飛べる術
「え、そう言えばそうだった。「賢者の国」って、飛べました?」
「うん。普通にわたしは、わたしの記憶の「深紅の悪魔」は飛べたよ。
あいつら、羽あるだろう。それで「風」のエーテルを掴んで、押すと、」
「泳ぎができるように?」
「うん。わたしはろくに泳いだことなど一回もないけど」
「そうですか」
「まま。そしてちょっと速まると甲殻がケガするから、あいつらの固有のエーテルでちょっと防いだり。それは「馬車の周りに布を付ける」と同じことだ」
わたしは仕草で「木」属性のエーテルを出して、両手の廻に飛ばして、その姿を少年に見せる。
「なんか急に上手くなってません?」
「もう一匹の記憶を吸ったのさ」
「なるほど」
「まあ、自分もよく知らなかったし、初対面のものには言える言葉ではないから」
「そうですね。広場に直行です」
「う、いやだな」
「いやですね」
ここはイケてる国だけど、やはり人の子は、人の子の大人も人の子の老人も人の子の子も人の死の物語に目と耳が言っちゃう。虎視眈眈と火刑を見に集まるのだ。
「母が好きだった」
「なんか、傾向がありますね。好きな人、苦手な人、どっちでもないけど、自分が焼かれることを避けることだけを「そんなの、誰も全力で避けたがるわ」とか言われる人のその口に」
「その人の考えと言葉に使われるそのリソースの分も、ぜんぶ「焼かれたくなくて考える事」にぜんぶ入れる人」
「うむ、ドルイドさんはおれの一生ものだ」
「そうかも知れねえ」
パパッと得意げにジェスチャーを取った。
「そうです。そんな、周りに溶けて混ざる事、それが上手くて、それ自体が目的性に近いものは、まあ、半端物になりがちだけど」
「はは…」
「はは…」
「うん。でも、なぜかこの世にはそんなものは「魔力」が見えて使えたりする素質があるからな。それを活かして魔術師も居て、ドルイドのばあちゃんも居て。そうなんだよな」
「うん、本当にありがたい事です…」
「まあ、わたしは一回死ぬ前は素質無かったけど。」
「そう言えば。」
「ドルイドのばあちゃんに言われた。「木」の魔力適性、無いって。だから、こんな感じにドルイドの類になってから、「人が「木」属性の魔力の才があるか否か」を見ることはできるくなった」
「なるほど」
「たぶん、わたしの村は「灰色の呪い」で殲滅して、病弱な9才の女の子だったわたしは、誕生日になる夜に、命が体からさよならバイバイを告げて。よよよ。
その後はなんか良くわからないけど、亡霊みたいな感じになって、あの聖堂で狼さまに出会い、この体になったという事だ」
「あの「聖堂」ですか。そう言えば言いましたっけ」
「言ったかも知れない」
そこで少年は違和感を感じた。
「……?」
「はは」
「ドルイドさん、今何歳なんですか」
「たぶん何万年は軽く超えてるね」
「10才だったのか!!」
「これだから頭がいいものは大好きだ」
わたしは自分の眉毛を触った。




