表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/631

雑花厳浄

その時、(あお)い鴨が一匹こっちに飛んでた。


「お、時間か」


「それはなんですか」


鳥の使い魔を操ることなど元素魔術では基礎のものだ。鴨は水玉に姿を変えて、彼女の仕草(ジェスチャー)に従って、一回回って円盤になった。


新技術(アルス・ノヴァ)だ」


そして彼女は円盤の中央をタッチすると、


「こうすればいいんだな。えーと、こちらラファエルだ。言う事無いな。そしてこの部分を押すと」


という、魔術ギルドの長、轟のラファエルの音が再生される。


「なるほど、水面に話をかけると揺れる事を逆再生する仕組みだ」


「すごいだろ」


「なんかいらない部分も刻まれた気がしますけど、それは使う人が慣れればいい。便利ですね」


おれらは頭が良すぎるので「使い物にならないですね」みたいなギスギスの会話ができない。それはなんか、仕方ないものなのだ。


使い魔が直接飛んで来る必要があるから、(はと)と何が違うのかちょっと迷うけど、❶術師の思うままに動ける❷気の通路と違って、周りのものも聞ける。❸手紙を書く必要がない

などの利便な特性を持つ魔術だ。


「名はなんといいますか?」


「まだ付けてないな


ふむ


「水玉言葉」」


「そのままですね」


「エセンピはシンプルで、言葉の調合は特性を反映する、わかりやすく」


「うむ、お見事です」


彼女はちょっと気分が良さそうだった。


「ちょうど時間を潰す相手が必要だったところで、きみが通っていたということよ。

眠いのに悪かったな」


「ぜんぜんいいです。いいものが見れた」


「そう言われると嬉しい」


「それでは、また会いましょう」


「うん」


そして、「仕草(ジェスチャー)の省略」、「操作のわかりやすさ」などの改善点を悩むガブリエル教授を後にして、おれは流石に眠かったので、元の予定通りに家に戻ることにした。


春は遠く、所所(ところどころ)に粉雪が見える魔術ギルドの庭を通り、正門を通り(魔術記録が残る。)いつものように臭う道を通って、普通の自分の家にたどり着いた。


「お」


そして、(かど)の前には、ダークグリーンのマントを被った女性が一人。


「こんにちは」


彼女の名はステラ・ロサ、桜のドルイドであり、「深紅(しんく)悪魔(あくま)」から人を守る使命(しめい)を持つものだ。自分によると不器用(ぶきよう)だらしい。


「お元気ですか」


「うん、もう一匹倒した」


「へー

とりあえず、中へどうぞ」


「失礼します」


くっそ眠かったけれど、命の恩人に会えてうれしい。何日すぎてないけど。


ーーー

室内

ーーー


「服はそんな感じなんだ」


「はい、一応「魔術(まじゅつ)ギルド制服(せいふく)」ですね」


おれはマントや上着を整理して、本も机に適当に置く。


「そんなに用があって訪れたと言うと、事実だけど、ただ「調子はどうだ」のついでの事だ」


「おかげさまで元気です」


と、何日もろくに寝てないおれが言うと、


「ふふん。眠いんだね。いいもんを考えたんだ。いいかな」


と、長い指を張って右手を見せる。


「興味深いですね」


彼女の指先に「木」のエーテルの花びらが出て、


「爽やか、軽さ、安らかに、「爽快(リフレッシュ)!」」


おれに飛ばすと、当たりそうで当たらない感じで花びらは(こな)になった。


「うっ」


そして、花のような香りがして、眠いのは同じだが、頭が浮いてるような寝不足(ねぶそく)のふわふわした感覚が落ち着いている。


「疲労がちょっとマシになる呪術だ。作ってみた」


「ドルイドさんらしい素敵な(じゅつ)ですね」


「ふふん」


急用はないだろう。


「此度のフィレンツェの予定はありますか?実は、それでも眠いのです」


「特にないね」


「なら、ちょっと寝るから、本でも好きに読んで下さい」


「読めないけど、まあ、いちおう寝てね」


「はは」


そして、おれはちょっと仮寝をした。この呪術、けっこういいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ