粘土でできた人
「ふうん。「杖が喋るとか人の姿を取る」ことになったら、それは「ステラ・ロサ」なのかな」
わたしはもちろん、「狼の星」たるわたしのあるじ、ブイオさまも一端おしゃべりを始めるとずっと考えちゃうので、続きますと。
「そうですね。いまの「不変なわたし」はここのこの体の人の子の大人の形だと思ってますが。特に服も脱げれない一体型だとか、ないから、「ステラ・ロサが思うステラ・ロサ」は体までに定義されてるかも知れない」
「ふむふむ」
「最小、わたしの「肌を直そう」「廻の中心として認識する」「ブイオ様の魔力の勢いを貰う境界」として定義されてますが、服も杖も、そして今はわたし色に染まっているカバンまでも、「座標の衛星」としての範囲なんですよね」
それは実はエーテル理学に教養がある読者ならすぐわかるが、
「そうだ。今わたくしが入ってるマントは「ステラ・ロサ」の一部。だから入れているのだ」
もともとこの影の狼がこの世界のどこの影にも入れる仕組みになってないのだ。
星には星の理があって、それは人の場合ただの…息をして、食べて、飲んで、寝て、偶には体を洗ったりする、そんな普通でかんたんなものだけど、
一々が実は「草が違う」「土が違う」「水が違う」「世界の色が違う」のだ。違う星は。
そして、違う奴はいったん適応する事が厳しくて、適応しようとしても「もともとのもの」と上手くいけるのか。これが実は難しい事だが…「同じものを食べるやつ」も「食べようと襲う奴」は排除するのがどうぜんだ。(言うまでも無く、「深紅の悪魔」は襲って食べる方である)
そういう色々の特性がエーテルだ。環境で、気候で、草と鹿と海と石と粘土で―
属性だ。属性が慣れてない星は、慣れてないから難しい。
だから、ブイオさまはこの星の狼の姿を取る。それがこの星で生きれる姿だから。そして、それを補助するわたしを作ったわけだ。
星のワンちゃんで、ここの言葉で存在を縛る。そんな感じ。
真、「桜のドルイド」になっちゃったけど。
「属性はともかく、星のエーテルというのは本当にただの違う星からのエーテルに過ぎないから」
「そうだな」
ちなみにわたしの白いこれらは、全部「木」属性。
「これも自分が含めて「ステラ・ロサ」だと、自分で少し認識した方がいいですね」
杖を引いた。
ルビーの丸い宝石と黄金の飾り、白い木質の棒で成っている魔道具だけど、ぜんぶわたしの体と同じもので姿形を変えたものなのだ。
玉から「花びら」をいっぱい引いて丸くしてみる。
「これは基本的にはおまえの体から削ったものなのだ。「杖」を削ったわけではない」
「そうですよね」
今は、つまり「わたし」と「杖」と「めっちゃ引いたエーテル」の三つになっていて、
肌の質感を塗って人の姿にしてるのがわたしで、それはただそうだから人になれるのだから、わたしはけっこう完璧に人だ。
そして、この棒もけっこう完璧に杖なのだ。特に宝石と金属が偽物なわけではない。
ぜんぶで一つの対象になってるから、「宝石だけ取って売りましょう」みたいな真似はできないけれど、この杖についている以上、これはルビーなのだ。
コンコン。宝石を弾いてみる。ちゃんと石なのだ。
そして、エーテルの塊。
「うん、やはり混同するのだ」
「そうですね。無理です」
丸い花びらの塊は、ただ自分の魔術のリソースに感じれて、そのぶん体のチカラが弱まってる。
ちっちゃいステラ・ロサさんを作って喋るとか、出来そうにない。
最小、今はそう感じれてないのだ。
「今の体が無理になった時に、「脱出」として素早くこのような丸で目覚めたりできないのかな」
「そうです。「二人」は無理だとしても、「一人から一人」はどうかな。わたしもちょっと考えましたけど、この丸からわたしがもう一人生えてそれからのわたしとして起動・作動するとか、想像ができないのです。「兵士の国」の人よりぜんぜん想像力足りませんね」
「もともと「深紅の悪魔」としては自然な方法に近いのにな」
「そうですね」
この方法は新しい代に継ぐための「胞子」とほぼ同じだ。
だけどぜんぜんピンと来ないのだ。
まあ、クララちゃんは人間だね。




