くっそデカい狼のこと
「だから、しばらくはこの国の周りで生活するわ」
少年はエーテルの操作を試すことをやめて、何かを考えるようだった。
「なるほど。ステラさんはドルイドとして知識も持っていて、狼さんという相棒もいます。
あの深紅の悪魔のやつらに負ける事はないでしょう」
そのドルイドの知識とやらも、得たばかりだけどね。
「うん。一応助けてくれない感じだけど。」
「確かに。それはなんのためです?」
なにもかもが急だから、一応わたしも喋りながら整理する事にした。
「あれはこの星のものでは無くて、遥か遠い空から来た神様みたいなもんなんだ。」
「ほー」
「だから、わたしの友達でもないし、
かの「白神女」の相棒だったと言われる白い牛の神獣みたいな感じではなくて、
わたしが自分の力で強くなる事を待つ、観察者のような存在なんだ」
少年はなにかに納得したようで、
「そうですね。
魔法生物は元々、長とエーテルの勢いが繋がっていて、気で意思疎通する。
それは「元素魔術」の召喚技で呼び出した使い魔も同じく
ドルイドさんたちがよく仲間にする鹿や熊、鷹などの、
元々魔力適正が高い動物も同じだ」
「そうだな」
熊が仲間になるのか、それは凄い事だ
わたしは知ったフリをした。
「狼や梟なども、勿論その一部なんだけど、
ステラさんの黒い狼さんは全然そんな感じじゃないですね。
力が繋がってもないし、命令通り行動することもない」
まあどこまで信じていいか、怪しい話なんだけど
「どうやら、あれは狼の星から来てるらしいのだ」
「狼の星…占星術ですか。
残念ながら、おれはまだ星座などは詳しくなくて」
「占星術?」
「星の動きを見て、自然の大きなエーテルの流れを占ったり、人の運、定めなどを当てる学問です。魔術ギルドでも結構研究しています。
確かに空から来たとすると、昨年、凄かった流れ星の一部が、狼さんだったんですね」
「昨年?今年じゃないのか」
「今日、1月1日です」
「なるほど」
知らぬうちに年が過ぎちゃったぜ。
「隕石、空から来たという岩の中には、
珍しい金属があるとされて、それを隕鉄といいます。
魔力素材として価値が高くて、凄い武具にもなれる。」
そこで、エンブリオ少年は急に「騎士小説」の主人公の鎧と剣の話をし始めて、何分かを合わせた。
「確かにあれの体と性質が似ている」
「強く当たれると、その衝撃に応じて更に硬くなる仕組みなのではないかと、おれは思っていたけれど。全く同じだ」
「そうか。今まで、もしや、でたらめかも知れないと思ったけど、空から来ていたのは事実のようだ」




