髪を染めるエーテル
ブイオさまの「神話生物理学」というものは実はわたしも興味がないわけではないが(チート知識の筈だ)でも、どうやらクララちゃんとしては理解も難しくて知っても仕方がない知識だ。逆に、知るとより大変になる知識なのだ。それもブイオさまは何故か自分が欲しがって学ぶのは大丈夫だみたいな話をしているけど。(彼が「教えない」「興味持って」の両方を同時に言ってるように感じるとそれは正しい感覚だ。彼は実際に教えてないのと同時、神話生物理学が理解されて欲しい)自分がコントロールできるエーテルはクララという人間が人として認識する器の範囲を超えるのは難しいと思えて、どんなに珍しい原理を学んだって、すぐに自分の杖でも魔力変形ができるわけでもないし。
しかも、平凡の社会にはそんな知識は別世界の、ぶにゅぶにゅのものだ。火刑をなんとか運良く避けるとしても、善意を持って聞こうとする人がいるとして、聞いてもわからない話だ。その理学が使える時は来るのだろうか?その時期も人は恋愛の話しかしないのか……などを考えても仕方がないので、ちょっと感情を発散してすっきりしてた わたしは自分の光るヘアの話でも続くことにした。
「確かにフィレンツェには『兵士の国の常識』に比べると、エーテルに適性がある人の子が非常に多い。でも、彼らは別に自分の余るエーテルが髪から蒸発してないから夜で光らないと思うのだ」
「そうなんですか」
わたしが考えるに、髪が珍しい色になることと夜で光る事は別に変りが無いようだったのだ。
「それこそ、月と日みたいな説明をしたいけど……とにかく、人の子の珍しい髪の色は別にエーテルがずっと出ているからではない。エーテルの影響でその人の子の毛の色が適性とよく合う方向性に変化したのだ」
「なにが違うんですか?エーテルが出てる。エーテルの影響で変わってる」
「だから月と日みたいなことだが……そうだな。焚き火と、焚き火を見る人みたいなものだ」
「焚き火ですか」
何故か熱の例えをよく出す気がするブイオさまだ。
「なぜもなにも、それが即ち勢いだからだ。同じものなんだ。
わたくしからのエーテルの勢いが、焚き火の暖かさみたいに出てるのがおまえの髪。そして自分のエーテルが焚き火の光が顔を照らす様に、他の見えない顔と違って見える顔にするのと似ているのが珍しい髪なんだ」
「本当にわかりづらい例えです」
「そう……」
だから、なにが違うのかな。結局エーテルは日差しみたいなものだ、焚き火みたいなものだということを言いたいのはなんとなくわかった。でも、どっちも熱くて光るのは同じだ。ふん……ちょっと違うか。
後者は熱さを当たれてる方だ。
「……照らされてる顔は、顔が光ってるわけではないんですね」
「そう、そんな感覚が大事なんだが」
他の人の髪……ラファエラさんの青色?緑色?その髪を例えにすると、そうだな。彼女はわたしは比べものにならないくらい非常に高いエーテルの魔力を持って、そのチカラが今の魔術ギルドの全員の5%に至って、風属性の適性が高すぎて「轟」という異名まで付くくらいだ。風が吹く「その音を集めて」飛ばすと、鎧の騎士も飛ばせることができると。
そんな彼女の髪は別に夜に光らない。でも、色が染みっているのだ。それは、ブイオさまの今の話によると、彼女が自分のエーテルを扱う過程でそうなったもの。扱うエーテルの属性に体の一部である髪の性質が変わったとも言える。「風を良く扱うから、風の術を使う時に見えるエーテルの色になった」それが彼女の髪色に理由。
でも、わたしはブイオさまのエーテルの勢いを一方的に貰っていて、その星のエーテルに関してそんなによく知ってるのでもなくて、自分の魔力、気力だとも思っていない。だから、その乖離感分の余りが常に発生して、廻に広がる平凡の光になって去るのだ。
このように、エーテルの力量は他の人たちも随分と持ってる。わたしのエーテルの勢いが余ってると言っても、別に「他の凡人たちに比べてわたしの無尽蔵のエーテルが沸いている」のではなくて、ただわたしの器が小さくて染み出てるだけだ。ちょっとわかる気がするかもしれない……
「わたしは『エーテルを受け入ればいいことを、余計に発している』という話にもなるんですか」
ブイオさまはわたしがやっと珍しい髪色の理解して、ちょっと嬉しそうに言った。
「はっ!正しいけど、もうそれもおまえの体の性質だと思う様になった。わたくしはそれはエーテルの浪費だと思ったけど、実は今も思ってるけれど、それがおまえの色味で、この旅の必要経費だと考えることにした」
「まあ、食費みたいなものだと思ってください」
「ふだんの食事ももっとしようとすればいいのに」
「あ……食べるのがそんなにはめっちゃ好きなわけではないんですね。わたしの素ですね」
「まったく」
そんな話をしていたら、昨日までの「縄張り」に来てたので、わたしはそれからは自分の足で歩かないと意味がないと感じるので、狼から降りた。




