心の言葉を被ること
「その、エーテルを被るとかはどういう仕組みですか」
エンブリオ少年は、もしかすると復活した「深紅の悪魔」が自分を狙う事が、稀ではあってもまた発生するかもしれないから、その仕組みとかを知りたがってる。
「そうだな。わたしはわたしがその生物だと言う記憶があるから、逆に説明が難しいんだけど、「話す威圧で埃が飛ぶ、きみが見せた「風」のエーテルの操作と似ている何か」だよ。
たぶん属性などは持たない」
自分の生き物としての性質…「種」や「性」は誰よりいちばん知るものだ。でも、説明は難しかったりする。知っても、説明は難しい。両方が有り得るのだ。
人の子、人間の体を言うと、わたしは今この目の前の少年に恋愛感情みたいな何かを感じてるけど、これは「深紅の悪魔」にとっては話にならない、なぞなぞのよくわからないものだ。
そして、「悪魔」としては、胞子を伸ばして次の代を作る、生き物としての仕組みを知ってるけど、クララの心ではその性質は理解ができない。
感情を感じる事、出来る事と出来ない事、これから何をするかに関する事などが、違う種族は違うからだ。だから、わたしは「深紅の悪魔としての自然の仕組み」を知ってるとしても、それが人の言語で上手く説明ができない。難しい事だ。
「呪文とイドとスフィアを感じる心、目的性などが心の言葉によって吹き飛ばされるという、この星のものではないものらしく、何が何だかわからない能力ですね」
エセンピは呪文の事だ。術の例になるものを喋るから例なのだ。
「そう。具体的な仕組みはわからないけど、「布で水を拭くとその表面では水が利用できない」、「大火事に燃料をぜんぶ使い切ると、小さい火は起こさない」、「暴風の前で息の勢いはどうでもよくなる」、「落とした土が何から何までだったか、区分ができない」みたいな何かが、マギアの心の言葉で現れる」
「ふむ」
「これは、魔術師が平凡の体を持ちながら非凡のチカラを使う存在だから発生するのだ。そして、そうではない人も心に基づいて行動するのは同じだから、まあ、「エーテルの動き」も見えないまま、自分が何をされるのかも分からないままで、ただやられるだけだ」
「人は言葉を失うとなにもできないですね。そしてそれが心で、平凡の日常生活です」
「そう。人は心の言葉を失うと、食べるのも、愛するのも、どっかに行ったり何かを行ったり、ぜんぶできないから」
「でも、心の言葉がどうでもいい方の生物には弱いんですね」
「回転が速いな。だからわたしはきみが好きなのだ」
「急になんですか」
「別に。そう、ただ武力が「甲殻とハサミ以上」である生き物は普通に「悪魔」に勝てるという事だ」
「そうですね。どうぶつはそんなに「あれあれしよう」と思ってする感じではないのです。人の心がややこしいです」
「うん。かんたんだから」
「そう言えばドルイドさんには別に何もしてなかった気がしますが」
「それはいったん、あれがきみを無力化するために心の言葉を集中していたからであって」
「そうですか。一回一人みたいな感じですね」
「集中してやるらしい。わたしは「悪魔」としても理論しか知らないけど」
「そうなんだ」
もともとそうではなかったら「古代魔術」を学ばなかったのだ。
「そして、わたしに対象を転換したとしても、わたしはこのバラバラの体と心の仕組みで、「深紅の悪魔にだけは」無力化されないと感じる」
「また便利主義な話を」
「なんだと」
「そうでしょう。人だから人にはやられない、みたいな言葉はおかしいでしょう。「深紅の悪魔だから深紅の悪魔にやられない」はどうかと感じただけです」
「ああ。いや、違うのだ。「深紅の悪魔でもないから」だな。わたしは今「星の名前」で縛っていて、本当に人でも深紅の悪魔でもない存在だから」
「でも、ドルイドさんが人であると感じて話す限り、その呪術のイドの仕組みは明確に一人なんです」
「うん、それはただしいけど、「悪魔」から見て「どういう心の言葉の方を潰すか」が、分からないのだ。混ざってるから、そしてイドは一人だとしても、ターゲットとしてはバラバラなんだ」
「対象として見るとバラバラではあるか」
「そうだったろう。「花びら」触れただろう」
「確かに」




