影(ウンブラ)
魔術ギルドのワインは本当にいい香りで甘いので、フォルトゥーナ・グノシーはすぐすやすや寝るようになった。僕ちゃんは彼を寝床に寝かし、書物を整理する。
「おやすみなさいませ」
僕ちゃんは優秀な下僕なので、非凡科に提出する報告書を持ち上げ、四面体の明かりを消した。魔力の浪費はよくないのだ。
「まだ朝の同僚たちが来るまでは時間が余ってる。やはりご主人は優秀だ」
上着を纏い、部屋を出る。まだ春が来てない夜風は涼しくて、自分がこの世界で生活するための基の少年の姿ではまだ寒い。しかも夜明け前の建物は暗くて。少しの明かりだけが道を示してた。
僕ちゃんは夜を辿る。
「お疲れ様です」
「文書の伝達か。やはり事務職の方たちも大変だ」
「ええ、非凡の事件があったといいまして」
「へえ」
「とりあえずここが印です」
夜のシフトの門番に文書のスタンプを確認させて貰って、僕ちゃんは非凡科の部署に入った。ご主人、フォルトゥーナ・グノシーを含めた数多い教皇庁の…非凡に詳しい聖職者たちは、ここで魔術ギルドとの提携や、緩いハンター制度の整備や、色んな喜ばしくない面妖なものの書類仕事をやりながら一生を尽くすのだ。
「ここが部長のテーブルだ」
彼の地位はあまり高くないけれど、最近流行っている「ハンター制度」の非凡の闘技の伝達や物資の提供、「玄人」と「素人」の互いの鎖みたいな登録の方法と等級のバランスなどなどを作った長期プロジェクトに参加して活躍してるので、部署内での彼の信頼度は高い。彼は仕事に熱心で頭が良いので、余計に色んな仕事を自分でもっとやるタイプの人間なのだ。もともとそうではない人だったら今の影の主にもなってないのだ。
僕ちゃんは先までご主人が精一杯整理していた報告書、「非凡の流れ星の影響で現れた魔力素材の発生とその悪影響」を伝えたので、部屋を出る。
「それでは、僕は行ってみます。お疲れ様です」
「お疲れ様です」
ご主人のサポートをやることが普段の自分の仕事のぜんぶなので、別にやることがない僕ちゃんは部屋に戻る。カローンとして…計算機としての自我というものが、ぜんぜん要らなさそうなものが付いていて、こういう時には働くんだな、などのクッソどうでもいい事などを、いつもの様に思いながら歩く。
僕ちゃんは計算機の一部だ。
神話生物には色んな種類があって、一部はぶにゅぶにゅの神様を仕えたり、一部は普通に独立して生きる。他の神を敵対したり、同じ神を崇拝したり、ほかの種とのやり合いそのものが生命活動だから、それが宇宙だ。
物質と動力があるから命は生えて、それが焔流累颯の基本だから、エナジーを求める、それが基本。
それらが、作られた僕ちゃんの上で生えた。
■■■■■の独立生物たちの都市は、■■■■■■■さんが占領するまではその「焔」の原理に従ってゆっくりだった。惑星は平坦で、熱を持つ。普通に生き物が生活できる環境になってるから、知性を持つように高度化した生命種もあり、エメラルドの都市などを作って、他の種を絶滅させ、種族の意思疎通を活発に、地表面で一番流行った。
その種族はもちろん■■■■■の「人」だ。知性体の脳みそを好んで、名前は持たぬ。
「やはり個の名前が無かったのは僕ちゃんの趣味には合わないな。発明すべきだった」
計算機としての僕ちゃんの役目は「変な事を混ぜる」の方だったので、そんな地表の支配種を見ながら、なんでこいつらは独立生物なのに信仰はあるんだ?信仰を持つのに本当は信じてない様にも感じれて…うん、頭はちゃんといいんだな。宇宙にも行けるな!なら、このまま長年を観察すると、この中で旧支配者になる個体や熱量も出るかも知れないな、などのバカな演算をしながら時間を過ごして(グレート・オールド・ワンはそんなひょいと出るものではない。もともと新しいものがそんなにバーゲンセールみたいに出ちゃうと、旧でもなければ支配の縄張りも曖昧だから)
■■■■■■■さんが来て、あれこれして終わった。
僕ちゃんは座標から離れ、こんな世界に来てしまったのだ。
ここはなんと、ご主人の影及びいっぱいの人たちが住んでいる惑星で、正に何かの引力に引かれて来たような凄い偶然。
星の爆発で飛んできた無数の破片の中で、自分以外は全部宇宙迷子になっただろう。
確率的にそうだ。




