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アリストテレスの方のエーテル

「夜行性?確かにそうか」


「そう。彼女は一生夜空を見た。星を見過ぎていて、昼夜逆転(ちゅうやぎゃくてん)になっているのだ。しかも、マギアとしては『4の堂』の大魔術師のせんせいたちのように無敵化け物人間までではないから、普通に昼は眠い。あ、もちろん年寄りだからでもある。ステラ・ロサさん、彼女の薬の調達を手伝う事になったよ」


エンブリオ少年は結構驚いた様子だった。


「本当ですか!これはまた話が早いですね」


「そうだな。しかも『黄金の非凡(エキストラ・オーディナリー)が来ると、わたしは身を隠すよ』云々の、自分の思い込みの走りとは違って、これはわたしたちの現実なのだ」


「ちょっとは残念だけどとても良い事です」


「なにが残念だ」


「このままドルイドさんが薬師『希望』のままずっとフィレンツェの部外者としている間、おれの方が頑張って偉くなって、経済的にドルイドさんを完全に拘束しようとしたおれの計画がバラバラです」


「なんだとてめえ」


そんな恐ろしい計画を組んでいたのか。本当に気持ち悪いほどわたしの事が好きらしい。


「半分冗談です。ドルイドさんの知識がもう薬屋で働けるものになってるのも知っていて、おれがギルドのお仕事に貢献する事には制限がある。『4属性の元素魔術を同時に』進むおれのカリキュラムとか、色々難関があるのです……予想すると、早くても2年くらいはかかりますかね」


「そうか。冗談は半分なんだ」


「とりあえず、薬房で働くことができるのは実にめでたいことです。でも、ドルイドさんは『深紅の悪魔』を狩らなきゃいけないのに、大丈夫ですか?」


「薬草を取りに動くのは普通だから、わたしの薬師としての専門をそこにするといい」


記録の整理と野外採集、診断と調合、看病、伝達、その他。薬屋の仕事は一人でぜんぶやるものではないのだ。適切な草を粉にして飲むと体が少し痛くなくなるこのお仕事も、分業しなきゃならないのがいっぱい。それが人の社会だ。


「そうですか」


「まあ、希望条件だけどな。まだその薬房の人ともあってなくて、今貰っているのはネロ様の薬のリストくらいだ」


わたしは貰った紙を少年に見せた。ふつうに自分が持ち物として手にする初めての紙であった。


「なるほど」


「うん。そしてその『薬屋』の仕事と共に聞いたのもある」


「へえ」


「彼女はわたしが普通の人間ではないと思うと言った」


「なに⁉」


少年は「大変じゃないですか!はやく逃げないと」とか言おうとする様子ではない。(少しはそう焦るのではないか思ったけど)彼が思うにもギルド長とアストラさんは変人の友だちがけっこう居て、その部類に入ること自体はそんなに危険ではないのを知っているのだ。

もともと、ギルドに何回もエーテルを任しているから、リスクは(ともな)うものなんだ。


「でも、わたしはそのせんせいの態度がハッタリだったと思うがね」


「なんでですか」


「始めてから言うと、こうだ……」


そしてわたしは少年に、白神女の目撃情報がこの地方で切れていること、わたしの白髪のこと、エンブリオ少年と親しい関係だから、ずっとフィレンツェを離れずに泊まるであることを言った。だから、わたしとアストラさんが親しい関係に見えると、いつの間にかわたしは「次の白神女」みたいな噂になる、それがアストラ・ネロの計画。そしてこの為に必須だと言っても過言ではない条件、「わたしが不老であること」を見抜かれたことを話した。


「そうですか。ここのどこからアストラ・ネロさまのお言葉が『別に本当に永遠の体を見抜いたわけではない』根拠が読めれるのですか?ばればれじゃないですか」


「彼女がそういう属性だからだ」


「属性?水のマギアだったことですか」


「まあ、そうかもね。きみの話から感じる「水の堂」ガブリエル教授のことと似ていると言うといいかね。状況を動くためのノリだったのだ、それは。手のものをぜんぶは見せない。手の中になんも無くても見せないからわからん、などなどの類。

わたしは『悪魔』として『焔流累颯(えんるるいさつ)』というものの中で『(はやて)』というものを感じることが敏感だ。その悪魔的な本能でちょっとわかる。彼女はわたしを掌の上で踊らせるためにそこで『アリストテレスの方のエーテル』とかよくわからない言葉を言ったのだ」


「そういう言葉も聞かれたんですか?それ『星のチカラ』のことですよ」


「な、なにー!!」


完全に100%正解だったじゃないか。


「今の社会がある前の自然哲学のアリストテレス。4元素の人。星の動きは理由がわからないから、永遠であると想定してスルーした。それをエーテルというのです。まあ、平凡(オーディナリー)のエーテルですね」


そして、平凡の永遠な星の動きは、それ即ち普通にブイオさまみたいなものだ。


「いや、その人の子のばあちゃんがわたくしの正体まで見抜いたわけではないから、利得になる以上問題はない。パニックになるな」


「でも、本当に真実を隠す言葉の感覚を感じたのです。わたしは『森のおじさん』が非凡の人であることもわかった!……あれ?」


「なにかありましたか」


「わたし知ってた。森のおじさんが『ドルイドはもう名乗るといけない』って言った」

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