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集団の機械装置

話をまとめて説明するためにはまずは自分が状況を把握しないといけないので、私はこの事件について考える事にした。


春が遠くない夜。夜行性の大きい鳥の鳴く音が聞える。


外では御者さんが馬車の出発を準備しながら、屋敷の人たちとお喋りをしている。最近のこの地方は毒草が非常に多くなって、それを食べた牛からの牛乳を飲んだ領民が大変になったとか、そんな話を交わしてた。

だから毒か。


確かに荷物を作業の現場に運ぶ時も、ここの使用人たちがそんな話をしていた。最近の穀物の収穫に問題が起こるとか、昨年の春の「流れ星」も変だったし、何かの(たた)りかも知れないとか。この地域も中々大変そうだったのだ。


つまり、今回この屋敷の主が鋭くて珍しい、あまりしない方が心にいい決定をしていたことには、最近のその毒草とやらで代表される、ここの地域社会の変化が大きい理由になっているということだ。もちろん毒草は普通に発生する。水と土のチカラが汚れて土壌が変になり、そこに普段はあまり触れる事がない草が生えるのは自然なので、それを処分する人がいる。普段の仕事ができない。その繰り返しで結局何もかもが人手不足になっていく、悪循環(あくじゅんかん)になりやすい。こういう周りからの影響を受けるしかないのが生命と言うものなのだ。


などなどを考えながら、(わたくし)はもちろん最近リソくんに聞いてからずっと思う「エーテルの目的性がなくて、設計図のように稼働(かどう)する非凡(エキストラ・オーディナリー)の技」についても少し混ぜて考えた。


今の「毒殺事件」に関して連結(れんけつ)して考えると、「毒を手に入れることができて」「産業の難しさが多く発生している」「こんな状況で周りの国はいつも脅威である」などなどの難しい事が混ざって、結局毒殺はこれを解決するための手段だったのではないかと思った。


仕方ない事だ。

ものは利害得失を考えて動くことになっている。草木も動物もそう。そして、人はちょっと違う――人の子一人はそれぞれ違う楽しさや好き嫌い、個性などがあるのだ。だから時に予測ができない行動を起こす事も少なくない。けれど、それが家系の事になったり、国の事になったりして、より大きいことになると、人一人が考えるには状況の複雑度が高まり、好き嫌いで判断するには見る目が多くなるのだ。そうすると、仕方なく行動の決定は制限されて、その多い人数の利得の流れに従う事が多い。(もちろん、長が暴君であるとこれも効かない話だが、いつも人の子の社会はそんな構造は長期的に争いや反逆、革命が起こっていた)


たぶん今回の事件もそんな類だ。(ぜひこの事件を隠す最中、「あのものは使える」と思って、私に大変なことが飛ばされることがないことを祈る)


このように。個人の目的性より、集団の利益を望んで領地が全体的に一つの機械装置みたいに動くことが起きたのだ。


これは意思を持っている人の子とその群れが装置みたいに動く場合。なら、エーテルの技と言う目的性を考えて何もかもコントロールする行動を「目的性を特に持たず」機械装置みたいに集めて重ねて行う事も逆にできるのではないか。


などなど、たぶんここでは絶対結論が出ない話題に飛んでいた処、御者さんは出発準備ができたようで、


「ようやく行けそうです。夜ですが、賊や狼に会わないといいですね」


馬車はくっそ五月蠅いから休憩ではない限りろくに話を交わす事もないだろう、短い話をしてた。

私も答える。


「そうですね。私も身を守る方法はありますので、御者さんに害があることは無いと思いますが、世の中は難しいことが多い。無事にフィレンツェに戻ったらいいですね」


「はい、命が一番大事ですしね」


「全く、その通りです」


そうやって、私は軽く固定している床の木材を触ったのだが、

またそれからは違和感、奇妙な不快感がしていた。

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