元素魔術「土」を学ぼう
最近の過去、「ステラ・ロサになるまで」の記憶を無意識的に覚えながら、桜のドルイドは読めない本をただ魔法陣と絵を見ながらページをめくる。
そこはエンブリオ少年の家、フィレンツェだ。
新しい知識を得る過程は興味深くて怠くて頭が重くなり、とても爽快だ。
それの中でいい事があったら良くて、ぜんぜん良くないと、まあ、ちょっと合わない方ですね。
とにかく教育というものは知識の複製を目的にしている。頭に入れるといいのだ。
文字の意味はおろか、音もわからないけど。
「やはりまだ「読める」までは至りません。一応知らない語彙があっても、初めて読める経験が大事なのに」
「実際に喋るのを見て調合したら、一発じゃあないだろうか」
「それはそうだけど。わたしは一刻も早く言葉が上手くなったらいいな、と思うけど、少年は魔術ギルドの勉強で忙しいから」
「まあ、どうやら時間は十分にあるらしいのだ。
一応、この本もいいけど、他の本も読んでみるのがどうだ」
「せっかくだから、全部見たいと思って」
土の魔術だろう。「相手の目にゴミを入れる術」を含めて、「土台を作る」「畑の石を整理する」「土壌を整える」などの状況の絵が描かれているのだ。
まあ、本を読むのがここではじめてのわたしだ。本の絵を見るのもはじめてである。
「それもよかろう」
「実は、他の術より土の方がもっと近いからですね。畑仕事に関わるから」
「ドルイドの呪術と、元素魔術「土」は似たような仕事をする部類なのか?」
「はい。昨日喋ったと思うけど、四属性は「ものを燃やす」「水を引く」「地面を動かす」「風を触る」感じで、「植物の生命力を操る」感じが基本になってる木属性はこのどっちにも入りませんが」
「なんか他より長いな」
「そうですね。たぶん「シンプルな方がわかりやすい」も、ドルイド志望より魔術師志望が多い理由の一つかも知れません。一般的にわかりやすいと感じるから、そのぶん自分の属性の素質をよく発達させる」
「ふむふむ」
「まあ、確かに「深紅の悪魔」の記憶もちょっと得て、古代魔術の知識も少し慣れている今は、並みのドルイドさんより効率よく術を施す事ができると思うけど。基本的にはドルイドの呪術は難しいんですね。植物を色々知らないといけないし、今のように、世界ぜんたいが眠ってる季節には世からなくなってる感覚もします」
「他の属性も同じじゃないか」
「ふーん、そうか。そうかも知れません。火はずっと雪に濡れてるとか、水は凍ってるから利用できない。土は固くて風は冷たい。とりあえず人が生きずらい季節ですから。冬は」
わたしも一回、真冬の風邪引いて死んだのだ。というか、1ヶ月くらい前のことである。
「植物も物語性を持つ素材はほぼ無いけど、木自体は残ってる」
そしてその木材を樵が加工してくれたおかげで、わたしは10年近く生きることができた。
「正しいです」




