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古代魔術「木(みどり)」

困ったので、仕方なくわいは我が分身を出す事にした。今は前が大きい化け物の巨木の根で防げられていて、脱出するために「小鳥」に変身して飛んで逃げるのもありだけど、あいにくもうこいつの「目」が付いちゃってるので、だまって見てるはずがない。囚われている部分が増えるのは御免だ。


「呼ばれて登場。そのうちに色々大変だったようだ」


「そ、今は敵の目も耳もあるから、話はいったん飛んでからしたいんだけど。この状況をどう避けますか」


「ふん」


白神女はわいの羽を一本引いて、それを扇みたいに使って、マギアを使った。


「かまいたち!」


そして、混沌(カオス)の娘の根はぜんぜん斬撃が効かない。


「わが愛しい神獣よ、記憶より硬いぞ」


「そうだな」


わいは以前、こいつから逃げるためにくるくるした斬撃の突風を出したことがあるから、多分こいつはその対策をきっちり持ってきたという事だ。


「それが『白神女』か。完全に化け物の一部になって、哀れな末路だな」


「なんであいつは自分が化け物なのに人を勝手に化け物扱いするのだ」


わいの相棒、分身は作る前から直接頭に話をかけて助言をしてくるとかができないけど、呼び出された瞬間、わいが知ってる事をぜんぶ知るようになるので、今までの「出てなかった」時のことはだいたい全部知っている。


「そうだな。あいつはその『流れ星』からチカラを貰ってちょっとおかしくなってるのだ。だから草木として自分自身の種類を増やそうとするとか、まったく意味がわからんぞ」


「いや、それ自体は普通に生き物としてありえる事だ」


「シックス・システマとしておかしいじゃないか」


「気の通路が切れているというから、それがあの(ウンブラ)の個人の素だったのだ」


「そうだったのか」


そういう呑気な会話に、混沌……本体はぜんぜん遠いところにいるが。彼女はちょっとキレて、殴りに来る触手の量を増やした。


「私について勝手に語るな!」


「これは失敬(しっけい)


そう言い、白神女は羽根を両手で引き延ばして、自分の杖のレプリカを作り、そこから黄金(オロ)の長い糸を出した。糸は細いながらもエーテルの強度を持っていて、くるくる回した形はそれ自体が攻撃を防ぐ物理力を持って、触手の攻撃を弾いた。


「このままじゃ危ういぞ!」


「うん。どんどん動ける場所が狭くなるな。ここは牛さんで押した方がいい」


「そうだった」


「客さんは大丈夫だろうか?」


「まあ、そうだな。心配無用だろう」


アジトだったところには実は認識の密度を非常に落とした夜系(シックス・システマ・るるい)が戦いを見ていたのだが、まあ、システマのウンブラがこれくらい耐えないと困るのだ。


「古代魔術『(みどり)』!」


わいは両手を頭上にあげて、後ろで分身はそのわいの背中に杖を当てて呪文(クラーマーレ)を言う。


(かぜ)、壁を破り前に届け!」


その呪文と共に、わいと彼女の全体から金色の色が出て、


ドッカン!


《牛の座、貫く!》


「ぎゃー」


普段より4倍大きい白い牛になって、わいは(ここでポイントは、わい「たち」じゃないということだ)アジトを全部壊して外に出た。今の攻撃で混沌の娘も「目」もまた使えなくなったな。

わいの分身、白神女は気の通路が通ってるので、わいがすぐ「黄金のウロボロス」になって逃げようとすることをわかる。


「次はもっとうまくなりますように」


「にゃはは」


わいは今回は一匹の白い蛇の姿に化けて、まだあっちこっち根を張ってわいを探している「混沌(こんとん)」から逃げようとした。やはり「人の子の姿」ではなくて、一匹のどうぶつの姿に集中すると、あいつの「ハスターのウンブラを探す」能力は非常に落ちるのだ。(考えてみればめっちゃ素直だった。なんで教える)


体を素早く動きながら逃げているわいは、混沌の娘の本体もけっこう近くにいることを見てしまって、あいつもこっちを見たのだ。


「あ」


「喋る蛇になったんだな!」


彼女は右腕から大きい枝を伸ばし、今回はわいを強打した。

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