四属性の色
ふだん「火」は赤かったり白かったり黄色ぽかったりするけど、エーテルは術が施される前に定義される過程なので、明確な意図と色を持ってる。火のエーテル、フラマはそれが「赤」だ。
「うむ。火のエーテルはそんな色なんだ。いいものを見た」
「四属性の中で一番得意な方ですね。ミカエル教授やせんせいたちには全然及ばないけど、長期的に一人前にならなきゃだ」
そう言って、エンブリオは赤色を自分の気力に還元して、回収できない残りの分量は空中に溶けて散る。
「ちなみに他の「水」「土」「風」はどうなんだ」
「そうですね。「青色」「土色」「空色」なんです」
海と地と空だな。
「それっぽいな。対象と廻が明確に連想できるようになってる」
「そうですね。基本的に魔術は目で見て触れるものですから」
海と湖の青は空の青とちょっと違って、そこで海のチカラや空のチカラが出て来るのかも知れないのだ。だから、同じ感じの蒼い色だとしても、お水と風は違うから。
もしかすると、わたし、クララの「エーテルの素質の無さ」は、それ自体が眼力や視力と繋がってるものだったかも知れないな。見えないから、素質がなかったのだ。
「やはりマギアに視力は大事なのか」
「はい。だから年取って目わるくなると、自分の経験で埋めるとしても、見て触れる能力は仕方なく落ちますね。それを克服するために着けるのが眼鏡」
「あ!そうだった」
「なんですか?」
「先、「木」のエーテルに慣れている、眼鏡着けてる男を見たよ」
「男…?」
スルーする。
「筋トレしようと思って、ちょっと遅く出てきたんだけど、大門で見たんだ」
「というか、「木属性」!?
ふむ、フィレンツェには人くっそ多いから、色々の職人や専門家が居ると思いますが、それは珍しいですね」
しかもその人、たぶん「非凡」だったけど。それも珍しいか。流石にそうだな。
「属性というものはきみの「火」みたいに、適性をたくさん持ってても、その中でより熟してるほど出て来るもんなんだよね?」
「そうです。もしおれがなんかギルド長に拾われず、色んな運命の中で鉱山とかで働いたら、土色のクロマを強く纏うようになるでしょう。そんな感じですね」
「うん。だからわたしはそのものはドルイドでもないのに、誠に「木属性」のなにかのエーテルの術に時間を使っているんだ。珍しいな、と思った」
「男子のドルイドも居たりしませんか」
「いる。でも見ればなんとなくわかるから」
「確かに」
「だから「へーやはりフィレンツェには人が多すぎて、魔力生物の類のものも働いているんだ」と思ったけど」
「魔力生物ですか!?」
「たぶんね。まあ、それはそれとして、その人は眼鏡が印象的だったと思って、やはり木の術にも視力は大事なんだ、と思って今の話題で言いたくなったんだよね」
「おれは聞いた覚えがないです」
「ラファエラ氏の広すぎる人脈の知り合いじゃあないかな」
「確かに…ラファエルギルド長は珍しい知り合いが多いと聞きますが…」
あ、ラファエルか。そうなんだ。まずい!
「ラファエル氏は今わたしが雑に考えるには、魔力の目的性では「葉っぱが飛ぶ」のが近くて、組織の長としては「木材の提供」などに関わると思うがね」
「なら、力仕事の方で木のものに通っていて、建築とかする人?」
「そそ。わたしはそう思った。樵で家建てる人の中で、超強いバージョンなのだ」
「あり得る」




