マッスルメモリー
毎日のトレーニングのノルマは、走りと伸び、杖の熟練だ。
聞くには、普通の鍛錬法では、同じことを毎日ずっとやったとしても、体が疲れるだけ。
むしろ病気になるとか怪我するとかもあって(それは当たり前のことではないか。)
ちゃんと休まないと、むしろ痩せちゃうこともあり、
筋肉が減っちゃう事もあるという。(それは意外だった。)
ガタイをよくしたり、腕力を強くするためには、壊れた筋肉をちゃんと休ませないとだめなのだ。
でも、狼によると、わたしは普通の体ではないから、とりま毎日やって、忘れないようにする事が大事らしい。
筋肉は付けなくても迷わず動ける。
ガタイは同じでも機敏になる。
やらないと、またグダグダになるから。
グダグダになるという事は、記憶が薄くなることだ。
今日の朝に、「おはようございます」すらもできなくて、昨日の事が溶けてしまう。
まるで、もともと無かったように、やったこともない様に消え去るのだ。
話しには、わたしの体にはコアというものがあり、それが今は非常に不安定な状態で、
人間の時のクララとしての記憶と、
よくわからない不思議な光が空から落ちてきた記憶が混ざっているのもそのせいで
いつバラバラになるかわからない
自我が溶けて崩れ落ちるかもしれない
落ちたガラスの食器の様にバラバラになるかもしれない
(見たこともないけど。)
バラバラの身のバラ星少女のわたしであったが
それは、まあ、非凡とかエーテルとかよく分からない知識に比べると、
もともとのわたしの性格だな、と思った。
だから、杖を振って身を守る事に集中する。
集中することが、心を守る事に繋がる。
シンプルだ。
なんで杖(物理)かというとーそれしかできないからだ。
狼と「契約」して、異変が収まったわたしの体は、
髪色は白く(もともとだが。)、緑色のマントを纏い、
赤い宝石の杖を持つ、ドルイドさんの姿になったのだ。
その変貌は、人の意思とか目的などが強く働くらしいけど
(人は結局、目にしたものを真似る性質を持つのか?)
そのわたしには、身を狙う脅威であって、
逆に餌食でもある、「真紅の悪魔」という倒すべきやつらがいたのだ。
そいつらと戦う術が必要となった。
でも、ドルイドは戦う仕事ではない。
肉体労働は向いてない職業だ。
自作物語の「森の姫様の最強伝説」でもあるまいし
(弟だけ聞いてる)
足場から巨大な樹木が生えて動く枝が岩を砕き
蔓で縛り動けなくして、賊を捕えたり狼を追い払ったり
花びらや木の葉をとばして
そう言うのはただの妄想
ドルイドの話から想像したわたしの作り話だ。
木は人より長く生きて
動けないから切られる。
だからわたしがその恩恵で冬も耐えて生きていたのだから非常にありがたいことで
樵のおっさんの仕事は素晴らしい。
「わたしにはこの杖を振るしかできませぬが」とわたしは言って
「ならいい手がある」と犬が言ったので
3週くらいトレーニングをやっていたところ、
「真紅の悪魔」のエーテルを感じたというから、走ってフィレンツェ市町を向かったのだ。




