白い子
「私は白い子はいったん肌が薄くて視力があまりよくないと聞いてるから、きみがそういう事で不便がないのは良いと思う」
リソくんも同意した。
「ありがたい事だね。日差しに強くなってるのは本当になんなのかわからない」
「そうだな」
「ウチは以前の記憶がまったくないけど、その薄い中で感じるのはある。体が弱いからドルイドさんが診に来てた事があるよ」
「ドルイドか。それは確かにそうだな。白い子は地方によって受け入れる文化が違って、偉い扱いでも不吉な扱いでもその個人にはいい事がない。そして、その中には極めて荒れた説もあるから」
「どんな説?」
「白い子を食べると体にいいという感じだ」
「うげ」
「もちろん戯言だ。たぶん白い『白神女』が無限の寿命を持ってるから、それが欲しいけど、彼女の力量と神獣の存在で荒れた真似ができない。だから挫折したものが他の白い子に注目していた結果なのではないか……と私は思った」
「それはちょっと非論理的で、当事者性を持つ個人として受け入れ難い事ですね」
「そうだな」
「もともと『白神女』が無限の寿命を持っているとしても、彼女を食べて、食べた人も無限の寿命を持つという保証がない。頭おかしいよ」
「そう。人の子は大体の事が頭おかしい思い込みだ」
「(-_-;)」
「蛇を食べると『脱皮すると新しくなる』性質が働いて体にいいとか、うさぎの足を持つと足が速くなるとか、幸運が訪れるとか。色々あるけど、非凡の適性があって髪色が変わったりもしないのに、元から白髪で生まれるのは珍しいと思うのだろう」
白い子を食べる人の話で気分が凄く悪くなったリソくんは興味を示した。
「ふむ、そこはちょっと偉さを感じる」
「そう、白さは東のとある国には非常にいい象徴として消費されるのだ」
「へえ、人が?」
「人の子以外にも、像さんとか牛さんとか蛇とかネズミまで」
「ネズミも???」
彼女は頭を傾けた。
「場合によってはネズミも神様になれるという事だな」
私は不快な話をどう流すかでちょっと焦っていたが、彼女は私が普段けっこう嫌うネズミすらも、毛色が真っ白だという理由でどこかの信仰では偉く思われるという事は随分面白いと感じたようだ。
「それはちょっとおかしいね」
「そうだな。おかしい話をして気を散らかした。済まない」
「ううん」
「話を戻すと、そういうあやしい連中と違って、もともと『白神女』を超偉い人に置いて活動をするドルイドたちにとっては、白い子の体を診る事はけっこう気分がいい事だ」
「なるほど、その人はドルイドの王みたいなものだから、似たような子に優しくするんだ」
そういう話をしながら、持ってきた食料を棚に整理した。うん、完璧だな。
「それでは、事務所に行ってくる」
「いってらっしゃーい」
リソくんは両手で奇妙な動作を見せながらあいさつした。なんだろう。
私はまた家を出て、今回はちょっと遠くにある総合建築協会に行くことにした。今回の「インテリア工事」の書類処理と、賊に襲われた事も気になって、ちょっと調べたかった。
先ステラ・ロサ氏に話をかけたのも、彼女との会話で私がフィレンツェにいなかった何日、噂話などはないのかを知りたかった意図もあったが、その思いは叶わなず、ただ魔術ギルドの魔術装置みたいな話ばかりした気がする。(好きだけど)
でも、私としてはコツコツ知識を使って身に付いて、生活に安定さを持つことは凄く大事なので、いったいあの依頼とそのあとの賊はどういう事なのか、賊が私を狙ったならどこから情報が漏れたのかをダブルチェックをしたくて、協会に行ってるのである。
そんな考えをしながら速いペースで歩いていたら、遠い家の屋根に、白い蛇が見えた気がした。
写しの記憶に残そう。




