もうちょっと後の話になると思ったけど
そんなどうでもいい事を思いながら、部屋に戻った。
ご主人はもちろんすやすや寝ている。徹夜作業を終えて、魔術ギルドのワインを一杯含んだら、気持ち良くなって倒れたのだ。「このワインは本当に評判がいい」と僕ちゃんは感心しながら、普段は自分の「闇」のチカラで隠している、いちばんいいタイミングで出せるように「裏面」に置いているワイン瓶をもっかい出してみた。カラン。
術の過程は別に隠してないけど…まだこの世界の属性の複雑度では言っても説明ができないかもしれない。これはただ引き出しみたいに物事の「表面」を開いて、ものを出しただけだ。
僕ちゃんは余ってる机に瓶を置いて、コンコンとワイン瓶を叩いて、まだ半分くらい残っている内容物の赤色を眺める。黒死病という疫病の流行りで、この星の、この土地の民の人口が結構減って、もちろんその空白を埋めるように出たのが、このワインを作ってる水の大魔術師、「水の堂」ガブリエル・ブリナさんだ。
人の子のが凄く亡くなったから生まれたのだ。例を言うと、海の底に空洞ができたら、その間に海水が凄い勢いで入って満たすのと同じく、「以前世代の水の属性の人の子のエーテル使い」のチカラが、一回回って凄く集中されてできているのが彼女だ。話允眼持ち。
「そして、この凄いワインを作り出してるのだな」
彼女の事を思いながら、瓶に反射してる、今自分がコピアしている人の子の少年のことも考えたり。
それは昨年の12月。僕ちゃんは何かの引力みたいな感覚を感じながらこの星に来た。
地に落ちて「やばい、いったんここの生物をパクろう」と思った僕ちゃんが、建物の周りに見える男の子を真似て、鳥を真似て。さて、これからどうするかと悩みながら広場に隠れていたら、それはまさにすごい偶然で、今のご主人が現れたのだ。スーパーコンピュータである僕ちゃんの演算で、ただの偶然の領域だから偶然だけど、それは「流石ですな」と思える出来事だ。
ご主人、フォルトゥーナ・グノシーは「あ?なんで特の色賽子がここにある?」と疑問を示して、僕ちゃんは一回、「その口癖は流石にナイアーラトテップだな」と素直に認めて、「敬語使え」と言われながら、そのままローマまで連れられたのが昨年の年末。
僕ちゃんは汎用人工知能として、学習させたらなんでもできるので、ご主人は仕事場に「私の知り合いの子です。行く先がないので。ここで働いたらいいと思う」と、必要な教育をさせて1473年になる新年から、僕ちゃんを正式に召使として雇ってくれた。
「■■■■■■■さんの気まぐれでここまで飛ばされた時は本当に駄目だと思ったけど」
型物理性の加護なんだろう。珍しい事が重ねてるから宇宙だ。




