異星の光
「エーテル操作!」
リソくんが勢いよく叫んで、手草を取り、いつもの……なんの変化も見えない「霊のエーテルを触れる動作」をしたら、
木材のワインの染みが!明るい紫色を見せて光った。
「なんだこれは」
「これぞウチが持っている霊のエーテルのチカラだったんです。そして、レグノの旦那が持っていた疑心が確信に変わる証拠。本当に今回の屋敷の件は非凡が関わる厳しい事件だったということです」
ちなみに今までの「毒ワインを使ったサツジンの隠蔽だ」「都市全体が機械装置みたいに動いて人を消した」云々は私の今までの経験で推測したことで、別に証拠があったわけでもないし、死んだ人との面識もない。
「本当にそうだな」
「うふ」
自分が非凡の出来事らしい事を初めてやった瞬間なのに、なぜかリソくんはとても沈着冷静だった。
「だいぶ落ち着いてるな」
それは流石に彼女自身も不思議であるようだった。
「そうですね。ウチにはこのような事が誠に自然な行為だと感じます」
「自然な行為?」
「でも、初めてやってます。これは記憶喪失のせいではなくて、こういう事は初めでやります。でも同然の事だと感じれて……なんなんでしょう、これは。なんか、ウチのやるべきことみたいな感覚がします」
「やるべき事か」
私は今まで見て来た様々なエーテルの術師を思った。
非凡のチカラが使える人の子には、偶に、生まれてから奇妙なことができる部類がいて、子供の頃から強い傾向を見せて関わる分野に興味を持つ。天才性を見せる。
リソくんはエーテルのチカラが凄く弱いだけで、そんな人の子だったのか。
「もっとできそう」
そう言いながら、彼女は見えない糸を張って、右手を強く握った。
その糸でつないだ平凡のものを引っ張るように、「紫色で明るく染み自体を」掴んで木材から取った。
「ほう」
「エーテルを保存できる瓶とかありますか」
「もちろん作れる」
「流石『全能』のアルベルトさん」
私は何年ぶりかも忘れてるけど、鋼の体を持つものとして、人が手で水を運ぶことと同じく、金の性質を持つ容器を作ってリソくんにあげた。
「反応しない部類なのは先確認したからな」
「そうですね」
彼女は左手で容器を持ち、「紫」を注意深く降りて、瓶に入れた。
「この瓶はこの作業室にある以上、ある程度ずっと続くものなのだ。そうなってる」
「だだだん」
彼女は瓶に蓋を付けて作業台に置いた。
木材はもう埃が付いていてちょっとのワインの染みが残ってる感覚がするだけで、先までの不気味さはぜんぜん感じないものになっていた。
「……」
「旦那?」
「私は一体どんな客を拾ったのか」
「そうですね。記憶喪失のリソちゃん、フィレンツェ付近の自由村落の生まれ育ちで『霊』の適性を持つものです」
あまりにも常識から離れていることに、流石にノリノリでいることは難しかった。これは問うべきだ。
「いや、これは夜空のチカラだ。この世界の理から離れている」
「そうですか?」
「私の短く狭い視野の判断かも知れない。でも、今まで見て来た奇妙な人の中で、きみのような人はなかった。私もきみから『マギア』のアイデアを貰ったら、すぐ新しい術が使えるようになった」
「それはレグノの旦那の今までの経験でもう方法を知っていたからです」
それはそれで事実だ。
「そうだけど。なんで10才のきみはそんな言葉が言える?どうしてただ2か月くらい教育を貰っただけの知識で、エーテルの属性を推測し切る?」
「ウチの才能です。エーテルを握るチカラと知るチカラは別々です」
「それをまた自分が言うことだ」
「わたしの生まれてからの素です」
「その黄金の瞳は何を意味する?」
「……論点から離れてます。まあ、それはウチもピンと来ないな」
私は金の瓶を持ち上げた。
「何回言った通り、私の悲願は『鋼系』という存在に会って、『鋼の体を持つ人』の存在意義を訊くことだ。実は『紹介するか?』と言われた事もあったけど、自分の努力が大事だと思って断った」
リソくんは少し微笑んだ。
「それは旦那らしい」
「そして時間が過ぎて……『海怪物』の件で魔術ギルドのマギアたちが、黒死病で数々の平凡の学者がいなくなって、私は疲れちゃったのだ。もう『できるお仕事をやる』という自分の理ができる気がしなかった。きみが言ったろう。限界だった。理通りに動けなくなると、ただのガラクタになってしまうのだ」
「大変だったね」
リソくんは普通に私のことを案じているように見える。
「『非凡の流れ星』その時。私の前に見えて『白神女』みたいな見た目でただ放置されたきみは、いったいなんなんだ。すぐこのように私が非凡の様々な事が調べれる様になったきっかけとして、まるで『白神女と神獣』みたいに、都合が良すぎる。
リソくん。きみは悪魔なのか?怪物なのか?神様なのか?」
「ウチもわからないよ。記憶喪失だよ。でもレグノの旦那の名誉をかけて言うけど、『白い子』の人であることは確かだよ」
「私の名誉をかけるな」
私は呆れてちょっと笑った。悪い気分ではない。




