ゴミを焼く魔術
「で、あまり人は焼きたくないんだ」
「そうですね。彼は慣れていますから、様々な厳しい経験を乗り越えて今も生き残っているんですけれども。人など焼きたくないんです。でも、効率的に人を焼く方法を弟子たちに教える。めっちゃはしゃいでですね」
「どっちだよ」
まあ、どっちでもあるだろう。
「その人ちょっと壊れてるから。でも、優しいんです。時代が過ぎても火のマギアは戦術的な需要がある。離れられない。だから自分を含め『火の堂』のマギアはキッチリ鍛錬させます。仕事はちゃんとやる。でも、捨て駒はいやだ。死なせたくない。まあ、そんな感じです」
「そうね。複雑だね」
わたしは流石に行儀わるいと思って、起きて背を壁に向け、ストレッチみたいなもんをやり始めた。
なんか首筋が痒い。
「ここがポイントですが、『4の堂の体制が整った時期から』ギルドの傭兵団みたいな動きが減ったと聞きます。つまり、今のミカエルせんせいは家のいいなりに人を焼く立場ではなくなりました」
「ふうん。ギルドが大きくて強いから、易々動けるものではなくなった。それがいいことだ」
「はい、そうではなかったら、今みたいに講義なんてできませんね」
「つまりあれか?ミカエル教授はいちばん強い。家の事情で人が壊れた。そしてラファエルギルド長の構造になってからはちょっと休めるようになった」
「そうですね。今ももちろん様々な政治的立場によって数多くの戦闘に呼ばれています。おれがそのおかげで生きています。でも、火のマギアの戦争以外の面も気にするようになってるのが今のカタチ。より平凡の大学に似ている様になっています。戦争よりは冬に家を温めて、ゴミを燃やして方がいいですね」
「確かに仕事として素晴らしい事だと思うけど」
それで上手く回るのか?マギアを独占する国際組織の非凡の集団だと言っても、一応ここもフィレンツェの市内だ。外から賊や外部の勢力が来るとしたら守るだろう。ならフィレンツェの平凡の軍人と変わらないじゃないか。
「こういう立場は教皇庁と提携しているからできているものです。『勝手にすると破門だけど?いいのかよ』になると、魔術ギルドをいいなりに使おうとする意図に、ちょっと抑止力が働くんですね。だからマギアとして強いだけじゃこの状況は続けないものだと思います。ギルド長の管理と、ガブリエル教授の政治が必要だ」
「つまり色々複雑だから、その結果、教皇庁が一番強いということか。偉いだけじゃないんだ」
「もちろんそうですね。なになに戦争というものは大体戦闘1回2回の勝ち負けで勝負が決まるものだけど、場合にはそれよりもその後始末の方が難しい。完全に自分の軍事力として握ってるものを振るう事ではない場合、他の兵力を勝手に要請したり、裏切ったり裏切りをさせたりをしたら、後でより大変になっちゃいます。偉い人たちはこういう取引の過程で自分の権力が崩れることを望んでないので、自然に共通的に偉いお方を尊重するように見えるカタチで動く」
「わかった。ギルドは言ってる3人の大魔術師のせんせいが必要不可欠だ。そして『土の堂』もそうだね。実利優先でね」
「そうです。農地の管理や金属の掘削、鉱石の物流とか全部関係ありますから」
「やはり四元素は中々よく出来てるんだな。このエーテルの貧しい世界では分業体制になった方が得だ」
わたしは左手の指でマントに「四属性の使い方による魔術ギルドのチカラ」の絵みたいなものを書きながら少年の話を聞いた。こういうのを「賢者の国」の時にやってた気がする。
「『花びら』本当に有用ですね」
「回収しなきゃいけないんだけど。いちおう目に見えるカタチと、触感で残る経験として記憶に残る。使えるもんだと思ってる。このおかげでアルファベットもすぐ学んだのだ」
「なるほど。残らないのが残念です」
「うん、いつかいい暮らしになったら、平凡のものとしても残したいと思った」




