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自分の肉体を支配する事

そして、さすがにずっと喋るのもなんだし、走りを終えて、素振りをすることになった。


「やはり走るのは気持ちがいいのです」


「うん、それがステラ・ロサさんの平凡の人ぽさを維持してくれるのだ」


「そうですね。名前は(うつわ)で、器はふつうに恒常性(こうじょうせい)(たも)っていないと維持が難しい。これはなるべく毎日した方がいい(カルマ)だ」


実はわたしがもし平凡の体を持つ人間だったら、少女だったら、毎日はよくないと聞く。

筋肉痛と関節の負担と自分の体重による足の疲れ、手足を曲げる時に使う部分を使いすぎて問題があると思うのだが。しかも、体が変になって、逆に筋肉が減ってしまうと聞いてるのだが……わたしはその方面では結構平凡を超越した、人間をやめたものであった。


「何かを『毎日しなきゃ……』するのは、心にもよくないんだ。実はな。

焔流累颯(えんるるいさつ)の理で、(ほむら)の灯火を弱くして、(ながれ)の洗練をどんどん怠惰に導く。積もるものが正しいか(かさね)の疑問が生じ、別に面白さがないのだ。つまり、(はやて)と呼ぶには地味になる。

でも、おまえの場合は本当に『毎日』が必要だ。どんなに社会に入っても、自分がステラ・ロサであると『深紅の悪魔の亡霊』まで心に刻んでいるとしても、占星術師のせんせいの弟子として認められても、エンブリオ少年とデキてるとしても、不安だから。このようなノルマを(おこた)るといけない」


「わかってます。そして少年はまだ8才児なのでそんな話はまだ早いと思いますよ」


「おまえは10才だしな」


「そ」


この話がもし本になったら、その社会の読者はどんな構造で生きているのだろうか。わたしはわからないが、8才や10才はその国でも確かに幼い年なんだろう。うん、それは確かにそうだ。

そしてそんな考え、「走るのは気持ちがいい」「わたしたちはまだ早い」「森の姫様」「ピサに行ってお魚料理を食うか」などを思っていると、やはりわたしは生きているフィレンツェのクララでもあるかも知れないと、いや、強いてクララであると感じる。これは、わたしがよくわからない体であっても、自分が平凡の人の様に動いて(すこし高性能(こうせいのう)である気がするが、まあ)社会に適応して生きようとすることが自分を人にするのだから。


「いや、でも杖道(じょうどう)は本当に上手くなってるな。よっこらしょ」


ブイオさまは全然動いてないくせになんか大袈裟に、マントから前足から土を踏み、2m(尻尾を含めると2.5m)の巨体を(あらわ)した。


「なにが『よっこらしょ』ですか」


「ずっとマントにいると体が固まるんだ。これはわたくしは、■■■■■は元はぜんぜん良いけど、この土地(ほし)に来て『狼の星』になって、気の通路が繋がってるおまえがけっこう肉体派(にくたいは)だから……その影響だと思う」


「まあ、そうなりますかね。たしかに狩人(かりうど)の娘は少年みたいな都会のものが思うにはけっこうアルマ寄りかも知れないな、と、今考えてる最中ですし」


「もともと『深紅の悪魔』をボコボコにするじゃないか。なんか十字架を当てて光で塵に返すとかマギアで焼ききのこにするとか。フィレンツェの生活の活路が見えて選択肢が広まった今も、ぜんぜん思ってないじゃないか」


十字架のくだりは凄く適当に言って、不敬かもしれないブイオさまであった。(彼はわたしが「深紅の悪魔」の神様にするので、そんなわたしが教会に不敬だなんだ思うのも結構おかしな話ではある)で、実際教皇庁の非凡使いの人はどうなるの?なんかお話に出る悪魔とか、どう相手するの?


「そうです。どうすれば当たれなくて効果的に頭を叩けるかがわたしの課題なんです。やーー!!」


「エーテルの節約精神に充実で、とても喜ばしいと思うぞ」


そんな感じで、今日も適切な筋トレを終えたのであった。


「今日も一段階強くなった」


「お疲れ様」


「はいです」


わたしはマントを拾って、適切に土を落として身を(まと)う。いい感じに重いのだ。


「なら今日も探索範囲を少し広めるか」


「はいです」


そして、道を迷うと困るので、昨日行った方面で続く。もう歩いた処はブイオさまに乗って便利に通る事にした。


「うん、なるほど。春はわたくしの『勢い』の負担が少し減る感覚もある。活発になる」


「ほぼ同じじゃないですか?」


「ほぼ同じではあるけど。でも、おまえが言ったろう。春の森でテンションが上がると。つまり、お日様の日差しが草木にチカラを与える分、少しでもおまえはわたくしの資源がなくても元気に動ける感じなのだ」


資源がなくても生きれる……?


「なんですか、急に死亡フラグみたいなことを」


「原理を言っただけだ。わたくしは特別製で、もうとっくに壊れているのでこれから死亡もなにも。お偉いナニカに誓って、わたくしは並みの(グラドゥス)には故障しないと保証しよ」


「まあ、それは安心ですが」


わたしが思うにもブイオさまは「狼の星」であり、わたしを構成する半分が一時生きた「故郷」だ。偉いのだ。その故郷も今は完全になくなったらしいけど、その「座標(サイファー)」をわたしたちが持ってる。だから今はそんなことより、「探索」のことを思う事にした。

確かにブイオさまに乗って「初めての土地も、しかも道標(みちしるべ)もなしに爆速で走る」ことはできないけれど、このように知ってる道はわかるな。早く行けるな。このように本当にあらゆる山森を全部覚えるのも……少しありか。


「非凡の時間は長い。できないことではないだろう。

でも、そこまで覚えるよりは、もっとドルイドの呪術のこととか神話生物理学(エキストラ・オーディナリー・フィジックス)の学びとかにその記憶(メモリー)を使ってほしい」


なにげに知識欲みたいなものを見せるブイオさまだった。これもけっこう活発になったからかな?

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