そして徹夜する人はいつでもどこにも
一方その頃、「化け物の巨木が現れた」という速報はもちろんローマの教皇庁にも届いて、苦労人である中間管理職、フォルトゥーナ・グノシーは今夜も残業中であった。
「今日も徹夜ですか。お体に障りますよ」
彼はその召使いのカローン。8才くらいの見た目の少年で、相当有能な非凡のものだ。
「仕方ないじゃあないか。「流れ星」の影響が可視化してる」
フォルトゥーナは、禧を継ぐというその名前が全然 無用で、ぜったい幸いでもなければ、この苦労がどっかの記録にろくに残る、受け継がれる事もあるまい。
ただのシステマが維持できるようにやってる仕事だ。
「それは僕ちゃんも他人の事ではないから、まあ、なんとも言えませんね」
「まったくそうだよ」
彼はつまり、非凡対策のなんとか係だ。非凡のチカラを扱うハンター制度も、魔術ギルドとの提携も、そして、「Great Comet of 1472」の異変に関するなにもかもを一旦整理して動かす役をやっていて、まだ権力らしいものはほとんど持ってない。仕事が多いだけなのだ。
「そう言いながらもけっこう楽しそうですが。ご主人は存在自体が変だ」
そして仕事中毒である。
「否定はしないけど。賽子が生意気な言葉を吐くのではない」
「術師ではないでしょ」
「まあ、そうだが」
彼らはどうやら、元々なにかの関係があるようで…カローンは机の上の赤い四面体を触り、光の波長を調整した。
「これはどうですか。マジで眼力いかれますよ。人の子の体だから」
「たしかになるほど」
明かりは、ちょっと目にやさしい段階になった。
「ふむ、「流れ星」か…今回の本題の、「化け物の巨木」とはなんです」
「ああ、これはこの星のカワイ子ちゃんたちの分身の成れの果てだ」
「そうですか」
「基本的に命の集合体恐怖症キラーが六系、そして森之魂の全体になってるのがその「山系」だ。今までの教皇庁の記録で、ヨーロッパに「植物の化け物」の記録が残ってないのを考えると、それはウンブラ用の個体。でも、闇属性に染まったとか、まあ、そんな感じだろう」
「中二病が来ちゃいましたな」
「それはなんだ」
「あれです。闇のチカラに集中しすぎて、別にネロでもアマウロスでもないのにそのフリをすること」
フリをする。そして、廻から見ると、それは場合には相当恥ずかしい事なので、型物理性のデメリットが来るのだ。
「ああ。あの恥ずかしいあれ。そんな連中が魔術ギルド関連にあったとは聞くが」
「はい、■■■■■の爆発の影響で、そんな感じの時期が来たのです、その「森」の個体は」
「うむ…」
複雑な表情を見せて、フォルトゥーナは眼鏡の位置を調整する。
「なんか毒草が問題なのでしょう」
「そうだな。毒属性のいい素材になっていて、これは毒薬に使ってもよし、刃物に塗ってもよし、狩りにも、薄くすると真面目な薬にも役に立つ。魔術ギルドもまだ判断を保留していて、調査隊を送っている。そのものたちは、今徹夜で馬車乗って現場に向かっているのだ」
「急にご主人くらいはマシな気がしてきました」
「それよくないぞ。私が言うのもなんだが、基準がおかしくなってるんだぞ」
「魔術ギルドも相当ブラックですね」
「そっちはもともとそうだった」
「そうですか」
「あの「乾燥イカ」あるだろう。きみがまだこの星に落ちる前の事だが、討伐に魔術師がめちゃくちゃ命を落としてて。その時たぶんギルド無くなる事だったよ」
「へえ」
「それをまとめて、また今の形に続いているのが、「轟」のラファエル氏だ。属性は「風」の二重かな」
「なるほど。アリアは繋いでまとめる事が上手いから。その人の子も頑張ったんですね」
「そそ」




