方向がわかる呪術
「日時計を作って、朝から昼までそれを見ると、北、南、東、西のどこかがわかる」
「そうですか。日時計というものがあるんだ」
「せんせい、でもそれはもともと「だから今は何時だ」がわからないと働かないのです」
なんかエンブリオ少年はその方法を知ってたけど、使えない方法だったらしいのだ。
「そか。もともと時計が要るんだ。というかそれ8才の課程にないと思うけど」
「技術か、自然哲学にありました」
「また予習したんだな。背ぇ伸びないよ」
なに!?勉強をし過ぎると、背が伸びないのか。
「そうですね。それは困ります」
わたしの言葉にラファエル氏はちょっと意外に思ったようで、
「おやおや、そう仰いますと?」
「少年はこれからもわたしのいい縁になると思うので、立派に成長してほしいと思ってます」
「なるほど」
ちょっとエンブリオを見て、目で笑った。
そして、その時、先挨拶をした魔術師のせんせいが会議室に入り込んだ。
「急用です!」
「なんの用だ。まだ客さんがいるのだぞ」
「わたしたちは用は一旦済みましたけど」
「例の「怪物巨木」が発見されました!」
「なに―!!」
そして、ラファエル氏は凄く大声を出す。なるほど。これは声が魔術的にデカすぎるのだ。
「怪物巨木」
「初耳ですが」
「それは危険だからだよ。
え―と、私たち、魔術ギルドは、国や教皇庁などなどの連絡を貰って、騎士団の様に「魔力生物」の討伐もしたりするのです。そして、昨年の面妖な流れ星のあと、なぜか現れた変な草や花があってですね。毒があるかも知れないし、魔力素材としてどう働くかも今までぜんぜん研究ができてない。その根源が見つかったら、必ず確保したい」
「化け物の植物とか、見たこともありません。流石魔術ギルドだ。
真冬なのによく見つかりましたね」
「そうですね。冬になって死んだかと思ったんですが、それも違ったようだ」
「ギルド長、どうしましょう」
そして秘書さんは本みたいな魔道具をあげて、ギルド長に報告した。
「ふむふむなるほど。めっちゃ遠いな。これは瞬に飛んで出向くのも困惑だ。調査隊を組むべきだな」
これが御伽噺ならなんか意味わからない理由を付けて、すぐ会うとか、わたしたちも同行するとか、そんなことになったかも知れないけど、現実は普通である。
そこで、少年が説明してくれた。
「実は、「ドラゴン」みたいに喋って術も扱うものなら、過程が複雑でですね」
「言葉通じるからなんか権力関係の難しいことでもあるのか」
あれを丁寧に扱うべきた!大地の女神さまが怒るぞ!みたいな。
「ちょっと違いますね。それまで強くなったものは、部類によって、「かんたんにやっつけても」困ったりするんです」
「そか」
「基本的に騎士団やハンターはそれが最善だから倒しますが、怪物の中では、体の構造によっては、春が訪れるとまた枝が芽生えるの如く、勝手に蘇るんですよ。その場合は、制圧して連れて来て保管するのがいちばんだ」
「なんかそんな神話とか聞いたこともあった気がするな」
ラファエル氏は調査隊の詳細をだいたい決まったようだ。早いな。
「あれこれして、目的はあれの部類を把握して、「食べっちゃだめです」と現地に伝えて、他の情報を集めることだ。以上!」
「それでは、すぐ準備します」
そして秘書の魔術師さんはめっちゃ派手な動きで、本みたいな魔道具を魔力で締めて、会議室を出た。
「続いても大丈夫でしょうか」
「まあ、あの化け物がフィレンツェ辺りまで来ていると、私でも出て、
叩いて捕縛して教皇庁の連絡が戻るまでゆっくり研究でもしたいところですが、この世界は結構広いのです。そして面倒くさい。国は境界も定まっていて、勝手に出入りするのも難しい」
「なるほど」
確かに、なんの連絡もなしに、手から音の雷みたいなものが出せる女が空から飛んで来ると、それもちょっと欲しくない状況だ。システマというものはだいたい地味である。
「なら私はこの次の予定まで時間が余るので、もうちょっと雑談を続きますと」
ギルド長は相当呑気であった。




