人を焼くこと
「そして、その一部が今のおれにもなってますね。何回も言いますね」
「うん。ミカエル・グエラさん。少年が彼を凄く尊敬していることも分かるよ」
エンブリオ少年は以前なになに戦争の戦闘に巻き込まれて、家族をみんな失った。その時彼と一緒に逃げている兵士をやっちゃっているのが火の大魔術師、ミカエル教授ということだ。
わたしは少年の緊張が何気に移って、横になって壁に足をあげてめっちゃ変なポーズをしてる。
「彼は実はそんなに武勲を欲しがってません」
ぶくん?なんだ、それは。
「ぶくんってなぁに」
「戦争でいっぱい活躍する事」
「まあ、人を焼くことは自分の心も焼くんだ。この話以前もしたっけ」
「多分しましたね」
「うん。悲しい人だ。軍人も騎士も戦闘が仕事であるマギアも全部そうだけど、人は互いに似すぎているから、暴力から衝撃を受けるようになっている」
「そうなんですか?」
「わたしは別に『深紅の悪魔』を殴り殺してもなんも思ってないんだ」
わたしが最強無敵の森の姫様になる。
「そう……なんですね。おれにとってドルイドさんは人の姿で目に刻印されていて、『硝子みたいに固く』なる時も『悪魔』のぶにゅぶにゅした姿と違うからピンと来ないけど、確かにドルイドさんは深紅の悪魔としての自分も受け入れている人です。つまり、共食いをしている。それは……凄く辛いことなんでしょう」
「ううん、それが、3つくらいの理由があってわたしは全然大丈夫よ」
「そうですか」
「そうだ!でも、きみもその1つの原因ではあるな。これは言っておくか」
「おれがですか?」
「きみがわたしを『ステラ・ロサという名前を持つ深紅の悪魔』にさせた」
それは実はそうとうの重い言葉であるが、もともとこの少年は8才児のくせにわたしの一生ものになることを決めているので、こういう話は言っていいことだと思って言った。
「そうですか」
「話を戻そう。だからわたしは大丈夫だけど、人は人を殺める時に衝撃を受けるようになってる。しかもマギアはそれがより厳しい。『廻に届くものを自分の皮膚に当たる様に感じる』のが魔術だ。心を向けて感情的に作り出して魔術を放つ。廻の中のものはその変化すらも自分の体のように感じる。つまり、感情を持って人を焼いてそれを自分の体の様に感じる。
それをずっとやることは、平凡の軍人さんよりもうちょっとしんどいということだね」
エンブリオ少年はめっちゃ深い目をしていた。なんか何億年の記憶を持ってる老人みたいな遠い目だ。
「そうです。それがエーテルを見て握るということですね。
まさにそうです」
「……」
「でも彼の家系は軍人なんです。その中でマギアに才がある息子がいた。しかも扱える魔力が化け物級。どうぜん幼い頃から火のマギアとしてあっちこっちで活躍して、グエラ家はより名前を盛ったのです」
うわー凄い話した。
「いやだな。ミカエルせんせいは『海怪物』の時は参加してなかったか?」
「はい、レヴィアタンは凄く以前の話です。おれが知る限りは『海怪物事件』→『魔術ギルド崩壊』→『ミカエル教授が入って活躍』→『ラファエルせんせいが入って全権を握る』の順番で転んだ」
「なら、ミケーレ氏は本当に経歴長いんだ」
「はい、ラファエルギルド長より4歳下だと知ってますが、入ったのは先輩だと思います。ほぼ同じか?まあ、そこは確かめないとわかりませんが、彼がもう武勲を上げていた時に、ラファエルせんせいがギルド長になった。その順番はあっていると思います。二人共凄く幼い頃だったけど、なんの理由か実力主義の雰囲気があったらしいです」
ふん……崩壊寸前の組織が、実力がすごつよの子供に大人しく従うはずがない。
それこそ「アストラ・ネロ」さんが仕組んだものか。でも、少年の話では、ずっと彼女は裏に溶けてる。派手なのは火の大魔術師さんとギルドの再建だ。
自分を隠すタイプ?よくわからないな。




