少年が帰った。
「ただいま」
「何者だ!」
もちろん部屋の持ち主である、魔術ギルドのエンブリオだ。
「おれですよおれ、「火」の見習い魔術師、エンブリオです」
「お帰りなさい」
「はい、「火」の理論授業と実験が終わって戻りました。」
なんかわたしが部屋入った時もそうだったけど、魔力の働きがあって、門の魔力的な回路が掛かって、固く閉ざされる。
ふん、この部分も「土」の魔術か?固くする部分。
「わたしは朝の筋トレやって、「元素魔術「土」」の勉強をしていたところだよ。あ、パンは食った」
わたしはまだ読めねえ表紙を見せた。まあ、正直流石にこれは<Magia Elementale: Terra>なんだろうけど。
「ほう、土を。それは素晴らしいことだ」
「わたしは今朝からドルイドでは無いけど、ドルイドだから、いざとなった時は使うと思う、その呪術の勉強になると思ったよ。わたしに「土」含め色々の才はないけれど、この本にはドルイドの呪術と「目的性」は似たようなものがあるのだ」
「確かに。両方畑仕事に関する術です」
「まだきみが教えてくれないと文字も呪文も先絵も一もわからないけどね」
「なら何を見たんですか」
「絵図を見たな」
「確かに」
「目にゴミが入って困惑する人の絵が興味深くて、たぶんこの世界の亡霊のゴミ捨てみたいな面妖な仕組みとかも考えてた。まあ、それはよい。きみは、なら、今日はその「憧れのせんせい」の授業を聞いたか」
「そうですね。火の大魔術師、ミカエル・グエラ教授の授業と、その後は実験でしたね」
「ほお、名前が戦争なのか」
「そうです。普通にグエラという家で生まれましたね」
そしてこのものを含めていっぱいの人が彼のお蔭で、戦場で命を救われ、それに負けないくらいの敵兵が消し炭になって命を失ったという事だ。
「普通の苗字なんだ」
「まあ」
「その教授は強いのか?」
「そうですね。持ってる魔力の量が、魔術ギルドに所属する術師ぜんたいを合わせて100だというと、その人一人が5くらいです」
「へえ」
「まあ、100の5と言えば「なんか微妙かな」とか曖昧な気分になるかも知れないけど、魔術ギルドの魔術師はけっこう多いのです」
「うん。わたしも「そう言えば」と気付いてちょっと時差もって驚いてるところだ」
このヨーロッパ全体の「現代魔術師」全員の5%なのだ。
「属性はもちろん「火」を極端的に極めていて。その人今13歳なんですが。もう本もいっぱい書いてるのです。これ教授が書いたもの」
彼は<Magia Elementale: なんとか>の本を拾ってわたしに見せた。あれが火か。
「うん、本当に魔術ギルドのものは大変だな。戦争にも出て、生徒も学ばせて、本も書くとか」
「そうです。めっちゃ大変です。そしてギルドの経営と、使った経費と、「堂」の人力の管理は流石に職員がいるけどその最終承認と、テストの点数ももちろん助手がいるけど、確認しないといけません」
「体6本くらい要るな」
「たぶんそうですね。だから人呼んでその人自体が「火の堂」なんです。
おれもいつかあの悲しい運命になるかも知れないけど、今は天才少年を楽しんでるところです」
「そうだな。なんか品が違う感じあるわ」
「うん。人を焼き過ぎてちょっと性格があれだけど、基本的に明晰で優しい人なんです」
「なるほど」
人の子の心と気持ちで、しかもマギアは自分の己と廻で働くものだから。それは普通に大変なもんだ。




