『瓶』とは関係がない」
「なんか、話自体は知ってたけど、それが非凡のものを作り出して扱う、マギアとして慣れている方法が行われる手段だったということを聞くと、よりリアルで気持ちが悪いです……」
「そうか。悪かった。とりあえず、それがわたしが知ってる金のマギアの方のエーテル。今の世界ではエーテルが足りなくてできないよ」
「はい、なんかおれを食べようとした深紅の悪魔もそんなことを言いました。金属の箱が作り出せないから、いったん栄養にするとか言ったのです。それが瓶だったのかもです」
「そうだな。容器であればなんでも構わないのだよ。そして、深紅の悪魔は『心の言葉』自体がなにかの目に見えないエーテルなので、それを頑張って利用する感じだから、わたしたちに慣れてる平凡の金属ではないよ。ブイオさまの隕鉄の体に近いね」
「それもそれで特殊ですね」
「つまり、別に金属の存在が金属のマギアのような方法を使ってるわけではないんだ。深紅の悪魔はもともとそんな仕組みなんだ。『なんでエーテルが豊富ではないところでは使えない、そんな方法を?』と言われても、仕方がないんだ。そんな個体がより残ったから」
だから、もとの世界が滅んだあと、賢者の国に来て、「元々は上手く行った方法」が使えなくなって、色々あってたぶん「ムーの最悪」事件で滅種した。
「まあ、世界のものごとがだいたいそんなものかもしれません」
「うん、わたしはそう思ってる。だから頑張って生き残るつもりだ」
「そうですね」
平凡のものが血肉を主に身で、心の言葉がそのまんま心です。命が体からさよならバイバイを告げると霊が分離され、それでも個体の名前は残る。そんな感覚が作中の、ステラ・ロサさんが主人公として続く世界観の「身・心・霊」です。まあ、ライトノベルですね。




