報酬
粉薬を作ろうと、「香りの呪術」を繰り広げようと、わたしが「木属性の非凡の使い」として何かの凄さを伝えることはできるとして、それが魔術ギルトに関わる人として正しくていいものだと評価されることは難しいかも知れなかった。マギアから「そうですか。ステラ・ロサさんはすごいですね。やはり今回の『毒草』の件で共に行ってください」と招待されたり、ぜったいない。そう上手く回らないのだ。
なにせ、「木」は非凡のお仕事の認められている属性ではないからだ。ギルドが非凡のお仕事を独占してるから。わたしは「見る」才はあるけど、非凡の物事に関わらない「平凡の薬師」のステラ・ロサさん。こういうのは偉さや凄さの問題なので、わたしは非凡のお仕事ができないと問題なくて、出来た方が問題になる。これは「四属性」に決めているものなので、もしギルドのシステマにわたしのエーテルが「いや、ぜんぜん属性も握って術が使えるくらいの……木の色です」などの評価になっているとしても、(そういうシステマなのかわたしは分からないが)ただ「見えるだけの薬師」なんだ。
木属性の……元素魔術はないから。
「小細工は効かないと感じるのです」
「はあ?『小細工』とはなんだよ……語感がよくないな」
わたしももちろん知ってたけど、今回の「大魔術」に参加するために、わたしが平凡の薬師としてできることは限られていて。非凡として今できることはこれっぽちもないことを改めて感じた。少年の家族でアストラさんの知り合いとしてやっとギルドに出入りできるとしても、平然と「よろしくお願いします!」とギルドの人たちにアピールすることはできない。うん……できること、なんかないのかよ。
「すみません。粉薬の方はおれはそんなに専門ではないし、薬を使ったこともあまりないからわからないけど、『香水の呪術』の方です。それはけっこう凄い感じの術なんです」
「そうなの?」
少年は小細工とか言ったのに逆に「香水魔術」の方を褒めた。これは褒めに正しいのだろうか?
「凄い感じなんですよ。おれは熟睡できたんですよ。ですが、おれみたいに木のエーテルを認めて受け入れるから楽しめるものです。そうではない限り、非凡の香りがすると言うその効果があやしくて、満足ができないものになる。だから受け入れることができない人には小細工」
「うう、そうなのか……それは、まあ、あやしいか。
言ってるけど、その術は実際『ドルイドの呪術』だからな。もともとお肉の香りをよくする方法だから。効果が一時的なのは仕方ないし、マギアの立場ではよくわからない」
「お肉の香りをよくする方法」
エンブリオ少年はもうネタ晴らしをされてるけど、それがなぜか面白いらしいのでもう一回つぶやいて微笑んだ。
「そう。もとは薬草の粉を使って狩りの獲物に付着させ、粉の木のエーテルを発せてお肉の匂いを適切に治める効果を持つのがその方法だ。その粉の効能と肉……鹿肉の相性が合うと香りがずっと残る。これが、売るために処置する方法の要点なんだけど、わたしの『香水の秘術』はまだ試しているところだったので、一時的なものになっている。ピサに行った時に、『新しい術を作った方が早い』などブイオさまの話を聞いたあと、作ってみた新技なんだ。でも、本当に新しい術ってどうすれば作れるのかわからないし、知ってる『古代魔術』を使って何を組めばいいのかわからないから一端知ってるものから派生しているものだ。結果的に本当にドルイドの呪術は『古代魔術・木』と同じ系統なのも確実になった」
「そうでしたね。それ、正しいんです。自分が知ってる方法から目的性を決めて大げさにすることが新しい魔術を作る過程だと聞いたことがある。その『香りの呪術』もそうなんですね」
「そうなんだ。わたしの木のエーテルで借り物の香りを作る。これはエーテルで具現したもので、別に実際にその材料を使っているわけでもないし、術の効果を尽きると香りもなくなるんだ」
「たしかに効果が続いてないのは考え方によっては弱点みたいだ」
だからエーテルの方法は切れると崩れるものなのだ。わたしの場合、マントと同じく、草の匂いに戻るだろう。




