精密さ
朝、わたしは何故か普段より遅く起きて、少年が動く音を聞いて目覚めた。
「ううううん」
傍でエンブリオ少年の声が聞えた。
「おはようございます」
「おはよー」
目を覚まして周辺を見ると、少年は別にギルドに行く準備もせず、朝ご飯を食べる様子でもなく、珍しくベッドのままで、本を持って読んでいた。
そこで床のマントである、「狼の星」が話す。
「なんか騎士小説を読んでいたようだ」
「ブイオさま」
わたしは身を起こして、髪型を整える。
「知っていたんですか。おれの考えで、別にドルイドさんが寝ていてもブイオさまが活動を止まる仕組みではないと思ったけど、廻のものを見たり聞いたりすることができるかもわからないし、別におれの方から話をかけるのも違うと思ったので、ドルイドさんが起きるまで暇つぶしで好きな小説を読んでいました」
「そうだったな、今日は授業が無いと言ったよな」
「はい」
そう言えば、わたしの方が少年より遅く起きたことは珍しい事だったかも知れない。ブイオさまが状況についてもう少し説明をした。
「そう、大体のことはわかる。この子の周辺が一般的にきみたちマギアが言う廻で、触るように見えると思うといい。そして、話をかけないのがいいのだ。よくやった。
わたくしは基本的にステラ・ロサという衛星を通って、一段階を経て君たち人の子と疎通ができるものなんだ」
なんか初耳のことを言っている。でも、確かにそういうものだ。
「どういう仕組みですか」
わたしもちょっと頭が回るようになったので、続いて説明する。
「あれだ。今年の元日、きみをブイオさまに乗せた時『認識妨害』というものがあると言ったじゃないか。ブイオさまは本当に影が薄い『狼の星』なので、きみはわたしとの縁を通って存在を認知している。そういうのが体も非凡であるものなんだろう。関連しているのだ」
「へえ」
「そう。だから、この子が起きるのを待ったその判断は正しい。別にわたくしが人見知りのお星さまだからこう言ってるのではなくて、そんな規則みたいなものが曖昧になっていくと、非凡の精密さも少しずつ鈍くなっていくのだ」
「そういう意味があったとは」
少年は本を閉じて、もっと楽な姿勢で座った。
「うん、そういうのは大事だよ。わたしが毎日筋トレをしようとしているのも、もちろん深紅の悪魔と戦う時に動きが鈍くなると危険だからそうだけど、それと共に……自分が人間として狩り人の娘らしく活動ができるという心得を確実にしてないと、わたしがどんなに『自分のことをステラ・ロサだと認識している深紅の悪魔の亡骸』だとしても、『だからそれが……なんだっけ?』になってしまうのだ。それは凄く怖いことだ」
少年は完全に理解したようだった。
「それは確かにおれが知っている非凡の使い魔みたいな仕組みですね」
「そう、結局ステラ・ロサさんはそういう存在だ。『森の姫様』になる超偉いものでもあるけど」
そして、わたしたちは昨日の「占星術師のせんせい」との会話について話す。
「昨日の面談は上手く行きましたか?」
「そうだな。どうだろう。わたし的には結構いい感じだった。ネロ様がどう思うかはわからん」
わたしが思うのに、アストラさんはわたしの事を本気に真剣で「次の白神女」だなんだにしようとしているのではなくて、ただ自分の「4の堂」としての今の体制の中で「ギルド長の恩人」という立場以外は別に大きくて尖ったものがないことがちょっと惜しい。もちろん、それは凄くいい事で、最上の名誉で、そのラファエラ少女はマギアの中でいちばん偉くて……自分ができることを今まで精一杯やったとしても、もうちょっと。ちょっとだけ珍しいものを残せたらいいな、というものだ。
ついでに☜というものに近い感じだったけど、でも彼女はわたしが自分の思う通りに動くと、確実に利得でもあった。
「どんなお方でしたか?実はおれはギルドの大きい出来事で遠くから見たことは多いけど、いつもウトウトしていらっしゃったので、歳という物は仕方ないなと思ってました」
「それはただその人が夜行性だからだ」




