土は確かに草木が育つ糧だ
その本に載ってる魔術は色々だ。「人の目にゴミを入れる術」「土台を作る術」「畑から石を取り除く術」「建物を固くする術」「地面の遠い部分を弾ける術」
「意外と利便そうな魔術が多いです」
「確かに実用的だな…」
もともと現代魔術というのは、王様と軍隊と社会の金の都合で、エーテルの才があるものが就職して、技術職として待遇よく働くために、まあ、「互い魔術師として頑張っていきましょう」という方向性で開発されたものだから、それもそうかも知れない。
わたしみたいに、「この主が仰る、夢の国とやらは、本当にどんな構造なのかな???」とか思う暇がないのだ。まあ、ちょっとはあるかも知れないけれど、いったんこの本含めていっぱしの魔術の呪文、先絵、素材の色々。全部学んで、術師として上手くやってく方法も聞いて、魔術ギルドの一員として登録して(わたしも一応今日からこのシステマに入ったところであるが)……ややこしい世の中だぜ。
やはり安定的な社会構造に入る事はできないとしても、わたしはドルイドの生き方も普通に好きなのだ。それが性に合うのだ。
「なんか「土」と言ったら、この広大な大地の…神話の女神さまを呼び出すとか、できると思ったんですが」
「それは社会構造的に普通にやばくないか」
「それはそうですが」
流石に神様はやばいか。ただ「白神女」は大昔からそう言われたから、言語の経路依存性という性質があってね。「でも、むかしからあの人は「白神女」だったんだぞ」「そうですが…!!!」みてえな過程で呼ばれただけで、普通に神様だ天使さんだ、雑に言うと大変になるのだ。
「型物理性のデメリットということ」
「適当に言わないでください…」
まったく意味不明だ。
「まま。とりあえずおまえの古代魔術「木」がこの社会ではドルイドの呪術で、「ムー大陸の膨大なエーテル」の前提の術だから、それをこのエーテル濃度で使おうとするのがおまえを「削る」ことになったのもわかった今は」
「そうだったんですか?」
「おまえは今までの話で何を学んだ?」
「なんか…お日様の熱がまっすぐな事?」
「でもそれはちゃんと結構いちばん大事なことだな…」
「そうでしょう。まあ、もっと言うと、見ていたドルイドのばあちゃんのドルイドの呪術は、けっこう再現できます。この土地の植物の知識があるから。でも、古代魔術を素に使うのは削る。そうです。」
「うん。ちょっとあれな今、現代魔術の理を学んでいくのは良い事だ」
「これは「再回」とちょっと似てるかも知れない。なんか壁に土をまた付与して固くするらしいですぞ」
「上に塗って直す、整えるという意味では確かに。」
「ふうん。逆の逆に、属性の方向性により術師と対象と位置と素材が違ってずれているとしても、応用できる物語性はちゃんとあるらしい」
その瞬間、魔力が変化し、門が開かれる音がした。




