やりたいことをやっちゃうということ
「…………」
わたしは不思議な草が汁を零しながら移動するのを少し見送って、自分の捜索を再開する。
「なにものだ?あれ」
そして、マントから黒い狼が出て、わたしの傍を歩いた。
「そうですね。多分本当に妖精さんだけど、わたしたちみたいに空から来ている不思議なものが関わっている。というか、あれが多分今魔術ギルドで話題になっている『毒草』ですね。この辺まで来たのです」
「確かにそうだ」
今は、別にわたしの神秘的なチカラと相性で会話ができたわけではなかった。普通に話をした。でも、その会話が成立できたのは、わたしが木のエーテルの適性があるものだから。プラス、自分の体の性質で、えぐいものを見ても少し平然に居れるという特徴からだった。あの草はけっこう奇怪な姿をしていたのだ。
「なにかの印の影響なんでしょうか?様子を見ると、別に自分の今の状態を『奇怪なもの』として認識していないようだったんですが、あの『森の妖精として見てどうぜん』と言った態度は自分のことが他の人や非凡の生き物から見て森の妖精に見えてると思ってるという感覚でした。でも、別に手足も可愛らしい顔も無くて、草の先端に口が生えて汁を垂らしたんです」
「あんなものの本体を、その自分もわからないまま変えちゃうチカラ……」
影影の狼はなんか意味深な感じに呟く。
「ブイオさまはなんか思い浮かべるものがあるのですか?」
「思い出したくない」
「なら別にいいです」
つまり、ぶにゅぶにゅの神様の影響なんだな。それも凄く強大な。
「そうだ。ぶにゅぶにゅの神様なんだ。品が高い種類には、対象の生き方まで変えちゃう存在までいるんだ。というか、だいたい品は高いので、それくらいが普通だ」
「生き方を?」
「おまえのことが模範的な例だよ。非凡としてのおまえの他の同族『深紅の悪魔』は人の脳みそを支配する過程で勢いを得る種族。おまえは木のエーテルとこの世界のことを調べた個人。そしてそれをぜんぶ粉々にして『灰色の呪い』という、非凡の疫病そのものに、その性質を変えたのではないか。『生者と死者に感染して増える』は以前とはぜんぜん関係がない生き方ではないか。死に方ではないか」
「うっ、頭が」
「そう。品が高すぎる存在はそうなんだ。仕方がない」
「なるほど」
わたしはフィレンツェのクララとしての常識を傷付く言葉はあまり頭に入れたくないけど、でもこのような話をしていると、確かに今の社会の教会のように、「深紅の悪魔」にも崇め奉るぶにゅぶにゅの神様がいた気がするわ。それも何人もいた。(何柱だと言うべきかもしれないけど、現代人として敢えて下げた)
そのような「上のもの」は日頃に信仰の代価として恩恵をくれるのかはわからないけど、たしかにそういうのがいた気がする。そしてその意味は、そうだな……
その神様はブイオさまではない。
ブイオさまは目を瞑って苦笑いをした。狼の顔で相当器用である。
「そうだ。なんでわたくしが最初に『深紅の悪魔にチカラをくれる神様のような存在』という設定を聞いた時に、驚いて横転をしたか、やっと言えるかもしれないな。クララちゃんの常識を侵さない範囲で簡単にまとめると、『もういる』んだよ。信じてる神様が」
「へええええええなるほど。それは大変なことだ」
「そうだろう」
「全員ぼこぼこにしてわたししか深紅の悪魔が残らないと解決ですが、それ以外の案がわかりません」
「もう……わたくしは『気の通路』で、おまえの心の言葉がだいたいわかるからそれを知ってたけど、改めて直接聞くと非常にあれだな。物騒だ」
「仕方ないのです。わたしは人。そしてこの社会で欠片を集めながら生きる。『深紅の悪魔』は競争関係にあって、人としては化け物です。排除するしかない。そして生き返る過程で、その『灰色の呪い』としてのわたしは排除されている。
こんな『座標の衛星』を遂行した最後、その結果、『わたしの半分』しか『深紅の悪魔だと言えるもの』がないなったら決着。ブイオさまのことを『確かにチカラを与える神様みたいなものである』と心から思うと、それは嘘ではないので『型物理性のデメリット』は働きません。はい、証明完了QED」
「そう。それ自体は慣れてる」
意外と適応能力が優れてる星の亡霊さまだった。
「そして、その条件が別に『ブイオさまが唯一の神様である』ではないのです。たぶん」
「確かに。そうだったかも。『あなただけが深紅の悪魔の神様だ』ではなかった」
「結果的に安全装置になりました。
だから、この後もしわたしが他のぶにゅぶにゅの神様を認めないことがあって問題を起こすなどの場合があったら、それも困るんじゃないですか。この方向性はその問題も回避ができるのです。『ただ色々あって、■■■■■のことも偉く思っているだけ。別に深紅の悪魔として信仰を失ったわけではないのです』になると思うのです」
「そういうのが上手く行くのか……?」
「でも、嘘ではないのです。そして、人の現代社会には、別に教会に行くだけで、そんなに信仰心が深くない人だっていっぱい居ますもの」
「それは確かにそうかもな」




