毒液
もう話題になってから少し時間が経っている「奇怪巨木」の事件は、少年の話によると平凡の社会に、けっこう大きい影響を与えていたらしい。
「ウリエルせんせいの話によると、確実に言える場合も何回、その非凡の毒草を使った毒液を使った暗殺事件が本当に起きていたらしくて……」
「それは大変だ。手段があると使うのは人だ。ガブリエラちゃんのしんぱいが本当だったな」
「はい、まだ流通の過程も把握できていないらしいですが。事件はもう起きてしまった。その、バレたところは今教皇庁の非凡科が関連者を調べて、正しさを判断しているらしいです。もちろん今明かされた事件だけではないですね」
「まあな。死者には口がないからな。『はいはいはい!僕はあれこれして死んだんですが……それが、今の話題のどくと言うものと症状が同じだったんです』などを教えてくれないのだ」
わたしはけっこう特殊な場合の人で、自分が「風邪で死んだ」ことも「ムーの最悪の事件で死んだ」こともなんか他人に教えることができるけど……ふつう、死者は戻らないのだ。続かないのだ。命が体からさよならバイバイだを告げると、そこでお終いなのだ。
「そうです。知られた・調べられた事件が全部の筈でもないですね。ぜんぜん他の理由でいなくなったと言う人の中で、何人も「利得と都合によって」その毒液に消されたかもしれないのです。その人たちがただ具合が悪くなって難しくなったと言ったも、行方不明になって、賊や狼に襲われたと言ってもそれまでなんです。知る方法がない。だから、その毒は今 謎のままなんです」
「そう……あ、そう言えば、あれは大丈夫なのか?『毒が混ざったワインのせいで、魔術ギルドのお仕事に影響を及ぶ』などの。それがガブリエラちゃんの主の悩みだと言った気がする」
「はい、そっちは大丈夫です。まだ水の堂のガブリエル・ブリナ教授が心配してた『偉い人がワインを怖がること』も、『ワインの安全の調査の為に優れた水のマギアを要求すること』も起きてません。少なくとも、問題にはなっていません。彼女の少しの思い込みだったかも知れないし、ただ今は慣性が働いているだけかも。でも、実際にその毒ワインで人が死んでるのですね」
「難しい問題だ!」
わたしはその「毒草の張本人」……の一部に出会ったから、これがどういう状態なのかを少し感じた。どの理由か、「奇怪巨木」というものは森の妖精さん「だった」もので、今具合が悪い。そして、自分の植物の種類を増やしたいと思うようになった。(そういうのはもともと「自然に」増えるのを待つのではないのか?そこから少し変だったよね、実は)
そのために何らかの術を使って妖精を増やしてた。そして、妖精たちはさまざまな地方に赴いて特徴が違う草木を増やす。その一部の種類は……もちろん人に効く毒を持っている。奇怪巨木の彼女は(「彼」かも知れないが、もともと非凡の者には性別がそんなには大きい意味を持たない)別に自分の葉っぱと根を一つ一つ大事にする感じではないので、一部を失う事はどうでもいい。いっぱい失ってもどうでもいい。
だから、そんな毒草の扱いができる非凡の使い手がその草をいっぱい取って、「やった!我らはお金持ちだ~~!!!」と、毒液に調合して売ったわけだ。
「はい、とても難しい問題です。極端的に、流された毒液はもう遅い。その『調合』と『商売』をした人の尻尾を見つけて捕まえることができるとしても、全部の取引を追跡する事は難しいのです」
「ううんん」
「でも。今回『奇怪巨木』の位置がわかったんですね」
「あ!毒のチカラの源と言うことか」
「そうです」
「非凡の毒だからな」
「そうですね」
つまり、平凡と非凡の話だった。
平凡の毒……なんか石を溶かしたり、平凡の毒草を粉にしたり、汚いものを集めたり、ものを焼いた灰を選別して残したりしたものは、普通に人の命に危ないものだ。そういうものが『どうぐ』として流されると、もう使う人のものになっているから仕方がないんだ。でも、ふつうだから。非凡の方法を使って容易く判別する方法がある。そういう魔術が、今までの1000年の4属性のマギアの歴史で作られているしい。
逆にだ。逆に非凡の毒、今の事件のものはその「既存の、平凡の毒を判別して処理する方法」がよく効かない。難しくて厄介だ。それはその「不思議な草」が毒液に姿を変えたとしても、エーテルの源たる「奇怪巨木」が……多分、ずっとチカラとして働いているからだ。でも、このエーテルが切れると、流通されてる毒も止まると言うことだ。効果を失うとか、薄くなる。
「まあ、マギアとして思っている構造がこうだということで、意図した通り毒が無効になると期待するには、それがなんの根拠もない推測だけどね」
「はい、そういうのがウリエルせんせいの悩みだったんです」




