神話生物
少年と外に出て、魔力の鍵をかけて別れた。
まだ早い朝。人々はそれぞれの朝の仕事をしている。
門を出して、
いつもの川辺に行って、ストレッチを終えた。
「今日から山森に入ると思ったら、結構テンションあがりますね」
「冬と違って木のエーテルが扱えるおまえには本調子が出せるところだから。それはそうだ」
「はい、普段もわたしはブイオさまの星のエーテルの勢いで凄く元気ですが、周りが緑になっていくのと共に、より感覚が鮮明になっていきます。これが人の体ではじめて感じるエーテルで満ちているということ。たぶん深紅の悪魔としてのわたしはこれの為に『古代魔術』を学んだのです」
「おまえの一部、けっこう変な奴だぞ」
「わたしです。『悪魔』として出来損ないだからなんもできなかった。人も食えず、操り人形みたいにすることもできない。エンブリオ少年と言ってた『焔』のことと同じく、それはわたしが勢いということに優れてない個体だったから。
でも、その中で生存戦略を強く思う性格でもあったから、この世界まで来れて」
「そうだな」
「で、たぶん思ったんです。『この世界は、もともと普通の方法では生きれない。ここの方法を学ぼう』そして師匠であるなんか賢者さんに『木』を学びながらいいなりに使われた」
「神話生物は人の子より、なんだ、演算速度とか有利だからな」
「それはちょっとわからない言葉だけど。その結果扱えるようになったのが木属性。その『ムー大陸』のなにかの政策によって他の深紅の悪魔は全部、人禁断症状で頭がイカれたけど、わたしはまあまあ大丈夫でした。もともとわたしには意味ない制度だったんで」
「そうだな」
「その感覚を春になってやっと感じているところで、一生ドルイドを憧れただけのクララちゃんとしてのわたしと重なって、今わたしは猛烈に感動している」
「うむ、『衛星』であるおまえが良い調子であることはわたくしにもいい事だ」
「走る!」
わたしはマントを(そしてその中のブイオさまを)杖と共に置いて、頑張って土を蹴り、今日の分量を終えた。今考えるには普通に歩いても走っても似たようなものなので、しばらく採集することに普段より歩いて走ることになるから、この辺のカリキュラムを調整した方がいいかも知れない。
「その『ムー大陸』は今はなくて、その次の文明、そのまたの次の文明……『兵士の国』の鍛錬法をなんかおまえが学んで続いているのがこの杖道なんだが、これは本当に深紅の悪魔としてのおまえでもなくて、人の時期のおまえでもないな。もちろん『狼の星』であるわたくしのカタチでもない」
「そう、ただクララちゃんがそんなの憧れるからやりたがったものをブイオ様が知っていたからやってるだけの杖道です。でもその時期の並みの平凡の兵士よりはわたしが強いと思う」
「あまり疲れないからな」
「や―――!」
ちなみにわたしの杖道は相手の攻撃を避けて、防いで、頭を執拗に狙うカタチに固まっているが、これはわたしがふつうに同族として「深紅の悪魔のやり方」を知ってるからである。
人より強い甲殻とハサミ。この世界のようなところでは飛べない。
人を怯ませる「見えないエーテル」これは基本的に「核心をこうげきして、言葉を奪う」性質を持つが、わたしは人としても「悪魔」としてもバラバラな薔薇少女だからそれが効かないのだ。
でもその物語性ではなくて、純粋にエーテルとして、勢いだけで威圧する効果はあるので、それを出そうとする、柔らかい頭を叩くのが凄く有効である。
「『深紅の悪魔』としては出来損ないと言って、ぜんぶ知ってるな」
「自分ができないこととそれでも周りがぜんぶやっているから見ていることは別ですもの」
「それはそう」
同意するブイオさまは何故か、苦笑いをする感じがした。




