土の大魔術師、ウリエル・モルテ
「なら行きますか」
「そうだな」
パンも食べて水も飲んだのだ。朝ご飯はこれで十分。
「こっちの都合に合わせるもんだから、なるべく早めに行きたいんですね」
「そう。遅いよりはぜんぜんいいのだ」
エンブリオは魔術ギルド制服に着替えて(上に被って)わたしもいったんの準備を整えた。
「杖は大丈夫でしょうか」
「どうだろう」
わたしはピンクの衣装は仕方ないから、いったんいつもの通りマントで太く被って隠すことにした。
キャラ濃い過ぎかも知れなかったけど、わたしはこれが唯一の服装で、いつも大門を出入りしてるのだ。別に問題ない筈だ。
「護身用の杖でいいかも」
「ならいいか」
少年がいつも通うギルドに、初めて行ってみるよ。
そして、部屋から出て、錠前閉まって、少年とちょっと歩いた。
ギルドまでの短い道を行って、またギルドの魔力刻印のシステマを通る。
「本当に認識できる」
「いつもの錠前と繋がっているのです」
部屋のものとこれは、全部繋がっている一つのシステマであって、破損するとか面妖なことをされると、繋がっている「風」などのチカラによって、すぐ連絡が来る仕組みなんだ。
これで「エンブリオの魔力がいついつ通ってる」を測って、逆算して、「あっちからここまで数分だったから、寄り道せずにすぐ来たな」などが分かれるらしい。確かに。
ギルド長は中央堂で合う予定だ。落ち着く庭を歩いて、エンブリオは通りすがりの可愛らしい少年とあいさつをした。
眼鏡着けていて、ふつうそうな茶髪の少年である。属性は「土」だな。
「おはようございます!」
「おはよーだよー。今日早くないか」
「ギルド長に部屋の登録とかありまして」
「ほーそうなんだ。まあ別になんもないだろう。ラファエル氏はやさしいもんだ。
では、次の授業で会おう」
「はい、わかりました」
そして少年と別れたのだ。
「土のチカラを強く持つ人だな」
「そうですね。今がウリエル・モルテせんせいですね」
「あれが「土の堂」か???」
めっちゃちっちゃいけど。確かに品が高い気はしたけど、そんなに「これが噂の…!」とか、質量を感じる感覚がぜんぜんしなかった。
今の少年が「元素魔術「土」」書いてるか…あの本を?現代語も学術語も?凄すぎる。
「あの人がこの郷の穀物の生産を、だいぶ責任してるんです」
しかも先食ったパンもこの人が管理する小麦から来たのである。
「そうか。確かに。大変な立場なんだな」
土の魔術と魔力を、術師を全部治める長であると、その仕事は多くて、責任が重大なんだ。
うん…まじか。本当にあの少年がこの世界の魔術師全体の5%で、それ全部をやると…?
そして中央堂に来た。わたしたちは、ここの会議室でギルド長に会うことにしたのである。
「エンブリオ少年ではないか」
「おはようございます」
中央堂の職員が挨拶をした。
「はは。なるほど。なら、家族さんですね。魔術ギルドへようこそ」
「はい、よろしくお願いします」
うう、やはり初めて出会う人は慣れない。
そして、ラファエル氏が来るまで、少し待った。
来たか、化け物め!と、見抜かれて退治されたらめっちゃ嫌だな。でも、ここで認めてもらえないと、もともと現代社会で生きることは難しい。
とか思いながら、
「たぶん大丈夫だと思います」
エンブリオと雑談をしてた。
「そうだったらいいな。あ、そう言えばラファエルギルド長は歳いくつだ?
「轟の固有魔術」も聞いて「今のギルド」も聞いてるけど、個人はあまり知らない」
「確かに17歳です」
「けっこう年取ってるけど、若いな」
それより全然大人の術師もいっぱいいる筈なんだが、なんで彼女が長だ?
強さだけでは制する事は難しくて、もともと権力というものは繊細で、反発するものだ。
既存の魔術師たち、どうなってた?
そして、そろそろ会議室の部屋はおろか、このギルド全体の主人が来るべきであった。




