もうちょっと続くと思え
「ムー大陸の惨劇、『ムーの最悪』の後で、その黄金をぜんぶ食った、『型物理性』ができた」
「なんだその怖い概念は」
「今までの話ではそうですね。ムー大陸は終わった。おれの夢がこのカタチに残っていたということは『ムー大陸のエーテルを放つもの』もビンビンしていたという意味で。『破裂するしかない目的性』と廻の膨大な魔力。そして今日、同じ属性のものがまた現れたという事実まで含めて。こうです。その破裂をなんとか治めて、回収した存在がいたのです。そしてそれはそれ自体が型物理性とやらを成している膨大なもので、もう、もう一人のぶにゅぶにゅの神様みたいなものなのです」
これもいつもの戯言だが。
「そのあとなくなったのではなくて、また現れた。ということは、術師本人が75000年を生きる必要がある。『白神女』でもない以上、それは魔法生物だ」
「そうですね。『夢の主体』みたいなものが、この世界をずっと歩いていたという事です」
「恐ろしいことだ」
「ドルイドさんの『悪魔』の部分は、見たことないですか?そういうの」
「見たことない」
「ふむ」
「そして、厳密に言うと、今のわたしを構成している部分が見たことがないということになる」
「それはどういうややこしい概念でしたっけ」
「わたしは別に『灰色の呪いの中で古代魔術を学んだ奴の特別な部分』ではないという事だ。他の灰色の呪いの邪気にも『深紅の悪魔』は適切に粉々になって均等に混ざっているのだ。そのぜんぶや、一部にはわたしが含まれていて、その中でクララちゃんを動かしている結果からの部分がわたし、ステラ・ロサさんだ」
「確かにそんな話しました」
「うん」
つまり、今の彼女の部分ではない、古代魔術「木」を学んでいる深紅の悪魔の記憶と意識を持つ他の粉は今も魔力の疫病、「灰色の呪い」としてこの世界を漂っている。その死の旅の中ではその「黄金の術師」を見ている部分も居るかも知れない。でも、彼女はわからないという事だ。
「なんでそんなものになってるのでしょうか」
「わからないな。その『夢の主体』もなんかノリでそうなったのではないかな」
そして、その粉々と固定の何かの印を付けたのは凄く強力な存在なのだ。まあ、体も全部非凡の魔法生物は心と体を維持する事ができないと散ってしまう。それが灰色の呪いは「死にながらずっと続く」という状態になっていると、彼女とブイオさまは自分たちもよくわからない事だと説明をしてた。その術師はもちろん、その夢の主。同然だ。大体の幻想はそんな原因と結果なのだ。
「ノリで死者も動かして感染させる病を作りますか。ぶにゅぶにゅの神様はやばいですね」
「そう、やばいだよだ」
「おれの記憶をドルイドさんにあげることができないのが残念ですが、その『黄金の光景』が全部一人の術師に集まったというのなら、それは『ブイオさまとムー大陸の魔力源』みたいに、ドルイドさんの花びら一枚一枚の感覚で『黄金の跡形』を残したとしてもおかしくないです」
「これをこーしたように通ったのがそんな感じだと?」
彼女は自分の掌から白い「花びら」を出して、おれの首の周りを一周して、そのまま自分の周辺に浮かべた。綺麗。
「それほど『黄金の天と地』はやばいのです」
まあ、こんな思い込みは大体外れるので、おれはドルイドさんに共感ができてよかったと思いながら、ちょっと眠くなったと言葉を出した。ドルイドさんも今日けっこう緊張したんでエナジー抜かれている状態だったらしい。それはそう。
おれたちは、だから今日の最後に、その「黄金の術師」に浮かぶ疑問をちょっと話す事にした。
「なんで人々はそんなものがわからないのだ?流石にここは魔術ギルドなのに、おかしい。実はクララちゃんがもしマギアとして丁寧に学んでいたら、自分が狂ったと思ったくらいよ」
「非凡を見る目があるだけでそんなに違いがある?同じ種族の『深紅の悪魔』は見えて、触れれるのに」
「フィレンツェ市町で何をしたかった?何かを探す猛獣のような感覚がしたけど、獣のような襲撃が目的なら、人々はもちろん、魔力的にも魔術ギルドを襲ってないのがおかしい。魔術ギルドが健在なのに市町に来てること自体がおかしい」
「ドルイドさん以外は見ても非凡か否か…わからないものだから、その術師も自信があったんでしょう。ギルド以外のものが目的なのは明らかですね」
「そうなんだよな…ふむ、『ムー大陸の生き残り』みたいな感覚で、何かの恨みでわたしを探しているのではないだろうか。まあ、流石に自意識過剰だけど」
「もともと恨みを持つ理由もなければピンポイントにドルイドさんを探す意味がないですね。ドルイドさんはクララちゃんとブイオさまがいる結果こんな形になっているということで、その生き残り…は世界全体を漂ってる。あ、ブイオさまを探っているとか?」
「それもそれでありそうで困ることだ」
確かに星の狼は人の魔術ギルド以上にも欲しがってもおかしくないものかもしれない。




