マニア
「はい、そうですね。土の魔術について興味深い話も多かったし、わりとウリエル教授がふざけたことも好きな人だったのを知らなかったので……」
ブイオさまはなんか得意げな声で言った。
「ほら」
「ほんとうだ」
「なんですか?」
「いやごめん、こっちの話だ。すぐ話す」
「?はい。『やはりマギアはおかしい人で、その頂点に立つのはよりおかしい人なのか』などを思いましたね。そして、結局その『奇怪巨木』の処は無数の気持ち悪い沼がありまして。毒の雰囲気を纏っている魔法生物がいっぱいらしいです。それを倒す事だけではなくて、土地の浄化みたいなこともやらなきゃだめらしいです。これはもうギルドでは人力を集めてるので、いちおうの公開プロジェクトになってます」
「そうなんだ。ちなみに、今わたしたちが言ったのは、ウリエルせんせいが内気の性格で、ブイオさまの影の特徴と近いのではないか、という話が今日の探索中にあってね。それが本当だった、すこし面白かったということだ」
「そうですか。「土の堂」はガブリエル教授とも違う方向で化け物で、ふだん冷静にお仕事↔講義を無限にしている人なんです。だから10才なのに相当の仕事人間だと思ったんですが、わりとダンテの『神曲』が好きだったらしいです。おれはそんなに知ってないけど、興味はある」
「ダンテ…ダンテダンテ……そうだ。それが、ここのこの日常語を作った人だっけ」
「はい、ダンテ・アリギエーリ。どうやらウリエル教授の家系は全体的に彼以上にダンテのオタクが多いらしいけど、おれから見て彼もそうとうのマニアでした」
「マニアとはなんだ?」
「ギリシャ語で狂った人という意味です。プラトン哲学で言ってると聞きますが詳細は詳しくありません」
「そうとうの失礼なことを言うな」
「まあ、オタクみたいな意味です」
「そか」
「で、間接的に地獄という概念をどう思うか、エーテルを使い切るとどこに行くのかなどを聞きましたが、おれは今まで自分が『四属性』の才能があると言われても、それがぜんぶ半端物だと思ったけど……」
「人並みにできてるじゃないか」
「人並みでは足りないんです」
「そうか……」
天才も大変なのだ。
「わりとおれは土の才もあるんじゃないかと少し思いました。最近『水』で詰んだことを突破できた経験のおかげなんでしょうか?とりあえず楽しかったです」
わたしはそんな彼を見て微笑む。
「それはよかった。ガブリエル教授の言葉だっけ」
「はい、どうやらその二人は幼馴染なので、ガブリエル教授はウリエル教授のことをめっちゃ馬鹿扱いしてるけど、ちゃんと仲が良くて学んだりもしたらしいです。おれに教えた『頭の中で結果までやってから繰り広げる』などの方法は、たぶん彼から来ていると感じました」
「そうなんだ。その二人は今回の『非凡の毒』の件にも関わってるな」
「はい。また沼の話に戻ると、土地と泥水の話になるため、ガブリエル教授と二人と他のマギア。そして平凡の技術者も連れて行くと聞きました」
「平凡の技術者を?」
「沼を埋めるとか、水を清くするなども、そのあとの影響まで考えてやってないと続けないのです。魔法生物を倒して埋めるだけでは、また雨が降って元通りになるかも知れないし、よりひどくなるかもしれない。だから橋や港の構造に詳しい平凡の人が必要になるのです。マギアは、まあ、続かないんですね」
「マギアは奇跡のような色々ができるけど、そのエーテルがないと崩れるのね」
「そうです」
「『水と土の他のマギアたち』には、きみも入るのか?」
「正確には代表が水の堂と土の堂で、火も風も必要です。大魔術には普通そうです。そうですね……先も言った通り、調査隊を送った時と違って、もう公開されたお仕事なんです。参加は自由です。たぶん調査隊の話が正しいと、危険なことは対処できる余裕ある大人数で行って事件を解決する予定らしい。こういうカタチのお仕事には大魔術に参加して魔力をプラスすることで役立つので、個人の仕事と違っておれも参加できますね。悩み所です。ドルイドさんはどう思いますか?」
「うん……色んな経験をするのは良い事だと思うね。わたしは大丈夫だから、きみが決めた方がいい」
「おれが思うには、ここは参加するのが長期的にギルドの顔として利得です」
「なら行ってくるのだ」
「でもドルイドさんと離れるのが嫌でしょうがないんです」
「そかそか」




