そして75000年ぶりに手足を動くのであった
それは特に素晴らしい呪術とかではなくて、ただの方法だった。
[クララの心と体を動く方法]
それが、「呪い」として死者である彼女を動かすために働いたわたしの粒が(それは勝手に働く。動く動力なんてわたしには壱も無い)彼女の体から読み取った、いちばん早く出た情報だった。
基本的に、死者を動くにはその人の子の情報が必要である。どうぜんだ。足が無いとか、随分ありえる話じゃないか?
まあまあ。つまり、これは「優先順位がいちばん高い記憶」なのだ。
[クララの心と体を動く方法]
前書き:この体はくっそ弱くて、自分は自分の心が怪しい。だから、誰でもこの体を動けるように(そして、もちろんこんな体を使う別人とかがいるはずも無いのだ。怪談でもあるまい)このマニュアルを作ったのである。
頭という物はどんな構造で感じるものか。脊椎とはどんな器官か。
そうだった。脊椎から上が頭で、肩と、下は股関節で分けられて、それが腕と足になる。
甲殻の代わりに皮膚があって、手足は2本ずつ。
運動能力に必要だから、肘と膝で2パートが発達した。基本は羽根はなくて2足歩行。
指指は5本が付けている。凄い偶然だよな。
知ってる内容は適当に飛ばした。ふむふむ。
そして、目、耳、鼻、肌を使って(舌は?)周りの情報が得られますと。
記憶の認識と管理は、■■■とほぼ同じだ。(だから、■■■は知性体のコントロールができるのだ)
さすがにこの娘は異常である。冷静過ぎたのだ。
どの知性体が「自分の体を動かす方法」とか24時間考えるだろうか。「意識が覚めたらすぐ出る情報」がこうであるかな。
普通なら、
体が動くと、それをただ動くといい。動かないと、動く努力をするし、ただ病むしかない。
別にこんなには考えないのだ。なのに、「この体について考えたもの」とかをずっと、
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
鮮明にー
思って、残してる。
ふん、そうか。この少女は、エーテルの知識はあっても(なんかドルイドというものがいるらしい)、自分は使えないので、自分なりにできる何かの構造を精一杯考えたのだ。だからこれができた。
もちろんそれはこのものが魔力の素質も気力の素質もなくて
適性ある属性など一つもない(最小、「木」では無いのだ。わたしはなんはそれは区分できる)
ただただ作った妄想の虚言だ。狂言である。
魔術師になれない。ドルイドに憧れる。できるお仕事は何もない。
(ふん、どっかの深紅の悪魔も似たようなもんだ)
それでも、動ける時は、自分の体は動けるから、ずっと自分の体から離れられない何年を、「廻」とか「呪術の順番」とかドルイドから聞いた言葉から想像しながら
自分の体と心に基づいて解釈したのだ。
これは、まあ、親切すぎる。わたしみたいなバカでも動けるだろう。
はーは。動ける。
そして、わたしはクララになったのだ。
【夜ノ山道】
「あれこれして、うん?おかしいな…痛くない」
そこはもちろんうちの家である。
痒くない。辛くない。辛くない。いつもの床だが、普通に(つまりふつうではなく)起きれて、頭の蟲の騒めきも感じなくて(いや、ちょっとはあるな)
先まで五月蠅かった村は凄く静かだ。変だ。
「なになにして…「まわりの感覚を」「内に」」
そして、それは、なんかのチカラになって、その村全体の面妖なチカラが全部彼女の心体に収納されることになった。
「動ける!!!」
わたしは基本的にいつになっても、「動けるようになったら村を出る」という思いでいっぱいだったので、変な音を出して、裸足で歩いた。
村は小さくて、牛さんはふつうにいるか?なぜか、わからない。
見えなくて、感じれなくて、思えない。
「さようなら」
そうだ。わたしはクララ。
「廻」は家の外。
「肌」は痒くない。
「憶」は、倒れると周りに助けを求める事。
「筋」体にチカラが入れて、
「経」腰と下半身の感覚がある。
「聴」蟲の騒めきがほぼ感じれて無くて、
「的」今のやるべき事は、村を出て!新しい経験をする事だ!
「休」休めなくてもいい。
「立」立場は村長の娘。弟が一人。狩り事とか知りません。すみません。
「楽」楽だった覚えはそんなに無くて、
「息」息が苦しくない!
「散」気を散らかしても夜が見える!
「視」めっちゃ見えるのだが。(そろそろちょっとおかしいのである)
「歩」とりあえず、村を出ることにしたのだ。
「ふん、2年間の鍛錬がこんなに爽快だったとは。やはりわしは天才だったか」
12345、6789〇、肩と手首を「上、下、左、右」「内、外、巻く、解く」
「場」今までのわたしの世界。
「高」降りた事ないけど、山の中間。
「全」(もしチェック忘れたものがないのか確認するのは大事だ。いつ死ぬかわからないのだ)
「我」うん、確かにこれは、わたしの心と体なり!
さようなら、わたしの世界。
そして、わたし、フィレンツェの田舎娘のくららは、夜がめっちゃ見やすいので、いつもの父と同僚のおじさんたちが使う道を見分けて、山を下りた。
おりたと言っても、山自体が高いとかではなくて、森があるのだ。
枝!
「やはり枝が無いとな」
ふん、これで完全に無敵状態。




