その世界が前提になってるから
「そうだ。この世界のものから見るとずいぶん変な世界なのだ。
根本的にこの世界の生き物は「霊属性」の性質ではない。食べて大きくなって、時間の流れも正順。時に従い、生まれて老いて、目では色を取り次の代を残す。その長さはここの基準で1年、5年、長くて30年」
時間の流れが正順というのは序列のことだ。
術の結果で、世の順番で、まあ普通の人生だ。
命は、糸みたいに巻き戻せるものではないからね。
草木に比べると、次の代ではない同じ植物が、枯れ木と種と果実と花から若木まで戻るのはできないみたいに。命の順番、そういうこと。
「そうですね」
生態系なのだ。
「それが普通の、そんなカタチの社会で世界なのに、その知性体の成れの果ての意思だけが灰の霧みたいにひょいと浮いて、残ったものがこんなにも多く、世界から離れていた上空ぜんたいに沢山漂っている。」
「ふむふむ」
「それも神話生物理学てきに用語があるが、まあ、少しずつ複雑度が上がっていくということで、減る動きがないよ。
もとはこの土地のものの常識で考えると、水と土が泥水に混ざる状態みたいなものだけど。」
ブイオ様は祈的に「兵士の国」の常識で考えるので、粘土がものごとの基本である。
「生き物の生前の思いと風が混ざったものでござりますか」
「左様でござる。そして、その泥水。泥水は待つと、相対的に清水の層と、粘土の層が区分されるのだ。それも普通にそう。
だいたいのエーテルというのは、星と世界に関係なく、属性と傾向に関係なく、普通にそうなのだ。
それは「この星の霊属性」も同じ。なのに、わたくしの感覚ではそれが再活用されるのもあまり少なくて、今みたいにわたくしがいっぱい接せる、しかも少しずつ増えてるのだ。普通ではなかろう」
「ふむふむ。再活用とはなんなんですか?」
「生まれ変わりの事だ」
「なんでそれが生まれ変わりになるのですか」
「亡霊がまた人になるのだから?」
確かに。生き物の生前の思いがまた活かした形に使われるということ?
霊のエーテルが人の体から離れることと着くことを考えると、わたしの「桜のドルイドの呪術」、「再回」みたいなものかも知れねえ。
まあ、もともと、「クララの意思が残る霊術師」が「桜のドルイド、ステラ・ロサ」ちゃんになったのとも似てるな。
「つまり、わたしですが」
「まあ、そうかもしれない。今喋ってるその「生まれ変わる」過程は、その灰の霧みたいに浮いていた「霊属性のエーテル」の一部が、新しい人の子が生まれる際に材料として使われるのだから。
でも、それは「泥水の層の分離」を待つみたいに、めっちゃゆっくりと「自然に」落ちるものだから。あんましおまえの「星化」みたいに素早くてダイナミックなものが期待できるのではない」
完全に理解した。
「畑が使えなくなった時の事と似てますね」
「そうか?」
「小麦などを育った畑は、エーテルも劣って、そのゴミと石と雑草で使えなくなるのです。それが複雑度が上がってる状態。
そのシステマに呪術…古代魔術「木」の施しや、普通に石を捨てて雑草を千切る、牛さんのフンを混ぜて、灰を使うなどのお仕事を与えると、畑の複雑度が下がります。でも、そういう作業をしなくても、ながああああああく放置すると、草と雨とお日様の働きで、いずれか穀物が育てられる環境にもどる。もちろん、それから土を畑にする作業も また要りますが」
「そそ、そんな感じ」
「ふうん、ただ75000年は短かった、だけかもしれません」
泥水が下がってる最中なのだ。
「でも、動きが「増える」方向なんだぞ」
ほなちょっと違うか。
「なら、それこそ普通に世界の人口が増えて、死ぬ人が生まれ変わる人より多いからなのではないでしょうか」
「あり得るな」
「普通ですね」
「普通か…」
普通の世界だったかも知れねえ。




