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生命の意図

それから何日が経ったのか、人の子の道路を避けて頑張って歩いてきた結果、フィレンツェというところが見えるようになった。

流石に混沌の娘も「『境界』を収めたところを狙われるかもしれない」という、疑心暗鬼の、かもしれない戦法をそろそろやめるようになったと思ったので、わいは「この方向で進むと、ぜったい迷わないのです。私は隠した方がいいですね」と、その事を言った白神女の姿を収めたあと、山奥を進む「白神女の神獣」ぞ。


やはりこの体は75000年を使ってる姿だから、凄い安心感が来るのだ。まあ、でも人の目がある処では困惑なんだな。「あれは!!『白神女の神獣』じゃないか。なら、本人はどこだ?ふむ、これは利用価値がありそうだ」みてえな、くっそ面倒くさい事に関わるだろうから。

今はもう過去の存在であるわいの相棒は、有名人すぎるのだ。


だからここからは「(へび)」として行くことにした。絶対喋れない。喋らなくて、身を隠して、それでも見える白蛇(しらへび)の目撃情報だけを増やすと、わいは「蛇の獣之魂(アニマ・リン)」として人間たちに認識されるという作戦だ。ゆっくりその物語性(ヒストリカル・アイデア)を積む事ができる。上手く行くのだろうか?


ポポン!


[元々「言葉を喋る」というものも国によってぜんぜん違うのにな]


白と灰色の石板が置かれた、偶に馬車が続く有料道路(ゆうりょうどうろ)とやら。その(すみ)っこを進みながら、わいは流石に「あ」と一口出しただけで混沌の娘から攻撃されたのは理不尽なことだったと思いながら、大門が見えた。


フィレンツェ共和国のフィレンツェ。一番イケてる国らしい。


時は適切に昼あたりのちょっと前で、門には人が多すぎる。ので、わいは(しろ)の石壁を(のぼ)って成功的に無断入国を果たした。

そして、どう「霊の娘」を探す?人の子ならここで疑問を持つかも知れないけれど、それは簡単(かんたん)だ。極めて単純(たんじゅん)な事である。


この市町に住んでる連中はもちろんみんな血肉の体を持ってるはずなのだ。だから、わいは「肉汁(にくじる)」の時から持ってた凄く基本の探索スキルを使う事にした。

共鳴して、「霊」が混ざってるやつが反射すると、そこに奴がいるのだ。高い処から張ると、より分かりやすい。うむ、素晴らしい。


(かつ)


それは別に音を出す叫びとかではなくて、同じ身を持つものなら気付くことも出来ず、命あるものならぜんぜん持つ生命の証拠なので、混沌の娘がわかる筈もない、ただ人の子が見れない光や、聞こえない音みたいなもの。

まあ、探索スキルとか派手に言ってみたけど、心臓(しんぞう)拍動(はくどう)なんだ。ただの。


[へっへっ、マジでいるな]


そしてわいは、確かに都心でその身に(れい)の特性を混ぜている人の子の存在を感じ取ったのだ。


位置がわかったので、わいはいったん城壁の、だれもぜってえ気にしない場所でゴロゴロしながら、家から人が出ないかを観察して、街中の人が居なくなる夜までを過ごした。


随分暗くなったので、わいは動く。

壁を()がって、聖堂を通って、なかなか贅沢な家に辿り着いて(手足ないけど)、小さな窓から入り込んだ。


[独り住みのおじさんの気配がするぜ]


めっちゃ積んでる書類(しょるい)機材(きざい)道具(どうぐ)などなど。図面(ずめん)本棚(ほんだな)。ものを作るものの家らしい。あまり(ほこり)はない。掃除がうまいやつなんだな。

でも、別に独り住みのおじさんはそこに居なくて、留守中の白い頭の少女が一人いた。

頭良さそうなおもちゃを弄りながら、独り言をしていた。


「なんか『急用ができた』と言ってレグノの旦那は言ってたけど。どういう用事なんでしょうか。ウチがレグノの旦那と一緒に住んでから、こういう事は初めてです」


目は金色(こんじき)。誰かさんに似て結構親密感が湧く色の配置である。


「こんばんは」


そして奴は、なぜかわいが隠してる二階を直に見上げて、挨拶をしてたのだ。

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